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東京歯科大学リカレント教育セミナー 開催される
3月3日(日),東京歯科大学水道橋校舎(東京都千代田区)にて,東京歯科大学リカレント教育セミナー「今どきの目で口腔粘膜を見直そう-口腔粘膜からみる医科との診療連携と歯科診療―」が,会場およびWeb視聴のハイブリッド形式にて開催され,あわせて138名が参加した.
本セミナーは,2023年度より開始された同学研究プロジェクト(ウェルビーイングプロジェクト)の一環として,基礎研究と臨床現場との,ならびに医科-歯科の領域横断的な情報交換を目的に開催されたものである.

まずイントロダクションとして,片倉 朗氏(東京歯科大学・副学長)が登壇し,ウェルビーイングプロジェクトおよび本セミナーの位置づけを紹介.講座横断的に研究を行う環境を整備し,研究力の高い大学としての評価を目指した取り組みの現状とこれまでの実績が報告された.特に長期的な視点では,若手研究種目群での科研費採択が重要であると強調した.
続いて,山口剛史氏(東京歯科大学市川総合病院・眼科)が「培養口腔粘膜の角膜移植への応用」との演題で講演.自家培養口腔粘膜上皮による角膜上皮幹細胞疲弊症治療が保険適用となり,眼科領域で口腔粘膜に注目が集まっている背景を紹介.培養上皮シートによるさまざまな難治疾患治療の現状と可能性,課題について整理された.
河野通良氏(東京歯科大学市川総合病院・皮膚科)は「掌蹠膿疱症患者における口腔内細菌と口腔内サイトカインの解析研究」との演題で登壇.歯性病巣治療と掌蹠膿疱症改善の関連について,改善群/非改善群では口腔マイクロバイオームが異なっていること,そして両者の違いは関節症状の有無が鍵となっている可能性,さらには関節リウマチとの共通性についても指摘した.また,口腔内細菌叢の変化が局所の炎症性サイトカインの変化を導いている可能性にも言及した.
佐々木穂高氏(東京歯科大学・口腔インプラント学講座)は,「インプラント周囲軟組織の遺伝子解析からインプラント周囲炎の予防へ」との講演.天然歯周囲とインプラント周囲の生体防御機構の違いを,組織のターンオーバー,接着タンパク,線維走行,血液供給などの点から解説.そのうえでインプラント周囲組織に高発現する遺伝子の網羅的解析の結果を報告し,インプラント周囲の封鎖性向上を導く遺伝子の同定とそのコントロールが,インプラント周囲炎予防につながる可能性を示唆した.
澁川義幸氏(東京歯科大学・生理学講座)による講演「口腔粘膜の機能:Revisiting」では,口腔粘膜の備える機能を「バリア機能」「免疫機能」「感覚機能」の視点から改めて整理.口腔粘膜では自然免疫活性が高いこと,また部位により感覚点の分布が異なることなど,口腔機能を円滑に営むための生体のメカニズムを解説された.
田坂彰規氏(東京歯科大学・パーシャルデンチャー補綴学講座)は「局部床義歯の印象採得における顎堤粘膜の被圧変位に対する考え方」との講演にて,歯根膜支持となる残存歯と顎堤粘膜における被圧変位量の違いを詳説.特に遊離端欠損部の局部床義歯製作における印象採得時の配慮事項を整理し,個人トレーを用いた解剖学的印象と機能印象を同時に採得する工夫を紹介した.また,昨今注目される光学印象による局部床義歯については,顎堤粘膜の加圧方法に課題が存在すると指摘した.
最後の演題「インプラントオーバーデンチャー(IOD・IARPD)における顎堤粘膜被圧変位特性の捉え方」では藤関雅嗣氏(東京都開業)が登壇.IOD・IARPDの製作においては,残存歯(歯根膜),顎堤粘膜に加えインプラント(骨)という3つの被圧変位特性と向き合うことになると強調.印象採得にあたっては,テンポラリーデンチャー装着期間において義歯床下粘膜に十分に機能圧をかけ,いわゆるクリーピングの状態を得た後に印象採得を行うべきであるとした.

全体討論では,各領域における研究の詳細についてのみならず,実際の臨床における医科-歯科の連携のあり方等についてまで,幅広いディスカッションが行われた.

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