2024/06/18
6月15日(土),16日(日)の両日,大阪国際会議場(グランキューブ大阪.大阪市北区)にて標記学会が「大阪・関西Perio万博2024~未来へ繋ぐぺリオ・インプラントの最前線~」をテーマに開催された(大会長:瀧野裕行氏・京都府)〔オンデマンド配信:7月10日(水)~8月20日(火)〕.
歯科医師教育講演① ペリオオルソ/Periodontics and Orthodontics(座長:岩田光弘氏・岡山県)では,まず岩田氏が「不正咬合を有する歯周炎患者への対応~歯周—矯正治療に潜むリスクとベネフィットの再検証~」として,歯周病患者への矯正治療におけるリスク要因としての骨縁下欠損と歯肉退縮について考察した.
次に工藤 求氏(東京都)が「重度歯周炎に対する歯周-矯正-インプラントを用いたトータルマネージメント」と題し,自身の発案による歯周組織再生療法後にアライナー矯正治療を行う手法や矯正治療前の戦略的インプラント埋入などのアプローチを紹介した.
綿引淳一氏(東京都)は「Phenotype Modification Therapy:エビデンスと新たな可能性-ペリオとオルソの複眼的視点からの提言」と題し,2024年のヨーロッパ矯正歯科学会でも議論されたペリオオルソの最新エビデンスや,歯肉退縮に対応するPhenotype Modification Therapy,自身の考案した矯正治療に最適化した歯周組織再生療法のアプローチの最新コンセプトを供覧した.
歯科医師教育講演② インプラント周囲炎/Peri-Implantitis(座長/演者:中家麻里氏・大阪府)では,中家氏が「No Perio! No Implant! インプラントの長期的安定性を獲得するための歯周治療学的配慮」と題し,20年超の長期症例を供覧しながら,インプラント症例の長期安定に求められる軟組織条件や患者による口腔管理の諸条件等をまとめた.
辰巳順一氏(朝日大学)は,「インプラント周囲炎は予防可能な疾患か?」と題し登壇.インプラント周囲炎発症に関わる可能性の高い因子について,歯周疾患の既往と患者のプラークコントロールの観点を中心に,現在までに発表されている文献等から予防法を考察した.
三上 格氏(北海道)は,「肉芽の科学と臨床 ―インプラント周囲炎と肉芽―」と題し,不良肉芽と呼ばれる感染肉芽について,臨床的に適切な名称や,下野正基氏による病理組織学的な考え方を解説.インプラント周囲炎においては,炎症性肉芽の除去,インプラント体の除染,皮膜骨膜弁の閉鎖などが長期安定に重要となること等を示した.
認定医限定プラチナムでは,「患者一人ひとりに真に調和した咬合の与え方~歯周病患者における咬合を考える~」をテーマに佐々木 猛氏(大阪府)が登壇(座長:清水 賢氏・広島市).
歯周治療を成功に導くための力のコントロールとして,安定した咬合についての考え方を呈示.患者個々に真に調和した咬合付与を目指した,咬合面形態の新たな作製法であるGGO(Gnatho-Guide Occlusion)について,症例とともに解説した.
歯科衛生士シンポジウム①「新時代の歯周基本治療」(座長:南昌宏氏・大阪府,太田めぐみ氏・大阪府)では,小宮純子氏(東京都)、髙橋規子氏(兵庫県)、伊達奏美氏(岡山県)が登壇.口腔内スキャナーやマイクロスコープの拡大映像,CRPをはじめとする臨床検査などの新たなデバイスを歯周基本治療に活かしている例を紹介し,これらの活用が患者との信頼関係構築や歯周治療の成功に資することに症例を通して供覧した.
歯科衛生士シンポジウム② 「エンドペリオ・インプラント周囲炎」(座長:木村文彦氏・神奈川県,大月基弘氏・大阪府)では,前半は内藤 和美氏,萬田久美子氏らがエンドペリオ病変(歯内-歯周病変)の鑑別と分類ごとの対応法について解説.歯周病と正しく鑑別し,歯科医師と連携を図ることの重要性が強調された.また,後半では,丸山 葉子氏(大阪府)が60歳以下のインプラント患者について,相見 礼子氏(広島県)が60歳以上のインプラント患者について,メインテナンスのポイントとともに言及.ライフステージとともに変化する患者の審美的要求や健康観,全身的なリスクに合わせてメインテナンス内容を変化させることを提案した.
歯科衛生士教育講演③では,「“私的”ペリオの学び方」と題して,山本浩正氏(大阪府)が登壇(座長:塩浦有紀氏・東京都,小林明子氏・東京都).
山本氏が歯科医師となって初めて任されたシャープニングのエピソードから始まり,アーカンサスストーンの起源を辿るなかで,ノバキュライト,石英(SiO2),圧電効果(ピエゾ効果)…と至るなど,身近なテーマを興味をもって追究することで周辺知識へと門戸が開かれることを解説.患者の来院中断による悪化から学べること,医学論文の見方・捉え方など,医療職としての学びをいかに深めるか,ユーモアあふれる事例とともに示した.
歯科衛生士シンポジウム①
歯科衛生士シンポジウム②の登壇者
歯科衛生士教育講演③に登壇した山本浩正氏
次回大会は,2025年7月26日(土),27日(日),広島国際会議場にて開催される