2024/11/18
2024年11月17日(日),日本大学松戸歯学部新校舎50周年記念講堂(千葉県松戸市)にて,日本大学松戸歯学部創立50周年記念同窓会学術講演が開催された.
本会は「Legacy&Innovation」をテーマに,松戸歯学部創立50周年記念として,また新校舎50周年記念講堂の完成記念および松戸歯学部同窓会50周年に向けた起点と位置づけられ,本学部が誇るトップランナー6名が登壇した.
最年少37期生の荻原太郎氏(東京都)は「模倣」をテーマに,本講演会の他5名の登壇者との出会いやそれぞれから受けた影響について紹介された後,自身の11年の臨床歴のなかで印象的だった若年患者のインプラント症例や60代患者のブリッジ症例等修復補綴治療を中心に紹介された.
28期生の二宮佑介氏(東京都)は「現代の修復治療」をテーマに,まず自身の臨床におけるパラダイムシフトとなったバラチエリ氏との出会いのエピソードを紹介.その後若年女性の前歯破折症例,20代女性の上顎2番の先天的欠損症例,30代女性審美障害症例,若年女性下顎前歯摩耗症例など接着修復を中心とした低侵襲な修復アプローチの例について紹介された.
24期生の中村茂人氏(東京都)は「フルマウスリハビリテーションにおける下顎位の決定とその実際」をテーマに,冒頭で顎位および筋肉のリラクゼーションと再現性の重要性をとき,咬合再構成の症例として顎位がずれていたケースなどを紹介,下顎位の決定法について解説された.
13期生の北原信也氏(東京都)は「Trends in Esthetic Restorative Dentistry 審美修復治療におけるトレンド」をテーマに講演.主に補綴マテリアルにおけるガラス系セラミックスとジルコニアの違いについて症例を通して整理された.自身がジルコニアを多用する理由として強度,摩擦係数,生体親和性,デジタルマテリアルとしての優位性などさまざまな側面から解説され,一方で接着の弱さについても言及.矯正と歯周病の治療にて歯間乳頭が喪失した患者にラミネートべニアをジルコニアで行ったケースなどを紹介された.
29期生の松丸悠一氏(フリーランス総義歯治療専門歯科医師)は「問題解決のために必要な下顎総義歯のアウトライン」をテーマに高度顎堤吸収症例患者のための問題解決に必要な義歯形態について,改善点のある義歯のアウトライン,舌下部,舌小帯部,前顎舌骨筋窩のマネジメントなど症例を交えて解説.義歯の臨床においては解剖に基づいた基本的な知識がより求められるという点を強調した.
講演のトリを務めた6期生の若林健史氏(東京都)は「チーム医療で目指す歯周治療~信頼される歯周治療を実現するための医院のシステムづくり~」というテーマで,「歯周治療を実現するための診療哲学」「歯周治療の医院のシステム」「チーム医療を目指して」の3本を柱に講演された。歯周治療成功のカギとして,患者に対する丁寧なカウンセリング,また歯周治療に対する医院の基本的なコンセプトを理解し,スタッフ全員が同じ目標に向かって進むこと等をあげた.最後に「テクノロジーが進んでも最も大事なのは患者との心のつながりである」という言葉で締められた.
また,講演終了後は総合ディスカッションにて質疑応答の時間が設けられ,ジルコニアのラミネートべニアの優位性,接着性ブリッジにジルコニアを使うことはあるのか,義歯患者の薬剤による唾液過多への対応,講演時紹介症例の検討等,活発な議論が行われ,盛況のうちに幕を閉じた.