2024/11/05
11月1日(金)~3日(日)の3日間,国立京都国際会館(京都市左京区)にて標記学会が「国民から信頼される口腔インプラント治療―人生100年時代を見据えた口腔機能の維持回復―」をテーマに開催された(大会長:阪本貴司氏・大阪口腔インプラント研究会).
シンポジウム1「インプラント治療における周術期管理と併発症対策」(座長:小林 恒氏・弘大医,小松晋一氏・愛知インプラントインスティチュート)では,佐々木研一氏(関東・甲信越支部)が「インプラント治療における神経損傷の診断と治療」と題し,インプラント治療に伴う神経損傷の分類と診断,薬剤の使用について整理した.
杉村光隆氏(鹿大)は「インプラント治療における周術期管理と併発症対策」と題し,歯科治療時の患者の全身管理について,特に高血圧患者にフォーカスして周術期管理や併発症対策について解説した.
小林氏は「インプラント治療時の口腔外科的な併発症への対応」と題し,術後感染予防のための適切な抗菌薬使用やインプラント体の上顎洞迷入時の対応,インプラント周囲の口腔がんの発生メカニズムについて文献的に検討した.
シンポジウム5「メカノバイオロジー最前線」(座長:黒嶋伸一郎氏・北大,依田信裕氏・東北大.日本骨代謝学会共催)では,最初に江草宏氏(東北大)が「力が操る口腔粘膜と顎骨の微妙な関係」と題し,顎堤は骨と粘膜が直接面している唯一の組織であることを解説,骨免疫とメカニカルストレスの関連について氏のグループの研究成果をもとに紹介し,顎堤吸収をめぐる遺伝素因や先制医療などについての見通しを述べた.
澤瀬隆氏(長崎大)は「インプラント周囲骨のメカノバイオロジー」と題し,骨質に注目した経緯からスレッドデザインをめぐる研究や産学連携での開発を紹介し,インプラント周囲炎や骨形成の効果などについての考察も行った.
松垣あいら氏(阪大・工学研究科)は「メカノバイオロジーから見た骨基質配向化機構とその人為的制御」と題し,材料学の立場から歯科のみならず椎体間のインプラントや人工股関節なども紹介しながら配向構造を利用した製品の実用化について述べ,さらに歯科インプラントにおける抗菌性などの成果も供覧した.
シンポジウム10「インプラント周囲炎に対する治療戦略」(座長:和田義行氏・北海道形成歯科研究会,正木千尋氏・九歯大)では,大月基弘氏(近畿・北陸支部)が「インプラント周囲炎の基本的知識から治療指針」と題し,インプラント周囲炎の病因論と,病態の病理組織学的検討,デブライドメントの方法と予後等に言及した.
今 一裕氏(岩医大)は「インプラント周囲炎への対応―補綴的観点と外科療法」と題し,インプラント周囲炎の特徴や検査方法,チタンブラシを用いたデブライドメントと自家骨移植を用いた外科的療法について解説した.
石川知弘氏(岡山大病院)は「インプラント周囲炎に対する再建的な外科治療」と題し,インプラント周囲炎によって喪失した硬組織を外科的に再建するアプローチについて,自身の決定樹に基づき豊富な臨床例を供覧した.