2024/10/21
さる10月6日(日),ビジョンセンター浜松町(東京都港区)にて,3Dアカデミー第10回情報交換会が開催された.
3Dアカデミー(千葉豊和会長/札幌市開業)は,口腔内スキャナーによるデジタル印象をはじめとした歯科治療全般におけるデジタル技術を研究・追求し,デジタルワークフローを推進することで歯科医師,歯科技工士の労働環境の改善と国民の口腔健康に寄与していくことを目的として2014年に発足したスタディグループである.千葉豊和会長による開会の挨拶に続き,全8題の講演とランチョンセミナーが行われた.
●特別講演「歯科治療のデジタル化による効果と課題」(三好敬太氏/東京都・二子玉川三好デンタルクリニック)
三好氏は,CBCT,IOS,フェイシャルデータを統合して診断や治療計画の立案,コンサルテーションを行っており,とりわけフェイシャルデータは,患者の正中情報を歯科技工士と共有する際に有用であると指摘,プロビジョナルレストレーションの製作に活用しているという.さらに顎運動データと統合することで,最終補綴装置の咬合調整も減っているという.またStraumann社のStraumann AXSを中心とした包括的なデジタル歯科治療についても紹介した.
●特別講演「フェイススキャンは必要ですか?」(遠山敏成氏/東京都・マイスター春日歯科クリニック)
遠山氏は,フェイススキャンで得られる瞳孔線,口唇,ミッドライン,FH平面,カンペル平面といった情報を審美分析だけでなく,補綴治療の計画立案にも活用しており,さらに“ヴァーチャルフェイスボウ”としてデジタル咬合器に付着する際にもフェイススキャンのデータは有用であるとのことであった.
●特別講演「ナビゲーションシステム『X-Guide』の概要および臨床における有用性について」藤波 淳氏(神奈川県・ふじなみ歯科医院)
藤波氏は,『X-Guide』を用いたインプラント埋入について紹介.従来のサージカルガイドも有用ではあるものの,開口量の少ない患者や術中の計画変更に対応することは困難であると述べ,動的なナビゲーションシステムである『X-Guide』では,サージカルガイドのデメリットが改善され,なおかつ精度も向上しており,インプラント埋入に非常に有効であるとのことであった.
●研究発表「2種類の動的ナビゲーションシステムを使用したインプラント埋入精度とインプラント経験の関連性」山本 涼氏(岩手医大)
山本氏は,動的ナビゲーションシステムである『X-Guide』と『Navident』を用いた埋入精度についての研究を発表.経験5年以上および5年以下の歯科医師が模型を用いて前歯部,臼歯部のインプラント埋入を行い,起始点,埋入角度,深度,先端部の精度を比較した.
結果は,『X-Guide』と『Navident』の比較において経験年数では相関関係は見られなかったが,26部においては『X-Guide』の方が『Navident』より起始点,先端,角度で有意に誤差が少ないという結果であった.
本実験は模型を用いた実験であり,実際は患者の開口量,体動などが精度に影響を与える可能性があることも考慮に入れる必要があるとのことであった.
●特別講演「安心安全なアライナー治療をとりいれて患者さんを幸せにしよう!」松尾幸一氏(東京都・中野デンタルクリニック)
松尾氏は,『suresmile』(デンツプライシロナ)を用いたアライナー矯正について講演.『suresmile』は,顔貌とCBCTデータをマッチングさせることで骨,歯根が見える状態で歯の移動をシミュレーションできるため,安全性を確保し,治療実現性の高い術前診断ができるとのことであった.
また中心位でのバイトデータを治療プランに取り入れることで,顎機能と調和した矯正治療,補綴治療を行えることのことであった.
●特別講演「Esthetic Restorative Dentistry in Digitized Conversion」
北原信也氏(東京都・TEAM東京 ノブレストラティブデンタルオフィス)
北原氏はRomexis(Planmeca)を用いた総合的なデジタル歯科治療について供覧.IOS,CBCT,フェイススキャンを用いることで瞳孔線,咬合平面,ミッドラインが調和したデジタルワックスアップを作成することが可能であり,患者へのコンサルテーションはもちろんのこと,同データをCADソフトに取り込むことでPMMA製プロビジョナルレストレーションの製作,ジルコニア製最終補綴装置の製作など一貫した補綴治療が可能になるとのことであった.その反面,歯科医師と歯科技工士のデータ共有,連携がこれまでにも増して重要になると指摘.歯科医師が製作に必要な情報を歯科技工士に提供することが必須であると述べた.
●特別講演「デジタル歯科治療 CBCTとIOSそしてミリングマシンの臨床応用」山田陽子氏(東京都・デンタルサロン麹町)
山田氏は,自院でのデジタル化の取り組みを紹介.現在使用しているCBCT・CS9600は,フェイススキャンの採得も可能であるため,前歯部の顔貌評価や歯科技工士との情報共有に重宝しているのことであった.またインプラント治療においても,CTの活用はもちろんのこと,フェイススキャンを用いることで顔貌や口唇と調和したインプラント埋入ポジションのシミュレーションが可能であり,歯科技工士とのディスカッションにおいてもこうした情報が有用であるとのことであった.
●特別講演「世界初! Superimpose専用Module“Dupy”を使用した真実なDigital Implant Prothesis」山下恒彦氏(デンテックインターナショナル)
山下氏は,インプラント治療の長期安定にはメンテナンスアビリティとロングタームプロビジョナルレストレーションが重要であると述べ,プロビジョナルレストレーションで得られた形態をいかに最終補綴装置へ移行するかがポイントとなると指摘.そして自身が開発したスーパーインポーズ用のモジュール『Dupy』を紹介した.Dupyは,プロビジョナル装着時,プロビジョナル単体,スキャンボディの3種類のスキャンデータを重ね合わせることが簡単に行え,これまでファイナルへ移行させることが困難であったサブジンジバルカントゥアの形態も簡便に反映させることができるとのことであった.
一日を通して,デジタルデンディストリーの最新情報が示され,聴衆からも活発な質疑応答が交わされた.
成熟しつつあるデジタルデンディストリーであるが,デジタル化によって
「これまで以上にラボとの連携が重要になる.チェアサイドはデジタル情報を提供し,ラボサイドもその情報を読み取る力が求められる」(北原氏)とのことで,今後の歯科医師と歯科技工士の連携の重要性についても示された.