2025/04/08
4月6日(日),標記大会が「ワイヤー矯正vsアライナー矯正」をテーマにオービック御堂筋ビル(大阪市)にて開催された.
第一部では「インターディシプリナリー~歯の位置がもたらす長期的安定~」と題し3名の演者が登壇.まず本多正明氏(大阪府)が「包括的歯科治療における矯正治療の役割」をテーマに矯正治療の前提として咬合を学ぶ重要性を指摘.外科矯正,審美修復・補綴,アライナー矯正等の症例を供覧しながら治療咬合の必要条件や治療ゴールのイメージについて概説。最後に矯正と補綴、どちらも大事にしてほしいというメッセージを伝えた.続いて登壇した米澤大地氏(兵庫県)は「インプラントと矯正治療」のテーマで,OIPコンセプトの三段論法「審美診断に始まり 臼歯関係を構築し Anterior Couplingを得る」に基づいて治療した3つの症例を紹介.「顔を作るところから始める」という自身の一貫した診療方針について力説した.第一部の最後は「補綴と矯正」をテーマに高井基普氏,任 剛一氏(共に東京都)が登壇.両氏が補綴・矯正のパートナーとして13年間「和衷協同」してインターディシプリナリー治療にあたってきた経験を軸に,具体的な症例を供覧.さらに,犬歯のない症例を考察することで,犬歯誘導に関する視点の重要性を説いた.
第二部は「短期間・高精度のワイヤー矯正治療」をテーマに構 義徳氏(東京都)が登壇.まず補綴前の矯正がいかに有益かを概説.問題は治療期間が長すぎることだとし,その原因として曖昧なゴール設定,バイオメカニクスの理解不足,抜歯への依存を挙げた.そして治療期間を短縮するための施策として素材を変えること,スペースゲインできる要素を探すこと,治療前に正確に計画を立てることを挙げ,それらをクリアすることで大幅な時間短縮が可能だとした.
第三部は「複雑な症例の矯正治療」と題し3名が登壇.川里邦夫氏(大阪府)は「歯周病患者における矯正治療」のテーマで重度慢性歯周炎患者の症例を供覧しながら垂直性骨欠損への再生療法と矯正治療や動揺歯のコントロール等について解説。歯周病患者の大半は矯正治療が必要であるとし,そのタイミングの重要性を指摘した.「欠損スペースクローズ」をテーマに登壇した津田 祐氏(大阪府)はOIPコンセプトの「審美診断,臼歯関係決定,Anterior Couplingの取得」の3ステップに基づいて治療した3症例を供覧.欠損が存在した際にブリッジ,インプラント以外に矯正治療でクローズするオプションを持ちたい,とした.第三部の最後は当会大阪支部長の大森有樹氏(大阪府)が「病的歯牙移動・歯の動揺のある患者への矯正治療」について解説.すぐ抜歯・矯正・連結固定?と考えるのではなく,なぜ動くのか・揺れるのかの原因追及が大事であるとし,歯の喪失を起点とした負担過重の原因を指摘.続いて,病的移動した歯・動揺歯のコントロールには徹底した歯周病治療と力のコントロールが重要だとした.
第四部「ワイヤー矯正とアライナー矯正の境界線」では再び高井氏と任氏が登壇.ワイヤー・アライナーそれぞれの特徴・治療結果・補綴的振る舞い等の違いについて症例や文献的考察を交えてわかりやすく解説した.結論としてアライナーかワイヤーか,ではなく治療にメリットのあるものを,それぞれの良い点を生かして選択・組み合わせることが肝要とし,「すべては目の前の患者のために」という言葉で締めた.