2024/12/23
2024年12月22日(日),一橋講堂(東京都文京区)とオンラインにて標記会が開催された.
冒頭に同会副会長の宮田 勝氏(石川県立中央病院)が「開会のことば」として登壇.病院歯科の重要性は近年高まりを見せているものの,一般的にはほとんど理解されていない点を指摘.病院歯科の存在意義をきっちり社会に示し,病院歯科の発展と使命の完遂により歯科口腔医療の確保と質の向上を図ることが必要だとし,「繋ごう 増やそう 築こう 病院歯科の大きな居場所」のキャッチフレーズを掲げ,力強く第1回総会の開会を宣言された.
続いて同会会長の栗田 浩氏(信州大)より設立趣旨について説明.まず背景として人口・社会構造等の変化,歯科の疾病構造の変化,有病者の増加,ニーズの変化等を紹介.地域包括ケアのバックアップとなるべき病院に歯科は約20%しかないこと,またこれからの病院歯科の重要な役割として地域歯科医療の後方支援,多職種・医科歯科連携の啓発・推進などを強調した.そして病院歯科の果たすべき機能や役割の理解,その分担,病院歯科を担う人材の育成も進んでいない現状について解説した.
これらの問題に対して協働して自ら解決に当たるための新たな枠組みとして「全国病院歯科医協会」を発足.病院歯科医会は本会の趣旨に賛同した,病院歯科に係わる歯科医師および医師,メディカルスタッフ等が,急性期,慢性期および回復期病院,さらには口腔外科や老年・摂食嚥下・障害者歯科などの学会や専門の垣根も越えて病院歯科の発展および社会への貢献というひとつの目的のもとに集まるものである,とした.
シンポジウム「病院歯科のこれまでとこれから」では6人の演者が登壇した.
厚生労働省医政局歯科保健課の小嶺祐子氏は「歯科医療提供体制の構築の推進と病院歯科への期待」をテーマに,歯科保険医療をとりまく状況として在宅医療ニーズの急速な高まりがあることを指摘.歯科医療提供体制の構築が課題となっているとして,厚生労働省が令和3年に設置した「歯科医療提供体制等に関する検討会」の中間とりまとめについて解説.新たな地域医療構想の基本的な方向性や病院で求められる歯科医療のイメージ等を示した.
宮田氏は「日本病院歯科口腔外科協議会について」をテーマに再び登壇.同会発足の経緯や口腔外科の標榜科問題等を解説した.
陵北病院副院長の阪口英夫氏は「慢性期病院に併設される歯科のこれまでとこれから」をテーマに登壇.慢性期病院の変遷について解説した後,“慢性期病院の歯科はこれからどうあるべきか”というテーマの例として陵北病院における歯科医師の活動を紹介.慢性期病院の歯科が担う役割として,入院患者の歯科的ニーズの解決,食事に関する治療やリハビリテーション,在宅歯科医療に対する支援を挙げた.
全国医学部附属病院歯科口腔外科科長会議理事長の山本哲也氏(高知大)は「病院歯科としての医学部附属病院歯科口腔外科―全国医学部附属病院歯科口腔外科科長会議の活動について」をテーマに同会議の設立趣旨,目的,活動内容等について解説.各施設の教育活動,研究・社会活動,診療活動,臨床統計をはじめとして,さまざまな情報を共有することにより会員間のネットワークの構築や情報交換の場としての役割を果たしているとした.
根岸明秀氏(国立病院機構横浜医療センター)は「国立病院機構歯科口腔医療協議会と首都圏病院歯科協議会」をテーマに登壇.それぞれの協議会の設立経緯を解説したほか,国立病院機構の現状として2022年に同協議会より「口腔を専門とする歯科医師,歯科衛生士の採用を拡大し,各病院へ口腔管理者を配置する」という提言が出されたが,口腔管理者の配置は約半数にとどまっている点を問題点として指摘.また2023年の政府「骨太の方針」では,歯科専門職による口腔管理の充実が謳われ,また中医協では病院歯科の役割は大きいとしているように,各方面から口腔を管理できる病院歯科が期待されている点を強調した.
上野尚雄氏(国立がん研究センター中央病院)は「がん医療における病院歯科の役割: がん口腔支持医療について」をテーマに登壇.“がんの治療”と“がん患者を支える医療”をがん医療の両輪と位置づけ,がん患者に生じる口腔内の諸問題に対する歯科的支援等について解説.がん口腔支持医療のこれからの課題として歯科サイドでは若手の育成や地域歯科との連携,医科サイドでは口腔管理の重要性のさらなる周知,より簡便な連携システム等を挙げた.まとめとして病院歯科としてがん患者への口腔支援が必須であること,全国病院歯科医協会などの横のつながりの中でマンパワーの問題の解決や地域歯科との連携の強化などが望まれるとした.