2024/07/10
7月5日(金)~7日(日)の3日間,クロス・ウェーブ府中(東京都府中市)にて,2024年臨床歯科を語る会が180名の参加者のもと開催された(実行委員長:斎田寛之氏/埼玉県).
恒例の新人発表では,渡邉拓朗氏(神奈川県),井口佳大氏(熊本県),富樫裕一郎氏(東京都),長瀬 崇氏(東京都)の4氏が登壇.いずれも日々の丁寧な臨床の一端を報告した.
全体会①「超高齢社会におけるGPの役割2」では,渡部 守氏(新潟県),須貝昭弘氏(神奈川県)が登壇.昨年の同大会でのテーマがさらに深堀りされ,訪問歯科診療におけるかかりつけ歯科医としてのスタンスや他職種とのかかわりの実際について議論された.渡部氏は訪問診療を生涯メインテナンスのための重要なピースと位置づけ,他職種の領域に互いに少しずつ踏み込むトランスディシプリナリーな関係性がネットワークづくりのキーワードとなると強調.須貝氏は,GPが行ってきた経過観察が,本当に患者のためのものであったのかとの問題を会場に投げかけ,通院できるうちにケアを行いやすい口腔内への準備を行う意義を多くの実例により紹介.通院時からの関係性のある歯科医師こそが訪問歯科診療を行うべきであるとまとめた.
続いて,「能登半島からの教訓」と題し,牧野 明氏(富山県)が登壇.被災時からの克明な記録が紹介され,いつどこでもありうることへの心構えが共有された.
分科会では,「加齢変化を見据えたパーシャルデンチャー」「審美性を考慮した前歯部補綴処置」「根分岐部病変にどう立ち向かうか」の3つのテーマが設定された.「加齢変化を~」では,5名の演者が登壇し,患者の身体状況の変化や機能の低下を踏まえ,「不自由のない義歯」のあるべき姿が,地域性や診療スタイルの垣根を越えて議論された.
全体会②「骨免疫学からみた歯周炎・咬合性外傷・骨吸収と骨形成」では,骨免疫学領域で多くの研究成果を上げている塚崎雅之氏(東京大学)を招き,臨床で観察される力をめぐる現象の真相解明が試みられた.まず熊谷真一氏(静岡県),千葉英史氏(千葉県)により,力の存在を示すと考えられてきた指標として歯根膜腔の肥厚や骨硬化像,骨梁像の不透過性亢進などのX線像の変化,また口腔内における骨隆起の存在などから,臨床上の力をめぐる疑問を提示.塚崎氏は,生体防御という大きな枠組みのなかでの力へのリアクションとして骨破壊や骨造成という現象を理解すべきとし,また発生学的な視点も加味することで骨膜や歯根膜の役割がみえてくることを,多くの最新の研究事情とともに解説された.同会が長らく大切にしてきた経過観察を背景とした経験則が,科学的根拠により裏付け,検証される大きな可能性が示された.