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2025年 臨床歯科を語る会 開催される
7月4日(金)~6日(日)にかけて,2025年臨床歯科を語る会が,リンクフォレスト(東京都多摩市)にて開催された(実行委員長:斎田寛之氏・埼玉県).

会員発表では,中村一寿氏(神奈川県),尾崎 聡氏(千葉県),鹿熊 豊氏(長野県),高野 真氏(東京都)の4氏が登壇.日々の緻密な臨床と経過観察からの丁寧な考察を報告.それぞれにコメンテーターよりコメントが寄せられた.

「全体会①:アブフラクション“仮説”の現在地~熱狂の20世紀,検証の21世紀~」では,黒江敏史氏(山形県)が登壇.NCCLとTooth Wearについて基本的な知識を解説された後,自身とアブフラクションとの出会いから現在に至る研究および考え方の変遷を紹介した.続いてアブフラクションを巡る現状について海外論文やNCCLの長期経過症例を供覧しながら検証.アブフラクション説がいかに科学的・臨床的に根拠が脆弱であったかを,その背景とともに解説した.

分科会は「①咬合崩壊症例の治療ステップ~治療用義歯をどう活用するか~」「②今あらためて自家歯牙移植を考える」「③成長期の上顎前突に対する早期矯正治療」の3つのテーマが設定された.
「①咬合崩壊症例の治療ステップ」では,まず猪狩寛晶氏(福島県),野地一成氏(東京都),片山建一氏(熊本県)の3氏により,年齢や欠損状態の異なる症例における治療の過程が,治療用義歯の活用を中心的な話題にしながら紹介された.続いて,3氏の報告を受ける形で鷹岡竜一氏(東京都)が登壇し「咬合崩壊症例の様相」とのテーマにて,「咬合崩壊」という状況の正確な捉え方と,「難症例」の判断のあり方を提示.3氏の症例における治療介入の是非を検討した.最後に登壇した永田省藏氏(熊本県)は,「治療の介入と欠損歯列のゆくえ」との演題にて,欠損がどのように進行するのかを常に考慮し,望ましくないコースへ進行させないために治療用義歯で確認すべき事項を整理し,会場を交えたディスカッションが行われた.
「②今あらためて自家歯牙移植を考える」では,6名の演者が登壇.吉野浩一氏(東歯大)は「救歯会で実施した自家歯牙移植調査について」と題し,根完成歯をドナーとした移植歯の生存率およびリスク要因について712の臨床例による調査結果を報告.根間和希氏(東京都)は「歯根膜の再生機能を活かした歯牙移植」と題し,歯根膜の再生機能に期待し条件の厳しい顎堤に歯牙移植を行ったケースを供覧.中村貴則氏(神奈川県)は「自家歯牙移植は診査が9割」と題し,移植候補歯の有無,移植歯の状態,抜去歯周囲の状態などの術前診査の重要性を,症例を通して解説.甲田和行氏(東京都)は「長期経過症例から考える歯の移植のトラブルとインプラントとの使い分け」と題し,自家移植のトラブル症例と,同一患者に移植とインプラントを施した症例を,それぞれ複数供覧.下野正基氏(東歯大)は「臨床の疑問に基礎が答える」と題し,それまでの各演者より寄せられた疑問・質問に対し,その基礎的背景を丁寧に解説された.最後に押見 一氏(東京都)が登壇.「自家歯牙移植 その話題症例・不都合症例」と題し,自身の38年間の自家歯牙移植の症例のなかから印象的な症例を供覧し,臨床に示唆を与える名言を紹介しながらセッションを締めた.

「全体会②:エンド難症例への対応~専門医・GP それぞれの見極め~」では,千葉英史氏(千葉県),倉富 覚、氏(福岡県),和達礼子氏(東京都)の3氏が登壇.千葉氏は「経過からみた歯内療法の難症例とその対応」とのテーマにて,根管内の起炎物質の除去が難しい場合,また根管外に起炎物質がある場合を難症例と定義し,その対応法を多くの長期症例の中で整理した.倉富氏は「悩めるエンド難症例への対応〜基本コンセプトを忠実に〜」との演題にて,難症例の原因として「診断の誤り」「根管形態」「人為的なもの」「病態によるもの」をあげ,それぞれの実態を紹介しつつ,基本的な手技の理解が対応の成否を左右すると強調,和達氏は「気づかないとハマる目立たない難症例」との演題にて,誰の目にも明らかな難症例ではなく,目立たない難症例こそがトラブルになりやすいと指摘.なかでも「支台歯形成されている歯」「頬舌的に傾斜している歯」「厚い骨,緻密な骨」「伸びしろがない歯」の4つの視点を,エンド専門医の立場から解説した.

その他,若手症例相談の部屋,ポスター発表,夜の部屋など,趣向を凝らしたさまざまな試みが行われた.




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