6月27日(金)~29日(日)の3日間,標記大会が幕張メッセ・東京ベイ幕張ホール(千葉市美浜区)にて,「口腔機能の維持・向上で老年学に貢献する-輝く100年を口とともに生きる-」をテーマに開催された〔大会長:片倉 朗(東歯大)〕.
シンポジウム3「総合歯科専門医(仮称)のあり方をともに考えよう」では4名の演者が登壇.今井 裕氏(日本歯科専門医機構/獨協医大)は「(一社)日本歯科専門医機構とは何か?-新たなる歯科専門医の制度設計に挑む―」と題し,歯科専門医機構設立の経緯・組織の概要と現在までの活動状況・課題と今後の展開について講演.歯科専門医機構が認定する専門医の制度設計の基本方針,歯科専門医制度基本整備指針等について解説された後,今後の展開として歯科専門医(制度)の周知や歯科専門医制度を活用した歯学教育と歯科医療の再構成の必要性を訴えた.
小笠原 正氏(日本障害者歯科学会/静岡県)は「総合歯科専門医としての障害者歯科医療」のテーマで登壇.知的発達症患者の歯科治療において問題になる点とその対応方法について症例を提示しながら丁寧に解説され,障害者歯科医療における総合歯科専門医の役割として口腔内診査と健康観察およびそのための歯科-歯科連携の重要性をあげた.
石垣佳希氏(日本有病者歯科医療学会/日歯大)は「有病者歯科における対応と役割」のテーマで登壇.有病者歯科の対象となる疾患等について解説されたうえで総合歯科専門医の研修プログラム案を紹介.今後の課題として日本障害者歯科学会・日本有病者歯科医療学会・日本老年歯科医学会の3学会とも自身の専門と別の基本領域の専門医を取得している会員が少なくないので,それら関連学会との整合性も考慮しながら制度構築を行うことをあげた.
最後に柏崎晴彦氏(日本老年歯科医学会認定制度委員会/九州大)が登壇.総合歯科専門医とは何かについて確認したうえで,老年歯科学会の認定医・専門医・指導医取得の流れについて紹介.総合歯科専門医制度構築に向けた制度設計の確立と運用,現在想定している専門医認定までの流れについて解説された.
シンポジウム5「認知症の緩和ケアと歯科の役割」(座長:枝広あや子氏・東京都健康長寿医療センター研究所,若杉葉子氏・医療法人社団悠翔会)では,まず平原佐斗司氏 (東京ふれあい医療生活協同組合)が「認知症の緩和ケアアプローチ」と題し,今後先進国の緩和ケアのメインターゲットが認知症になるとのランセット国際委員会報告を踏まえて,認知症の緩和ケアアプローチや提供体制,認知所患者の食支援と歯科領域の役割などについて解説した.
三輪俊太氏(岐阜県)は「認知症患者における抜歯・義歯使用の是非~一般歯科が緩和ケアに果たすべき役割とは~」と題し,近年注目されるShared Decision Making〔患者(受診者)・医療者による共同意思決定〕の概念を歯科訪問診療に応用する際のポイントを5つの場面ごとに紹介.患者や家族がよい人生を歩むための味方であり続けることが,緩和ケアにおける歯科の役割だと述べた.
田實 仁氏(鹿児島県)は「嚥下からみる『治し支える医療』における歯科医師の役割の変容」と題し,歯科医師による嚥下機能評価に基づく診断が患者家族の意思決定における大切な根拠となることや,疾患・病態に基づいたロジカルな嚥下的診断と説明,ACPを考慮した嚥下的提案を主治医や多職種に向けて行うことで,患者そのひとらしい人生や生活を継続できるような支援が可能になるとした.
加藤忠相氏(株式会社あおいけあ)は「生活介護からみる食支援」と題し,介護施設利用者の自立支援について介護事業所経営者の視座から講演.心身機能やADL(日常生活動作)の低下をうけた要介護状態等の軽減・悪化防止対応に徹するのではなく,施設利用者個人の来歴や生活,人となりを踏まえた自立支援によりウェルビーイングを提供し続けること,それをどう支えるのかを考えるのが医療介護職の本当の仕事ではないかと訴えた.