2024/07/23
7月20日(土),21日(日)の2日間,標記大会が千里ライフサイエンスセンター(大阪府)にて「歯内療法の革新と未来」をテーマに開催された(大会長:林美加子氏・阪大).
特別講演はHal Duncan氏(Dublin Dental University Hospital)が「Innovations in Vital Pulp Treatment: Current concepts, scientific development, and clinical recommendations」と題し登壇.AAEやESEのポジションステートメント,氏のグループや他のグループによる研究をもとにして,深在性齲蝕に対する処置について,具体的な症例を供覧しつつ考察を行った.生活歯髄保存療法(VPT)について材料の考察,現状と将来を述べ,これからは教育プログラムの充実や,VPTの周知を図ると同時に,ガイドラインや質の高い研究がさらに必要となることを指摘した(座長:林氏).
シンポジウム1「これからの歯髄保護」では,日本保存学会との協働でまとめた「歯髄保護の診療ガイドライン」(永末書店)をめぐり,3題の講演が行われた.最初に大島勇人氏(新潟大)が「歯髄の生物学的特性と再生能の観点から歯髄保護を考える〈可逆性・不可逆性歯髄炎の解釈と診断のために〉」と題し,歯髄の層構造から外傷に対する反応,修復のメカニズムについて,豊富な組織像をもとに解説した.次に⽥中利典氏(川勝⻭科医院)は「歯髄保護の診療ガイドライン~作成の経緯と保険診療との関係~」と題し,ガイドライン委員会の委員の立場から,治療計画の立案におけるサポートとしての診療ガイドラインの使い方,これまでの経緯と内容の紹介を行い,MTAの保健適用・適用外など保険診療との関係について述べた.最後に辺見浩一氏(恵⽐寿ヘンミデンタルオフィス)が「歯髄保存治療の臨床の実際とこれからの課題」として,歯髄の診断,齲蝕除去法の選択と除去基準,非選択的齲蝕除去後の露髄への対応などについて,症例を供覧しながら解説とこれからの課題を提起した(座長:松﨑英津子氏・福歯大,澤田則宏氏・澤田デンタルオフィス).
デンツプライシロナ賞受賞講演は,富永敏彦氏(とみなが歯科医院)が「⾼周波電流の根尖性⻭周炎への応⽤ EMAT(Electro-Magnetic Apical Treatment)」と題し,2006年から研究開発している高周波電流による複雑な根管への対応に関し,側枝・イスマス・歯根外表面へのアプローチに関する研究や実際の症例を供覧し,今後の課題をまとめた(座長:増⽥宜⼦氏・松⻭⼤).