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第68回春季日本歯周病学会学術大会 開催される
 5月23日(金),24日(土),那覇文化芸術劇場なはーと・ホテルコレクティブ(沖縄県那覇市)にて標記大会が「Science に基づいた『美ら』歯周治療」をテーマに開催された(大会長:岩田隆紀氏・科学大)〔オンデマンド配信期間:6月17日(火)~ 7月31日(木)予定〕.
シンポジウム2「歯周治療における歯列矯正治療」では,土岡弘明氏(千葉県開業),綿引淳一氏(東京都開業),吉野宏幸氏(埼玉県開業),工藤 求氏(東京科学大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野)らが登壇.土岡氏は特に重度歯周炎症例において矯正治療を併用することで,残存歯の適切な位置補正や咬合機能の再構築を行うことが不可欠であると言及.続く綿引氏は,抜歯・非抜歯論争をはじめとする過去の矯正治療に関する知見を引用しつつ,歯周病患者への矯正治療は「機能・審美・歯周組織の調和」を目指すものであり,その成功のためには歯根膜の再生の可能性と限界を理解することが重要であると述べた.また,吉野氏は重度歯周炎患者に対して,挺出・アップライト・圧下・歯体移動を行った症例をそれぞれ供覧.歯周病患者に矯正治療を行う原則は「BOP(-),PPD5mm」であるとし,炎症コントロール下で行うべきことを強調した.最後に登壇した工藤氏は,デジタルツールを用いた歯周炎に対する包括的デジタル歯周-矯正治療について自らの知見を元に紹介し,歯周組織再生療法と矯正治療を組み合わせることで再生が賦活化する可能性を提示した.
 シンポジウム3『再生医療の現状と課題』(座長:岩田氏)では,長谷川 学氏(厚労省医政局)が「再生医療等安全性確保法による再生医療の規制と推進について」と題し,再生医療等の迅速かつ安全な提供等を図るために講ずべき措置や特定細胞加工物の製造許可等の制度等を定めた同法の趣旨や,同省の医療系ベンチャー支援事業等について概説した.
 齋藤正寛氏(東北大)は「造骨細胞を用いた新規骨再生医療技術の開発」と題し,骨補填材の崩壊よりも早く垂直方向への骨再生を図る有力なアプローチの1つとして,造骨能力を有する細胞と3次元足場材の複合体を用いた骨再生の研究に関する安全性と有効性,今後の展望を述べた.
 竹立匡秀氏(阪大)は「脂肪組織由来幹細胞の自己移植による歯周組織再生療法の現状と展望」と題し,竹立氏の研究室で開発を進めている,採取時の患者負担が比較的少なく安全性も高い標記細胞の自己移植による新しい歯周組織再生療法について,臨床研究にて安全性と有効性が示されたこと,3次元的な欠損量・再生量の定量評価に歯科用CTが有用となること,炭酸アパタイト製剤を足場材とした標記細胞自己移植治療を先進医療Bとして提供していることを紹介した.
 庵原耕一郎氏(エア・ウォーター株式会社)は「歯髄再生治療の現状と未来」と題し,同社の提供する自家歯髄幹細胞を用いた歯髄・象牙質再生治療の概要と治療の流れを説明.不用歯の歯髄由来幹細胞は神経系の再生に有利となる点なども示した.
 特別講演4『「我々の臨床を振り返って」~Longevityを求めて~』(座長:沼部幸博氏・日歯大)では,小野善弘氏(JIADS主宰・アメリカ歯周病学会名誉会員)がDr. G KramerやDr. M. Nevinsとの出会いを通じて“Longevity”を達成するための歯周治療を基本とした総合治療のコンセプトを学び,帰国後に中村公雄氏との共同開業、JIADS設立に至った経緯を披露.さらに歯周治療において達成すべき目標(浅い歯肉,骨の平坦化,十分な付着歯肉の獲得)や歯周組織の7つの問題点をあげ,それらに配慮して取り組んだ非外科/外科による中長期経過症例の数々を供覧.後進へのメッセージとして,深い歯周ポケットは歯周炎再発の最も危険な因子であること,咬合の安定を図ったうえで,清掃性とメインテナンス性に考慮し,他科との有機的な連携治療を行うことで,複雑な症例の解決と予知性の獲得が可能になると訴えた.
歯科衛生士シンポジウム「歯周基本治療アップデート」では,木下淳博氏(東京科学大)が「広がる歯科衛生士の可能性 『歯科診療の補助』の理解から,新たな挑戦へ」と題して,「歯科診療の補助」の法的位置づけと歯科衛生士の業務範囲が拡大されてきた歴史的背景について言及.「歯科診療の補助」は歯科衛生士が「歯科医師の指導の下」で直接的な診療行為を一部担うものであり,該当歯科衛生士がその医療行為を行うための知識・技術を保有することが確認されなければならず,厳格な判断と責任が求められると述べた.田熊麗美氏(福岡県/医療法人 木村歯科)の「超音波スケーラーによるスケーリング・ルートプレーニングの実践」では,超音波スケーラーを用いた歯肉縁下デブライドメントにおける器具の扱いや臨床上のコツを紹介.篠永美佳氏(埼玉県/デンタルクリニックK)の「歯科衛生士業務におけるマイクロスコープの活用」では,歯周治療へのマイクロスコープの応用について,
繊細な処置が可能になるという術者側と,口腔内の実像を視覚的に理解できるという患者側の双方の利点が解説された.
歯科衛生士教育講演「頭頚部領域から広く眺めた『口腔』のみかた」では,歯科医師・医師のライセンスをもち,耳鼻咽喉・頭頚部外科・歯科口腔外科の診療に従事する植草康浩氏(鶴見大学歯学部)が登壇.口腔から頭頸部に至るまでの広い領域を俯瞰的に捉えながら,摂食嚥下に問題がある患者のスクリーニング方法や対応,歯科疾患と鼻咽頭疾患との関連,歯周病に対する東洋医学的なアプローチについて等,幅広いテーマで講演を行った.

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