2024/12/03
11月30日(土),12月1日(日),アマホームPLAZA 奄美市市民交流センター(鹿児島県奄美市)にて標記大会が「奄美から発信する接着歯学」をテーマに開催された(大会長:西谷佳浩氏・鹿大).
理事長基調講演「スタンダードが臨床に生かされる!長期予後を目指して!」では,同学会理事長の二瓶智太郎氏(神歯大)が日本歯科医学会重点研究委員会の策定した「2040年への歯科イノベーションロードマップ」のうち新規材料・機器の諸項目について概説.多様な歯冠修復材料と進化を続ける接着システムのマッチングを探り普及に努めることで日常臨床に貢献するのが同学会の活動意義だとした.
Topic講演Ⅰ「歯科材料としてのPEEK樹脂 -製造・加工の視点から-」(座長:桃井保子氏・鶴見大)では,木田香織氏(株式会社KDA)が,2023年12月に歯科保険適用となったPEEKブロックについて,物性と製造加工方法,一般的な射出成形法と同社独自の成形法であるニアネットモールディング法の比較に言及.化学的に安定し耐薬品性,摺動性,耐摩耗性に優れる一方,その性質から表面改質が難しい材料であると述べた.
Topic講演Ⅱ「歯科材料としてのPEEK樹脂-歯科治療への応用とその接着技術-」(座長:信野和也氏・株式会社松風)では,山本健蔵氏 (株式会社松風)が歯科材料メーカーの研究開発部門の立場からPEEKの特性と歯質接着に言及.接着性モノマーでは強固な接着が期待できない点を踏まえ,内冠へのサンドブラスト処理による機械的嵌合力の獲得,被着面処理として無機フィラーではなく疎水性樹脂にアプローチする接着材の使用と光照射による強固なアドヒーシブ層の形成,接着性レジンセメント使用時の支台歯前処理が必要になるとした.
シンポジウム『奄美接着サミット2024』(座長:南 弘之氏・鹿大)では,小林由佳梨氏(静県大短大)が「離島歯科医療における接着歯学への期待ー歯科衛生士の立場からー」と題し,離島人口全国1位となる鹿児島県における離島歯科巡回診療と奄美大島における歯科衛生士としての活動を紹介.離島およびへき地医療における課題を示すとともに,歯科材料に求める特性として,簡便性や汎用性,耐久性や高温多湿環境を踏まえた保存性をあげた.
次に南氏が「奄美で考える接着歯学の問題点」と題し,奄美群島の歯科医師で構成する大島郡歯科医師会会員への事前アンケートより,CAD/CAM冠や築造体の接着といった補綴・保存領域に関する質問への回答を示した.
村原貞昭氏(鹿大)は「奄美群島での日常臨床における接着の実情について考える」と題し,4-META/MMA-TBB レジンセメントの重合時間短縮の工夫など,上記アンケートより補綴・保存以外の領域に関する質問への回答を述べた.