2024/11/25
11月21日(木),22日(金)の両日,アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター.姫路市)にて標記大会が「次代につなぐ保存学」をテーマに開催された(大会長:前田博史氏・大歯大)〔オンデマンド配信:12月5日(木)~12月19日(木)〕.
シンポジウム1〝接着と形成:研究を活用した臨床と人生〟(座長:山本一世氏・大歯大)では,峯 篤史氏(阪大)が「接着テクノロジーの進歩とその継承」と題し,接着歯学の世界的権威であるBart van Meerbeek氏(ベルギー,ルーベン・カトリック大学)の研究室への留学を経て取り組んだ歯質接着の諸研究を紹介.また,自身の指導した大学院生の学位論文が日本補綴歯科学会のガイドライン(保険診療におけるCAD/CAM 冠の診療指針2020/2024)の参考文献に採用された事例から,学生自身の知的好奇心に基づいた研究テーマ設定と上級医からの適切な”バトンリレー”が良い成果につながるポイントだとした.
次に,南野卓也氏(大阪府)が「接着技法の臨床応用:最小の侵襲による審美的修復・補綴」と題し,阪大大学院在籍中に峯氏の所属する接着系研究グループにて従事した,非破壊試験装置を用いたレジンと根幹象牙質接着の様相観察に関する知見を供覧.さらに矯正治療と接着技術を活かした直接・間接修復による審美症例を通じて,適切な歯の位置,状態が担保されることで低侵襲の治療が選択可能になることを示した.
シンポジウム2〝歯の保存とインプラント〟(座長:高橋慶壮氏・奥羽大)では,植野高章氏(大阪医科薬科大)が「口腔インプラント治療と骨再生=過去から未来への継承=」と題し,インプラント治療との出会いからその歴史,長期予後の考察に関して予想外の変化と向き合う必要性を述べ,氏らのグループが開発に携わった顎骨再建材料の解説も行った.最後に,禁煙推進学術ネットワークを紹介し,多くの学会が関わることへの期待を述べた.
次に,松本佳輔氏(大阪医科薬科大)が「インプラント治療後に残存歯を喪失する要因についての検討」と題し,骨結合の変化をISQ値を利用して行った研究や,インプラント治療と残存歯喪失との関係など,氏のグループの研究成果を紹介.さらに手術用顕微鏡を用いた手術手技の習得・指導における有用性を考察した.
シンポジウム3〝エンド-ペリオ病変を有する歯の診断と治療〟(座長:木ノ本喜史氏・大阪府)では,福西一浩氏(大阪府)が「歯内療法専門医の立場から」と題し,エンド由来の病変に関して細菌感染などのストーリーを後から考察している現状を述べ,失活歯の場合はエンドファーストの原則がある一方,生活歯の場合の難しさなど,自らの反省も含め症例を中心に紹介した.
次に,石川 亮氏(兵庫県)は「歯周病専門医の立場から」と題し,エンドファーストの原則はある一方でペリオ由来の判断について解説.再生療法の適切な応用を期待するなど,症例をもとに考察を行った.また,現在の考え方について,フローチャートを提示しながら解説する一方で,再生療法の成功しなかった症例についても供覧した.