2025/08/07
2025年8月2日(土),標記大会が東京科学大学(東京都文京区)で行われた(大会長:戸原 玄,東京科学大).
「これからの摂食嚥下リハビリテーション」の演題で登壇した戸原 玄氏は,従来の嚥下機能評価を基盤に,歯科医師としての口腔アプローチと訪問診療での簡易な訓練方法を紹介.医療現場と生活現場での常識の違いを認識した世間知と漸進的発展の重要性を強調した.
「神経筋疾患の摂食嚥下リハビリテーション~実際のところ,どうしていますか?~」の演題で登壇した荻野智雄氏(京都府)は,神経筋疾患の摂食嚥下障害は進行性で複雑な病態を示すため,訓練法に固執せず代償法や環境整備を含む包括的介入が必要.多職種連携による誤嚥性肺炎予防と持続可能な支援体制の確立を提案した.
「病院,地域,社会の視点から,咀嚼を考えてみる」の演題で登壇した山口浩平氏(東京科学大)は,咀嚼と嚥下の連続性を説明し,サクサクテストによる新しい評価法とオーラルフレイルの早期介入の重要性を述べた.東京科学大学病院での検診開始や地域連携活動,ナッジを用いた行動変容法の可能性について報告した.
「災害時の保健医療福祉の支援体制と歯科における体制~災害時要配慮者にどのようにアプローチできるのか~」の演題で登壇した中久木康一氏(東北大)は,災害保健医療福祉調整本部とJDATの体制を説明し,令和6年能登半島地震での課題を踏まえた改善点を指摘.より迅速な支援とデジタル化による情報共有,地域多職種と自治体の連携体制構築の必要性を提案した.
「能登半島の被災,摂食嚥下に関する穴水での支援(災害直後,および復興期)からの考察」の演題で登壇した下出祐造氏(石川県)は,令和6年能登半島地震での公立穴水総合病院の実際の対応を報告.NSTを中心とした体制で各種医療支援団体と連携し,誤嚥性肺炎予防や口腔ケア指導などを実施.災害関連死の多くが3か月以内に発症することから継続的対応の重要性を強調した.
「摂食嚥下障害を有する神経変性疾患患者に対する災害時の食支援の手がかり」の演題で登壇した山根由起子氏(旭川医科大)は,神経変性疾患患者への災害時食支援は体系的に行われておらず,嚥下調整食確保や介助体制の不足が問題.自宅・避難所・仮設住宅の各場面に応じた個別性の高いケアが必要で,汎用的災害対策では不十分であることを指摘した.
「頭頸部がん患者における災害時の問題点やその対応策」の演題で登壇した今津陽子氏(東京科学大)は,頭頸部がん患者は手術や治療により噛む・飲み込む機能やコミュニケーション機能が永久的に影響を受け,一般的な備蓄品では対応困難.東日本大震災経験者へのインタビュー調査から,特別な災害への備えと平時からの支援の重要性を述べた.