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JUC10周年記念講演会 開催される
2023年12月2日(土),3日(日)の2日間,電気ビル共創館みらいホール(福岡市)にて,スタディグループJUC(Japan United Colleagues)第10回記念講演会が開催された(会長:小山浩一郎氏,大会長:林美穂氏).
同会は,会員各人が知識と技術の向上を目指すとともに,共に学び合う仲間としてお互いを尊重する「利他の心」をもつことを基本理念とし,水上哲也氏を初代会長とし2012年に発足.10年の節目となる記念発表会は,「First Decade―始まりの10年,これからの10年」をメインテーマに,これからの10年に向けた起点と位置づけられた.
JUC会長・小山氏
初日は「1本の歯の保存とこれからの歯科医療の取り組み」のテーマのもと,同会の将来を担う気鋭の8名の演者が登壇.「診断のための資料採得」臼杵雄一郎氏(福岡県/うすき歯科クリニック)では,総合的な臨床判断のためのさまざまな資料の位置づけを整理.中田 穣氏(広島県/ゆたか歯科クリニック)は「歯内療法を成功に導く根管洗浄」をテーマに,特に根尖部の効果的な洗浄法としての根管内吸引洗浄の術式を提示した.「直接法レジンコアにおける支台築造の留意点」丸山俊正氏(福岡県/まるやま歯科)では,封鎖性や破折・脱離予防のための支台築造の要点を整理.なかでもヒートプラガーの効果的な応用について紹介した.久木田大氏(熊本県/くきた歯科クリニック)は「1本の歯を救う」をテーマに,歯質の条件を適切に評価し,将来的な病態悪化の可能性も見極めたうえでのMIであることが重要とした.
柳川淳子氏(福岡県/歯科・林美穂医院)は,「小児期における咬合育成を考える」とのタイトルにて,小児期における咬合育成をめくる現状を整理.健全な機能獲得と維持のためには,介入のタイミングが最も重要となると強調した.本多正幸氏(福岡県/ほんだ歯科診療室)は,「健全な歯並びはここから!小児の口腔機能育成の大切さ」とのテーマにて,小児期の適切な口腔機能獲得が,高齢期のオーラルフレイルへの予防効果が期待されるとしたうえで,診療所でのさまざまな取り組みを紹介.特に食事時の動画から得られる多くの情報は会場の耳目を集めた.「子供の健全な成長発育を目指して」花岡洋介氏(兵庫県/はな歯科)では,原因除去のない機能改善では,再発のリスクのみが残ると指摘.姿勢の改善が重要なアプローチとなると強調した.「成長発育期における萌出困難歯への対応」小川直子氏(福岡県/新宮スマイル歯科小児歯科医院)では,患者や保護者が気づきにくい萌出困難歯を見逃さない目をもつ必要性に言及した.
さらに,平井友成氏(福岡県/平井歯科クリニック)によるチャーターメンバー講演「1本の歯の保存・修復から始まる歯科治療」では,歯の保存をめぐっては,さまざまな判断要素と身につけるべき手技が存在し,それらを適切に使い分ける能力の向上が求められるとまとめた.
久木田氏、丸山氏、中田氏、臼杵氏
小川氏、花岡氏、本多氏、柳川氏
2日目午前は,同会のこれまでの10年の活動を振り返るシンポジウム「今まで築いてきた10年」として,8名の演者が登壇.
「MI型歯周再生療法の歩み」溝上宗久氏(福岡県/溝上歯科学研都市クリニック),続く「クローズアップう蝕除去」小関亮介氏(沖縄県/那覇みなみ歯科クリニック)では,同会が取り組んできた低侵襲の治療概念について,歯周再生療法,う蝕治療の両側面から,術式選択や使用器具などについて,幅広い症例報告とともに解説した.「多様な根管形態に対するエンド治療で取り組んできたことと」坂田憲彦氏(福岡県・坂田歯科医院)では,さまざまな形態や状況下にある根管に対し,進化する器具器材の選択と使用法を,多くの実例により紹介した.「審美補綴治療における10年の変遷」森本昌孝氏(福岡県/もりもと歯科医院)では,メタルボンドからモノリシックジルコニアまで,マテリアルの変遷を整理し,それぞれの利点・欠点を踏まえた審美補綴の現状を報告.「Sinus Floor Elevationの術式の変遷」村岡卓也氏(福岡県/むらおか歯科医院)では,上顎洞庭挙上に関するVerticai,Lateralの両アプローチの変遷と自院での臨床実績を紹介.さらに現在注目される水圧式アプローチ(Cas-Kit)の取り組みを紹介した.「義歯の勘所」神田亨氏(長崎県/かんだ歯科)では,欠損補綴における主たる対応はいまだ有床義歯であるとの前提に立ち,多数の残存天然歯を含めた治療の予知性をめぐるポイントはシンプルな設計にあると強調した.
シンポジウムのまとめとして,馬場正英氏(福岡県/ばば歯科クリニック),葛西秀夫氏(福岡県/かさい歯科医院)が登壇.「発表会とともに歩んだ10年」との講演を行い,同会のこれまでの活動を象徴する症例を報告し,目指す理念の現状での到達点に言及した.
溝上氏、小関氏、坂田氏、森本氏
馬場氏、葛西氏、神田氏、村岡氏
2日目午後は,同会の次の10年を見据えたシンポジウム「これからの10年」として,6名の演者が登壇.
池上龍朗氏(福岡県/富山歯科クリニック)は,「接着のこれから」とのテーマにて,10年先を見越しての,接着をめぐる変わるものと変わらないものを整理.特に化学結合である接着のシステムそのものは不変であることに留意する必要性を強調した.「歯科医療におけるデジタル化の是非:未来へ進むべき道」村川達也氏(福岡県/むらかわ歯科クリニック)では,デジタルとアナログは対立概念ではなく,同会が磨いてきたアナログでのスキルをデジタル環境に融合させるハイブリッドなスタンスが求められるとした.吉松繁人氏(福岡県/吉松歯科医院)は「超高齢化社会に求められる補綴設計への提言」と題し,口腔内に既存のインプラントを活用したリカバリーの工夫を症例を通して紹介.林美穂氏(福岡県/歯科・林美穂医院)は「これからの審美インプラント治療」と題し,審美領域のインプラント治療においては唇側骨の取り扱いが最も重要であるとし,さまざまなシチュエーションでの術式の配慮を紹介した.一方で,GBRを含めた臼歯部での十分な経験なしに取り組むべきではないとも強調した.金成雅彦氏(山口県/クリスタル歯科)は「Collaboration of Perio and Ortho」とのテーマで講演.目を見張る器材や材料の進化により,歯周治療と矯正治療の有機的な併用に大きな可能性が期待される一方,それらの進歩を冷静に考察する目を併せもつ必要があるとの警鐘を鳴らした.水上哲也氏(福岡県/水上歯科クリニック)は「スタディグループの10年」と題し,これからの時代のスタディグループの意味について考察.溢れる情報と目の前の患者の幸福を結ぶ納得解を追求するにあたり,同じ理念を有する集団の力が求められると結び,2日間の記念講演会を総括した.
吉松氏、村川氏、池上氏
水上氏、金成氏、林氏

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