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日本補綴歯科学会第134回学術大会 開催される
 5月16日(金)~18日(日),出島メッセ長崎(長崎県長崎市)にて標記大会が『補綴の未来、歯科の未来。「不易流行(変わらないもの、変えていくもの)」』をテーマに開催された(大会長:村田比呂司氏・長大).
 次期理事長講演では「補綴の力」をテーマに6月より本学会理事長に就任する大久保力廣氏(鶴見大)が登壇.自身の経歴を紹介した後,本学会の来期の課題と対策10点を示した.また重要継続課題として「補綴歯科」の認知度向上,専門医・指導医等の育成と認定,学術大会と学会誌の充実等を挙げた.続いて補綴医の責任の大きさについて言及し,学会には専門医教育を充実させ信頼に足る補綴医を育てる義務があるとし.海外の教育制度や鶴見大学の専門医取得プログラムを例に挙げながら教育制度の在り方について自身の考えを述べた.
また補綴歯科専門医と他の歯科医師との違いについて,補綴装置の製作法とその術式を理解していることとし,最終の治療像を創作するフィニッシャーであり関連診療科のコンダクターとしての補綴医が持つ判断力,包括力が補綴の実力だと述べた.


 メインシンポジウム「日本顎咬合学会合同シンポジウム 咬合挙上を再考する」では3名の演者が登壇.窪木拓男氏(本会理事長・岡山大)は「顎関節症の既往がある患者において咬合位を変化させる場合の考え方」のテーマで登壇.まず前提として顎関節症患者の治療ではなるべく保存的な治療を選択することを確認.額口腔系のバイオメカニクス,相反性クリッキングの自然経過,顎関節症の細病態分類をする力の必要性,顎関節症の既往があるが下顎位を変えなくてはならない場合の対応,口腔アプライアンス装着時の影響,等について解説.
 続いて渡辺隆史氏(福島県)が「咬合再構成における咬合挙上の要点 何を診てどう治療するか?」をテーマに登壇.咬合再構成治療における咬合挙上の要点を整理しながら咬合挙上に伴う顎位の変化への対応,可能な限り低侵襲な治療選択のためにどうするか等,咬合挙上の手法を実際の症例を通して解説した.
 最後は「部分欠損歯列における咬合高径の回復」をテーマに山下秀一郎氏(東歯大)が登壇.まず咬合高径変更の要件として審美・発音・生物力学的・補綴的要件を挙げた.そのうえで「咬合再構成は咬合高径の回復だけを考えるのではない」というテーマで咬合再構成の手順,上顎前歯への突き上げが危惧される症例の対応を解説.続いて「咬合高径変更の許容範囲」について顆頭安定位の観点から解説した.
 特別シンポジウム『新たな時代に対応した無歯顎補綴臨床の展開』(座長:村田氏)では,冒頭に村田氏が本邦の超高齢化に伴い義歯装着に不利な顎堤状態となっている患者が増えている現状を説明し,難症例化する無歯顎補綴症例への対応が求められているとして問題提起した.
 杉田龍士郎氏(東関東支部)は「無歯顎患者の評価とその補綴方法」と題し,米国補綴専門医の立場から“難症例化させない予防的対応”と“難症例化した患者の適切な評価と対応”の重要性を指摘.そのうえで,通常型義歯には機能回復に限界があるとして,支持・把持・維持の問題に対し必要性に応じてインプラントによる補強を図ること,患者の期待に応じた機能回復の程度を判断することが重要とした.
 松田謙一氏(関西支部)は「全部床義歯治療における難症例とは~対峙する際に重要な思考と方策~」と題し,本学会の「無歯顎の診査用紙」に基づく難症例の分類として高度顎堤吸収や広範囲のフラビーガム,著しいアングル2級・3級の顎間関係などを提示.これらの病態を示す症例への全部床義歯治療に際しては治療を難しくする要因を「物理的要因」と「術式的要因」に分けて分析し,前者については力学的な条件を有利にする方策を,後者については技術的な困難が生じる原因の解決法を検討することを提案した.
 中居伸行氏(関西支部)は「(超)高齢者におけるインプラントを用いた無歯顎補綴臨床」と題し,無歯顎補綴の選択肢となる通常型義歯,可撤性インプラント義歯(インプラントオーバーデンチャー;2-IOD/4-IOD),固定性インプラント義歯(いわゆるAll-on 4/All-on 6)の治療効果や清掃性などについて文献的に考察.上下顎それぞれに対する無歯顎補綴の治療選択に際しては対顎の補綴装置や歯列の種別も考慮する必要はあるものの,超高齢患者へのインプラント適用は可能でありメリットも大きいとした.

 ランチョンセミナー1「リアルな義歯臨床のヒントがここにある!Denture Cafeの魅力」(座長:松田氏)では,一般社団法人ハイライフグループならびに松田氏が主宰するオンラインLIVEセミナーであるDenture Cafeのナビゲーター陣のうち,金澤 学氏(科学大),兒玉直紀氏(岡大),佐藤洋平氏(鶴見大),松丸悠一氏(東関東支部),竜 正大氏(東歯大),和田淳一郎氏(科学大)らが登壇.それぞれが義歯臨床で一番大事だと思うことや同セミナーの魅力について“義歯愛好家”どうし語り合った.
 専門医研修会『欠損歯列の診断 何を診て何を考えるのか?』(座長:小峰 太氏・日大,鮎川保則氏・九大)では,まず荻野洋一郎氏(九大)が「欠損歯列の成り立ちとその特徴から考える補綴戦略」と題し,個々の症例における欠損歯列の病態の多様性の認識と疾病型の把握の重要性や,治療に不可欠な3つの診断(病態診断・発症メカニズムの診断・エンドポイントの診断)を踏まえた治療計画立案などについて,過去の補綴学会誌掲載論文を紐解きながら解説した.
 次に三浦賞子氏(明海大)が「成功するブリッジ治療の鍵─診断の視点と重要性─」と題し,ブリッジの適応症や設計原則,支台歯選択における注意事項を文献的に確認したうえで,ブリッジ治療におけるリスクアセスメント項目や中間支台歯がある場合のリスク要因と対応策,ポンティック形態と清掃性の関係や基底面に用いる材料などについて整理した.
 水橋 史氏(日歯大新潟)は「有床義歯治療に必要な顎口腔系の評価」と題し,補綴学会の症型分類シートに準じた部分歯列欠損および無歯顎の症例における診査項目をそれぞれ解説.視診・触診から口腔内の特徴を捉えること,現義歯と顎口腔系の機能評価から経過の推測と問題点の抽出を行い義歯の動きを考えること,それらを踏まえた治療計画において残存組織の保全と機能回復の向上を図ることが重要とした.

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