2025/01/14
1月11日(土),12日(日),御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都千代田区)およびオンラインにて標記会が「過去・現在・未来の対話」をテーマに開催された(現会長:築山鉄平氏・福岡県/タフツ大学歯周病学).
11日にはレジェンド発表として,本会創設の発起人に名を連ねる船越栄次氏(福岡県/タフツ大学歯周病学,インディアナ大学歯周病学)と岩田健男氏(東京都/インディアナ大学補綴学)が講演.
船越氏は「長期症例から学ぶ重度歯周炎の治療」と題し,中等度~重度歯周炎に対し10年以上の長期予後を見据えるうえで重要となる「骨縁下欠損を放置した場合のさらなる歯槽骨欠損」,「歯周スプリントの重要性」,「角化歯肉および付着歯肉幅の重要性」について,超長期症例の経過を交えて述べた.
岩田氏は「顎口腔系の経年変化とインプラント補綴の咬合様式」と題し,インプラント補綴では理想咬合となるmutually protected occlusionではなく顎口腔系の経年変化に対応する”日常臨床咬合”による対応が有効とし,そのための要件・ステップとして「1咬頭1咬合接触」,「過補償再現による咬頭干渉の回避」,「プロビジョナル模型法とクロスマウント法によるアンテリアガイダンスの再現」について解説した.
講演後には築山氏をモデレーターとして座談会が行われ,本会設立の経緯や初代会長の故 保母須弥也氏の教え,米国留学を通じて学んだことなどが語られた.
12日午前の会員発表では,まず吉田守男氏(東京都/フロリダ大学歯周病学)が「インプラントの即時埋入,即時荷重の実用」と題し,インプラントの抜歯即時埋入・荷重に関する研究やディスカッションポイントの変遷に触れ,治療成功には症例選択と埋入ポジションの検討が重要になるとした.
片岡 智氏(愛知県/テキサス大学サンアントニオ校補綴学)は「デジタル補綴におけるデジタル義歯の過去とこれから」と題し,デジタル技術を用いて製作されるミリング義歯と3Dプリント義歯の特徴や従来法義歯との比較について文献的に検討し,現状と課題を整理した.
石上貴之氏(東京都/南カリフォルニア大学補綴学)は「口腔内全体を考慮したインプラント治療計画」と題し,インプラント埋入における適切な本数および位置について文献から確認.治療方針はリスクとコストを比較して検討すべきとした.
木戸淳太氏(福岡県/タフツ大学補綴学)は「Advanced Treatment Planningをベースにしたチームアプローチ」と題し,複雑な審美修復治療における治療計画立案・他科との連携のマネジメントといった補綴医の役割を示すとともに,現代の歯科医療における集合知の重要性を強調した.
杉田龍士郎氏(千葉県/テキサス大学サンアントニオ校補綴学・歯周病学)は「Terminal Dentition―Diagnosis and Treatment Strategy―」と題し,米国の歯科補綴治療において歯列を無歯顎化する際に用いられる「Terminal Dentition」との評価・診断が学術的に曖昧な点を指摘.これを終末歯列と呼称したうえで,安易な無歯顎化や咬合支持の喪失,すれ違い咬合への移行を回避するための”歯列改変”の必要性とタイミングについて検討した.
12日午後には,宮下裕志氏(東京都/イエテボリ大学歯周病学・診断学)が「エンドの過去・現在・未来 私達は何を理解したのか?」と題し,文献的に明らかにされているエンドの成功率について考察.患者の個性に合わせたセルフケアの確立(初期治療)が歯の生存率を,徹底的な無菌治療が根管治療の成功率を高めることなどを説明したほか,齲蝕治療時の露髄を避けるうえで,診断の違いが治療法の選択の意思決定にまで影響するとして注意を促した.
石井 宏氏(/ペンシルバニア大学歯内療法学)は「エンド・ペリオ病変のマネージメントとその問題点」と題し,Simonの分類に基づく病態と対処法を整理したうえで,同病変は術前の確定診断が困難な点を指摘.そのうえで,歯周病変由来型の場合の歯髄診断や,治療後に根尖透過像が残る場合に歯根端切除術と同時に骨補填材を用いるかどうかの判断について議論を深める必要があるとした.
岡崎勝至氏(埼玉県/ニューヨーク大学歯内療法学)は「最先端の歯内療法の可視化と治療シミュレーション:マイクロスコープから拡張現実(AR)まで」と題し,自身の在米中に取り組んだ臨床研究をもとに,歯内療法分野におけるVR・AR技術の応用事例を紹介.特に複雑な3次元的な解剖学的構造の把握や治療結果の向上に有効であると述べた.