2024/06/25
2024年6月23日(日),福岡県歯科医師会館(福岡市)にてPABC合同例会が開催された(主宰・安東俊夫氏,福岡県).2007年に基礎から臨床を見つめ研鑽することを目的として設立された同スタディグループの通常例会は,P1~P3にわかれて行われており,昨年に引き続き2回目の合同例会となった.
会員発表では,P1~P3まであわせて5名の演者が登壇した.
「リテイナータイプの治療用義歯を用いた咬合再構成の一症例」の演題で登壇した山下 敏生氏(福岡県)は,自身の症例を振り返り,顎位を模索しながらう蝕処置や歯周基本治療を行えるオーバーレイタイプの利点を強調した.
「保存不可の歯牙に対して自家歯牙移植で対応した2症例」の演題で登壇した原田勝也氏(福岡県)は,遅延型移植で対応した2つの症例を供覧し,それぞれについての反省点と対策を述べたうえで,移植床と移植歯のデンタルX線写真やCT像を撮影することの重要性を説いた.
「安全安心なソケットプリザーべーション」の演題で登壇した小野田吉史氏(福岡県)は,患者の年代や主訴の異なる3つの症例を供覧し,ソケットプリザーベーションテクニックに関する理論に照らしながらも,下川公一先生の『歯科治療は経験学』との言葉通り,実践で学ぶ大切さについて言及した.
「不正咬合に対してインビザラインを用いて対応した私の臨床」の演題で登壇した古賀弘毅氏(福岡県)は,犬歯の唇側転位を起こした2症例について供覧し,アライナー矯正における歯牙移動の理論などを織り交ぜながら,実践を示した.
「当院における義歯治療への取り組み」の演題で登壇した中富研介氏(福岡県)は,下顎の遊離端欠損,上顎の多数歯欠損,すれ違い咬合の3つの症例を示したのち,義歯からインプラント治療へ切り替えた参考症例を供覧し,保険適応の義歯のみだけではなく,さまざまな治療オプションを持つことの重要性を述べた.
特別講演では,斎田寛之氏(埼玉県)が「〝ひと くち は” で考える歯周治療について」の演題で登壇した.歯科医療は,歯,口腔内,患者のそれぞれの側面に照らして過不足ない個別の対応が求められると述べ,ポジティブファクター/ネガティブファクターなどの観点から歯周病の治りやすさを予測したうえで,残せる歯と残せない歯を見極める実践例を多く示した.