2024/07/16
7月13日(土),14日(日)の2日間,標記大会が「繋ぐ~世代・専門分野を越えて」をテーマにあわぎんホール(徳島市)にて開催された(大会長:松香芳三氏・徳島大).
特別講演1「顎関節学会の歩み」では,本学会理事長の依田哲也氏(医科歯科大)が1980年の顎関節研究会の発足,1988年に顎関節学会となり,以降の流れなど,氏の個人史とともに語り,また,発表内容や学会誌のトピックの流れなども紹介した(座長:松香氏).
シンポジウム1「レジェンドからの提言,若者が学会に求めること」では,最初に矢谷博文氏(サラヤ本町歯科クリニック)が「咬合再構成による円板整位療法から保存療法への転換を通して学んだこと,伝えたいこと」と題し,円板整位療法に取り組んだ経験から得たことなどを紹介した後,日本の顎関節症研究・治療の問題点,これからやるべきことなどを提案した.村上賢一郎氏(赤穂市民病院)は「顎関節症に有用な低侵襲治療,外科的手術,そして医療連携」と題し,パンピングマニピュレーションや上関節腔洗浄療法などを紹介,氏の臨床における保存療法の考え方を述べ,低侵襲治療の効果を指摘した.小林馨氏(鶴見大)は「顎関節症の画像診断の課題~見えていない病態」と題し,画像診断をめぐる歴史を紹介し,技術の進歩によりわかったことから,現状でも不十分な部分を指摘,今後に期待した.田村康夫氏(朝日大)は「小児歯科(学)出身の立場から」と題し,若年者顎関節症をめぐる研究成果,統計分析などを紹介,健診上の注意点なども述べた.若手会員からは,廣瀬尚人氏(広島大)が「小児の顎関節症の早期発見,早期治療の必要性」,高原楠旻氏(医科歯科大)が「顎関節症治療に感じる問題点:私の見解」,高岡亮太氏(阪大)が「顎関節MRIデータの活用~日本顎関節学会から世界への発信~」,松本邦史氏(日大)が「これからの顎関節学会に望むこと」と,それぞれコメントを行った(座長:小見山道氏・日大松戸,松本氏).
シンポジウム5「閉塞性睡眠時無呼吸のオーラルアプライアンス療法による顎関節症への影響-歯科医師と患者はどう対処するか-」は,最初に座長である秀島雅之氏(医科歯科大)から閉塞性睡眠時無呼吸の定義・治療・保険などの概説を行った後,鈴木善貴氏(徳島大)が「閉塞性睡眠時無呼吸のオーラルアプライアンス療法と咀嚼筋への影響」と題し,オーラルアプライアンス(OA)治療による咀嚼筋の痛みや,咀嚼筋の活動(RMMA)について考察を行い,睡眠時無呼吸(OSA)は睡眠時ブラキシズム(SB)を引き起こし,SBにOAの効果はあるものの,睡眠時無呼吸患者にはスタビラーゼーションなどの装置が症状を悪化させる可能性を指摘した.石山裕之氏(医科歯科大)は「閉塞性睡眠時無呼吸のオーラルアプライアンス療法における,顎関節症への対応」と題し,OA治療の副作用として咀嚼筋や顎関節への痛みに関し,治療前,治療中の症状について考察,初診時のポイントやステップごとの治療の注意点をまとめた(座長:和気裕之氏・みどり小児歯科,秀島氏).
歯科衛生士シンポジウム「歯科医院で遭遇するアゴに関連したトラブルシューティング」では,最初に「歯科衛生士が遭遇するアゴに関連した様々な問題」として,若槻聡子氏(日歯大)がかくれ顎関節症を疑う症例を紹介,歯科衛生士のできること・すべきことをまとめた.これを受けて和気創氏(みどり小児歯科)が歯科治療による大開口で顎関節症が発症したと患者が認識する場合があり,顎関節の異常をあらかじめスクリーニングする必要を指摘した.次に兜森彩日氏(佐藤歯科医院今戸クリニック)から,リスクの一つとしてのTCHに関し,歯列接触テストとTCH是正法を解説した.佐藤文明氏(佐藤歯科医院今戸クリニック)は,治療後に咬合が変わったケースを供覧し,メインテナンスにおける歯科衛生士の気づきが大切であることを述べた.次いで「治療が奏功しないときに考えるべき疾患」として,島田明子氏(大歯大)が慢性疼痛の患者への対応について整理し,澁谷智明氏(日立製作所)が開業歯科医院で遭遇する可能性が高い疾患を中心に症例を供覧した(座長:兜森氏・佐藤氏).