2025/07/14
7月12日(土)~13日(日)に標記大会が学術総合センター(東京都千代田区)にて,「顎関節の未来に向かって ―今,わかっていること,わかっていないこと―」をテーマに開催された〔大会長:小見山道氏・日大松戸).
ハンズオンセミナー1・2「ウェアラブル筋電計による睡眠時歯科筋電図検査」は,ウェアラブル筋電計(W-EMG)を用いた睡眠時ブラキシズム(SB)に対する筋電図検査について,参加者に実際に装置を操作し,解析作業を経験してもらいながら,W-EMG装置の使用法,測定された筋電図波形の観察法,波形の定量的解析結果の評価法などを解説する企画.
冒頭,座長の山口泰彦氏(北大名誉教授)よりSBの臨床診断,ウェアラブル筋電計による検査の手順,筋電図波形の解説からスタート.実習ではインストラクターの直接指導のもと参加者がデータ収集と測定データ解析の方法・手順について実際に自らの頬に装置を装着して測定したり,測定結果をPCで解析したりして実践の手法を学んだ.最後にまとめとして山口氏より筋電図単独と音声ビデオ付きポリグラフ検査結果の比較,結果の数値の解釈などの解説がなされた.
シンポジウム3「デジタル化が顎関節・顎機能検査,補綴歯科治療に与えたこと? 見えないものを診る.」(座長:小川匠氏・鶴見大,大石充氏・大石歯科医院)では3名の演者が登壇.
福島俊士氏(鶴見大)は「下顎位について」のテーマで,①下顎位の中心であり続けた「中心位」について,②下顎位に変形がある場合の下顎位について,③骨変形に起因する「下顎偏位」を防止するには,を順に解説.
重本修伺氏(鶴見大)は「Dental digital twin による顎機能の可視化と客観的評価法の提案」のテーマで,検査に始まり診断,治療,評価に至る治療サイクルをデジタル化し,ビッグデータとして活用するプラットフォームを構築することで精密歯科補綴治療(個別化補綴治療)を実現するのが歯科デジタルツインだとし,自身が開発に携わる顎運動測定技術を用いた新たな評価法について供覧した.
杉元敬弘氏(スギモト歯科医院)は「顎機能の可視化と客観的評価によって進化する補綴臨床の実際」をテーマに登壇.近年のデジタル技術の飛躍的進展が顎関節を含む顎口腔機能の可視化と客観的評価を可能にし,補綴臨床における診断・治療計画に本質的な変革をもたらしているとし,従来術者の経験則や感覚に依存していた補綴咬合診断を客観的かつ再現性のある科学的判断へと進化させ,補綴歯科が本来有する科学的根拠と臨床的洗練の融合を再定義する契機となるとの考えを示した.
シンポジウム5「顎関節症のマネジメントに大切な睡眠歯科学のアップデート~睡眠と痛み,ブラキシズム,呼吸障害~」(座長:西山暁氏・科学大,鈴木善貴氏・徳島大.後援:日本睡眠歯科学会)では4名の演者が登壇.
小川徹氏(東北大)は「睡眠・ブラキシズム・無呼吸と顎関節症との関連」というテーマで,睡眠の質,ブラキシズム,閉塞性睡眠時無呼吸と顎関節症による痛みとの関係について考察を行った.
飯田崇氏(日大松戸)は「睡眠と痛み」というテーマで,睡眠障害と体性感覚の研究成果などの考察を行った.
鈴木善貴氏(徳島大)は「変遷する睡眠時ブラキシズムに対する捉え方」のテーマで,INfORMによるコンセンサスを紹介,診断する者ではなく評価するものという考え方の変化を指摘した.
奥野健太郎氏(大歯大)は「睡眠時無呼吸に関する最近の知見」をテーマに,研究・開発によりさまざまに変化してきていることを紹介した.
シンポジウム9「明日からできる臨床歯科医と歯科衛生士で取り組む顎関節症の初期治療」(座長:佐藤文明氏・佐藤歯科医院今戸クリニック,日髙玲奈氏・科学大,後援:日本歯科衛生士会)では,6名の演者が登壇.
「医療面接の基本と顎関節症検査」では,久保田順子氏(大歯大)が医療面接について自らの患者としての経験も踏まえて解説し,和気創氏(みどり小児歯科)が診察・検査に関して具体的に紹介した.
「顎関節症診断と治療計画立案」では,川上哲司氏(泉北陣内病院)が顎関節症以外の疾患を疑う所見の紹介から,顎関節症病態分類による診断まで解説をし,古家美鈴氏(ライフデンタルクリニック)は顎関節症の初期治療における歯科衛生過程を考察,症例を供覧して歯科衛生士の役割を述べた.
「顎関節症の初期治療と治療効果の再評価」では,木野孔司氏(木野顎関節研究所)が病因治療としてのTCH是正と夜間使用マウスピース,病態治療としての関節可動化訓練についてそれぞれの方法を解説,兜森彩日氏(佐藤歯科医院今戸クリニック)は木野氏の解説した3点に関して,再評価の方法を述べた.