2024/12/23
12月22日(日),ブリーゼプラザ小ホール(大阪市北区)にて標記会が開催され,同会の誇る講師陣による多彩な講演が行われた(主宰:小田師巳氏・大阪府).
モーニングセッションでの受講生代表プレゼン〔新井貴三氏(大阪府)「歯牙移植歯とセラミックオーバーレイの相性を考察」,水谷篤史氏(奈良県)「歯牙移植後の矯正治療で歯周組織の再生を認めた症例」〕に続き,成田大輔氏(兵庫県)が「歯周治療を成功に導くセルフケアのエビデンスと臨床応用」と題し,有効なエビデンスを日常臨床に適切に落とし込むことで担当歯科衛生士の経験等に左右されない一定の質のOHI提供が可能になるとする一方,患者の行動変容を促す点では個別の患者に適した動機付けを図る必要もあるとした.
松原良太氏(熊本県)は「口腔外科小手術を安心・安全に行うための勘所」と題し,日常臨床において比較的遭遇頻度の高い外科手技となる上唇小帯・舌小帯形成術および下唇粘液嚢胞摘出術を行ううえで確認すべき点や切開・縫合のポイントを示すとともに,軟組織からの出血がみられた場合はガーゼで圧迫したうえで出血点を冷静に確認すべきと述べた.
塩見信行氏(大阪府)は「チーム医療による歯周治療の実践」と題し,質の高い歯周基本治療を実践するうえで歯科衛生士の連携協力が不可欠である点を強調したほか,現代の歯周組織再生療法が新しい歯周組織再生剤の登場やフラップデザインの進化によって予知性を高めており,術者としても歯周組織再生の3要素の理解,特に血餅の安定に留意する必要があるとした.
松田謙一氏(大阪府)は「デジタル技術を応用したコピーデンチャーの臨床ポイント」と題し,IOSやラボスキャナ,歯科用CBCTにて取得したデータから作製する複製義歯について,十分な精度を有し,使用中の現義歯に近い床縁や咬合高径を得られやすく患者の来院回数を減らせるなどのメリットがあり,義歯治療の結果の予知性を大きく高められると説明.さらに複製義歯を用いた印象採得において生じやすい5つのエラーに関して,それぞれの臨床的な対応策を示した.
飯田真也氏(愛知県)と大谷恭史氏(大阪府)は「Adhesive dentistry~Direct or Indirect~」と題し,直接修復と間接修復の選択に関してディスカッション形式で考察.内側性窩洞に対するコンポジットレジン修復とセラミックインレー修復の選択,咬頭被覆の適応に関してそれぞれ検討すべき項目を掲げてディシジョンツリーを示すとともに,個別の症例と術者の治療法に対する習熟度を踏まえた選択が重要であること,セラミックオーバーレイの登場により咬頭被覆の”ハードル”は以前よりも下がってきていると語った.
神戸 良氏(京都府)は「どうする!? 破折ファイル~その予防と除去の意思決定~」と題し,根管内での器具破折を予防するためにストレートラインアクセスを確保しルースファイリングの原則を守ったグライドパスを行うことの重要性に言及.さらに破折ファイル自体が感染を引き起こすものではないことや破折ファイル除去に際する穿孔や過剰歯質削除などのリスクを勘案して,除去の意思決定を行うべきとした.
小田氏は「どうする!? GBR後の裂開~対応策の意思決定~」と題し,非吸収性メンブレンを用いたGBR処置後に生じる歯肉裂開に関し,自身がリカバリーを行った症例をもとにその原因を考察.さらに対応策として,強い感染が見られる場合は即座にメンブレンを除去(骨移植材の大部分を喪失)/弱い感染である場合は抗菌薬を投与しつつ6週程度待ってからメンブレンを除去(骨移植材の部分的な喪失)/感染がない場合は6~12週後にメンブレンを除去(骨移植材の大部分は維持)するとの意思決定の判断基準を示し,トラブルに見舞われた際の冷静な対応を促した.