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　7月12日（金）～7月14日（日），共済ホール（札幌市）にて，標記学会総会・学術大会（大会長：越智守生氏／北海道医療大学）が，「歯科医療管理学を北海道で究める　そして極める」をテーマに開催された．10年前の第55回も「活力ある歯科医療管理～新しい成長モデルを求めて～」をテーマに札幌の地で開催され（大会長：越智氏），前回の第64回（大会長：山内六男氏）の「歯科医療管理学会はどこを目指すのか-教育，専門医の視点から-」という主題に帰着するべく，今回のテーマにしたとのこと．

　特別講演1では，「オンライン資格確認等システムが実現する新しい医療 」と題し，山下 護氏（厚生労働省保険局保険課/現こども家庭庁支援局総務課）が登壇．健康保険証の廃止を定めるマイナンバー法等の一部改正について，令和6（2024）年12月2日とする施行期日政令が公布されたことに伴い，マイナンバーカードの仕組みを銀行のキャッシュカードや携帯を例に挙げ，わかりやすく解説．加入者一人ひとりの医療情報を格納していく私書箱のようなもので，治療履歴や薬剤履歴が蓄積されていくメリットを歯科診療室でも患者さんに伝えていただき，安心して歯科医療を受けてもらいたいと訴えた．

　特別講演2では，「日本歯科医療管理学会に期待すること-過去，現在，未来の視点から-」と題し，永山正人氏（ファミリー会永山ファミリー歯科）が登壇．約40年にわたり「歯科医療管理学」の研究に携わってきた立場から，医療の公共性に基づいた良質な医療の提供と経営効率とを両立させる課題の追求を本学会にお願いした．

　特別講演3では，「地域課題への挑戦～北海道の歯科保健医療を支える連携づくり～」と題し，本田和枝氏（北海道保健福祉部健康安全局地域保健課医療参事）が登壇．「北海道歯科保健医療推進計画（8020はっぴぃプラン）を展開してきたが，令和6年度から新たな計画を策定し，障がい者歯科医療協力医や協力歯科衛生士の確保と資質向上の推進に取り組むことを報告．

　特別講演4では，「認知症の人の歯科口腔管理の課題」と題し，枝広あや子氏（東京都健康長寿医療センター）が登壇．認知症は今や公衆衛生課題であり，人権の課題であると明言．「認知症基本法成立を受けた老年歯科医学会の認知症関連アクションプラン2023」についても触れ，“個の医療管理”と“地域の医療管理”を実現すべく安心できる励ましとサポート体制を構築していく必要があると強く訴えた．

　特別講演5（日本デジタル歯科学会共催企画）では，「歯科医療管理を究めるためのDX戦略」と題し，井田有亮氏（東京大学大学院）が登壇．少子高齢化やエネルギー資源の不安定に伴い，「従来通りの歯科医療を，従来通りの診療報酬や人的資源で提供し続ける」ことが困難な局面となっていることから，ICTを利用したイノベーションをもたらす医療DX（デジタルトランスフォーメーション），ひいては次のステップであるDFFT（信頼性のある自由なデータの流通）に向かうことが肝要であると説いた．

　シンポジウム「口腔の健康とウェルビーイングを促進する教育と実践」では，3名のシンポジストが登壇．村松真澄氏（札幌市立大学看護学科）は「口腔の健康と主観的幸福感を向上させる教育と実践～市民と医療者とをつなぐOral Assessment Guide～」と題し，市民が簡単に口腔アセスメントを実施できるOAGアプリを紹介．竹川政範氏（旭川大学歯科口腔外科学）は「食べる幸せを支援する，急性期病院の試み」と題し，OAGを用いた口腔評価と周術期口腔機能管理により，入院日数が減り，早期退院につながった事例を報告．三谷篤史氏（札幌市立大学デザイン学部）は「口腔介護の基礎技術習得のためのシミュレータ開発とその展望」と題し，口腔介護にかかわるシミュレータの開発を披露．将来的には公共施設や薬局などに設置して，一般市民が口腔介護の手技を知る機会を増やしたいと発信．

　ほか口演発表やポスター討論も熱を帯び，活発な意見が交わされた．日本列島が梅雨独特の高温多湿の中，北海道だけは爽やかに晴れ渡り，学術のみならず，さまざまな交流がはかられた札幌の地であった．
　次回，第66回学術大会は，2025年7月19日（土）～20日（日），沖縄にて開催予定（大会長：比嘉良喬氏）．