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第73回日本口腔衛生学会学術大会・総会開催される
 5月10日(金)~5月12日(日),トーサイクラシックホール岩手(岩手県盛岡市)にて,標記学会学術大会・総会(大会長:岸 光男氏/岩手医科大学歯学部)が,「健康の伸びしろ」をテーマに開催され,特別講演,日本歯科医学会会長懇話会,3つの大会企画シンポジウム,5つの委員会企画シンポジウム,2つの一般企画シンポジウム,5つのイブニングシンポジウムが行われた.
大会長の岸 光男氏
イブニングシンポジウムの様子
 特別講演では,「シェイクスピアが描く病と健康」をテーマに,日本人でシェイクスピア全作品を翻訳された史上三人目の翻訳家および著明な演劇評論家である松岡和子氏(東京医科歯科大学名誉教授)が登壇.『ハムレット』とうつ病,『オセロー』とてんかん,『リア王』と認知症,『マクベス』と不眠,さらには『ロミオとジュリエット』の行き違いの原因がペストの検閲のせいだったことなど,「病と健康」という観点からのシェイクスピアをたっぷりと解説.
 日本歯科医学会会長懇話会では,「6期目の着実な歩み」と題して,住友雅人氏(日本歯科医学会会長)が登壇.2025年9月26日(金)~9月28日(日)に開催される第25回日本歯科医学会学術大会(会頭:川口陽子氏)と,「食べることは生きること」をテーマに共創パートナーとなっている「2025大阪・関西万博」の成功に向けて,各方面への協力を依頼.
 大会企画シンポジウム2では,「マイクロバイオーム研究の口腔保健への活用の伸びしろ」をテーマに,4名のシンポジストが登壇.竹下 徹氏(九州大学大学院)は日本人の死亡原因の1つである誤嚥性肺炎を防ぐためには口腔常在微生物の量だけではなく,質についても見極める必要があること,また口腔常在微生物叢の正しい理解が必要であると説明.久保庭雅恵氏(大阪大学大学院)は,Fusobacterium nucleatumStreptococcus gordoniiとの代謝相互作用によって活性化され,メチルメルカプタンを産生する新たな知見を発表.今井健一氏(日本大学歯学部)は,7年ぶりに改訂された『成人肺炎診療ガイドライン2024』(一般社団法人日本呼吸器学会)について口腔・歯科に関する項目が倍増され,口腔・歯科に関する内容が倍増するとともに,肺炎予防として(肺炎予防の項目に)「口腔ケア」が明記されたことを報告し,「肺炎球菌ワクチンの推奨と共に,口腔ケアも!」を強調.小松澤 均氏(広島大学大学院)はミュータンスレンサ球菌に作用するバクテリオファージを単離し,検証していることを報告した.
 委員会企画シンポジウム1では,「最近の小児のフッ化物応用の疑問を解く」をテーマに5名のシンポジストが登壇.石塚洋一氏(東京歯科大学)は,フッ化物配合歯磨剤の濃度や製品だけでなく使用量や吐き出し,保管場所など,効果的で安全な使い方を保護者に指導すべきであると強調.眞木吉信氏(東京歯科大学)は,令和5年5月19日付で厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長より各都道府県,保健所設置市および特別区に配信された「薬用歯みがき類『チェック・アップドコモA』の使用後に発現したアナフィラキシーについて」,について,この製品でのアレルギーはもちろんのこと,アナフィラキシーの報告は12年間皆無であること,一方で厚労省の文書には「現時点では,本製品の使用とアナフィラキシー発現の因果関係は明らかではありません」と記載があることを報告し,厚労省の誤解を招く通知に警鐘を鳴らしたうえで,国民の正しい理解と冷静な態度を求めた.相田 潤氏(東京医科歯科大学大学院)は,WHOの文書の内容やコクランライブラリーのシステマティックレビューなどが必ずしも日本の状況にあてはまるわけではないことを説明し,4学会(日本口腔衛生学会,日本小児歯科学会,日本歯科保存学会,日本老年歯科医学会)合同で2023年4月に公開された「う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法【普及版】」を紹介した.古田美智子氏(九州大学大学院)は広く知れ渡っている「乳幼児期の親との食器共用を避けるとう蝕を防ぐことができる」考え方について,近年の疫学研究から,さまざまなう蝕関連要因の影響を考慮すると,う蝕との関連性が認められず,親子のスキンシップが大切な子育てにおいて,必要以上に食器共用を気にする必要はないと考えられると提言.秋野憲一氏(札幌市保健福祉局保健所)は,生涯を通じての医療費削減のために保育園,幼稚園,学校における集団フッ化物洗口の導入に向けた札幌市の取り組みを紹介した.
 委員会企画シンポジウム2では,「Society5.0時代を担う!令和の口腔保健教育のあり方」をテーマに2名のシンポジストが登壇.Society5.0とは,仮想空間と現実空間を融合させ,経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society)を意図している.泉 繭依氏(九州歯科大学歯学部)は,ネットリテラシーが高く,平等と人権に対する意識が高いといわれているZ世代の学生のストレスマネジメントや心理的サポートをする際に活用できるツールとして,「セルフコンパッション」と「レジリエンス」を紹介.伊藤 奏氏(東京医科歯科大学大学院)は,人間そっくりな外観とリアルな反応のヒト型患者ロボット(シムロイド)を使用した歯科衛生士学生の歯科保健指導実習を紹介し,ICT教育の活用による高い教育効果の可能性を述べた.
左から伊藤 奏氏,泉 繭依氏,尾﨑哲則氏,野口有紀氏
 ほか,一般口演,ポスター発表,2つのランチョンセミナー,5年ぶりとなる懇親会が組まれ,風薫る新緑の盛岡の地で,再会に喜び合いながら,最新の知見を得,充実した3日間となった.
 次回,第74回学会学術大会・総会は2025年5月16日(金)~18日(日),朱鷺メッセ新潟コンベションセンター(大会長:小松﨑 明氏/日本歯科大学新潟生命歯学部)にて開催予定.
懇親会の様子:盛岡市の伝統的な祭である「さんさ踊り」が披露された

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