2025/01/20
1月19日(日),グローバルゲート名古屋コンベンションホール3F(名古屋市中村区)にて標記講演会が「歯の未来を守るために 保存と補綴の新たな視点」をテーマに開催された(ファウンダー:飯田吉郎氏・愛知県,大会長:高田智史氏・愛知県).
第一会場午前のセッション「天然歯の保存にこだわる」(座長:飯田真也氏・愛知県)では渥美克幸氏(埼玉県)を演者に迎え,歯髄・歯質・歯周組織を残す重要性と,その治療計画に際して予後の変化を踏まえて二手三手先を読む必要性などについて,渥美氏が持てる知識と技術を駆使して“一歯の保存”に注力した症例を通じて議論された.
続くセッション「Interactive Case Discussion~保存の新たな視点~」(座長:松浦貴斗氏・愛知県,飯田吉郎氏,安藤壮吾氏・愛知県)では,川名部 大氏(東京都)が「The strategy of periodontal regenerative therapy for fuecation lesions」と題し,根分岐部病変3度の症例に対する歯周組織再生療法の適応症と,個別の患者要素,分岐部の形態,仕様材料・器具,フラップデザインについて考察した.
小道俊吾氏(兵庫県)は「Hope for hopeless teeth~歯髄生活反応を示すエンド-ペリオ病変への対応~」として,標題の病変においては病因にエンドが関与するか否かで治療方針が変わるとして,まずはエンドの関与を見極めたうえで歯髄保存の可否を検討し,再発のリスクを念頭に経過観察を行うことが重要とした.
本セッションではwebによるリアルタイムアンケートなどを活用した会場参加型のディスカッションも随時交えながら進行した.
午後のセッション「The Discussion 複雑な補綴計画のマネジメント」では小西浩介氏(東京都)と片岡 智氏(愛知県)が登壇し,午前同様に会場のリアルタイムなアンケートも交えながら補綴主導型治療計画における以下4つのポイントについて症例を通してディスカッションを行った。
① 固定性・可徹性の選択
② インプラントの使用有無
③ 咬合高径,咬合平面の積極的な変更有無
④ 残存歯への補綴治療を積極艇に行うor可及的に保存するか
まず片岡氏が留学中に経験した65歳男性の症例を提示.会場に①についてアンケートをとった後,実際に行った治療方針・計画について解説.そして上記のポイントをベースに会場の来場者と活発な意見交換が行われた.
続いて小西氏が55歳男性上顎両側臼歯部の義歯治療希望の患者にテレスコープデンチャーを使用した症例を提示.こちらも概要を説明後会場に①および③についてアンケート.その後実際に行った治療計画について解説された.
ラストのセッションは「欠損補綴の過去現在未来」のテーマで寺西邦彦氏(東京都)が登壇.自身が歯学部を卒業した1979年から現在に至るまでの補綴治療の進化の変遷について,留学や開業のエピソードを交えながら軽妙な語り口で紹介.1980年代の総義歯症例,1992年の歯根破折へのインプラント症例,1994年のパーシャルデンチャー症例など,それぞれ当時ならではの考え方・工夫・治療計画を長期経過も含めて詳細に解説.デジタルデンティクスの将来展望についても自身の考えを述べられた.
なお,第二会場では「0歳から始まる予防歯科」(演者:今泉三枝氏・愛知県,座長:西尾いづみ氏・愛知県/歯科衛生士),「離乳完了前の口腔機能発達不全症へのアプローチ」(演者:宮坂乙美氏・大阪府/歯科衛生士,座長:西尾氏),「一期治療の価値を高める歯科衛生士とのアプローチ」(演者:中野 崇氏・愛知県,座長:西尾氏),「口腔機能低下症とそのリハビリテーション」(演者:鈴木宏樹氏・福岡県,座長:月星太介氏・愛知県),「備えよう災害歯科 震災の教訓から学ぶ人々の絆とちいきの未来」(演者:白石大祐氏・石川県,座長:月星氏)の5題が行われた.
また,第一会場のランチョンセミナーでは「口腔機能から考える高齢者へのフルマウスリコンストラクション」(演者:鈴木氏),「併用療法で広がるリグロスの可能性~歯周組織再生療法の新たな視点~」(演者:近藤智裕氏・愛知県)の2題が行われた.