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第14回日本歯科衛生教育学会学術大会 開催される
 2023年12月2日(土)~3日(日),日本歯科衛生教育学会(理事長:石川裕子氏/千葉県立保健医療大学健康科学部教授)第14回学術大会が「歯科衛生学教育におけるプロフェッショナリズムの醸成-キャリア教育の果たす役割-」をテーマに対面型(日本歯科大学生命歯学部)とオンデマンド配信を併用したハイブリッド形式で開催された(大会長:合場千佳子氏/日本歯科大学東京短期大学教授,実行委員長:池田利恵氏/日本歯科大学東京短期大学教授).新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生後のWeb開催から4年ぶりの対面型となった.
左から,学会理事長の石川氏,大会長の合場氏,大会実行委員長の池田氏
 教育講演Ⅰ『高齢者に優しい服薬とその管理とは?』では,富田 隆氏(国際医療福祉大学薬学部教授)が登壇し,加齢に伴う生体変化の基本知識から,特に嚥下障害のある高齢患者の服薬に関する注意点を紹介した.さまざまな症例報告・臨床研究を供覧しながら,一般に高齢患者でも服用しやすいといわれている口腔内崩壊錠や,とろみ剤を用いた服薬の工夫などが孕む問題点に言及したうえで,歯科衛生士が臨床現場で適切な服薬の支援を行えるよう,エビデンスに基づいたアドバイスを送った.また,今後は嚥下障害のある高齢者にも対応できるような合理的な服薬ツールが必要になると述べ,薬剤師と歯科医療者の視点をあわせた共同研究を呼びかけた.
富田氏
 教育講演Ⅱ『最期まで食べられる街づくり―地域食支援の実践―』では,五島朋幸氏(ふれあい歯科ごとう院長)が登壇.自身が歯科訪問診療の世界に足を踏み入れたきっかけや,禁食状態から経口摂取ができるまでに回復した患者のエピソード,五島氏が取り組んでいる地域食支援活動の実情を紹介し,食支援に必要な地域のネットワークと多職種連携の在り方を説いた.また,真に食支援を行うには,市民と専門職による「見つける・つなぐ・結果を出す・そして広める(MTK&HⓇ)」ことが重要であると提唱し,「食の大切さを社会に広めていけるような,情熱のある歯科衛生士を育ててほしい」と会場の教育関係者達に訴えた.
五島氏
 特別講演では,『専門教育の本質とは何か~プロフェッショナリズムと多職種連携教育』をテーマに鶴田 潤氏(東京医科歯科大学統合教育機構教育教授)が登壇.専門職教育はプロフェッショナルとして「任せられる人を育てるもの」と示した.そのためには仕事と自分に自信をもった発信力が必要であり,多職種連携教育で他職種を目指す学生との協働を通じてプロフェッションに期待される要求を直に感じ,役割の責任を体感すること,人前で考えを伝える訓練などを通じて力を醸成することの有用性を歯科衛生士倫理綱領などにも触れつつ示した.
 会場からは金澤紀子氏(元公益社団法人日本歯科衛生士会顧問)より,他からみて歯科衛生士に何が要求されているのか自分たちだけで考えて終わるのではなく,他職種や社会にも明示していくことが重要であること,また意識が多様になってきている学生にどう自分たちの就く職業の在り方を教え,考えさせるようにできるかが,今後の歯科衛生士の可能性を広げていくものになるだろうとのエールが送られた.座長の合場千佳子氏(日本歯科大学短期大学教授)は「気づきを学びに変える」ことができるような学生指導がより必要とされていくだろうとして,充実した内容を締めくくられた.
鶴田氏
 シンポジウムでは『自立を目指すキャリア教育の推進-多職種連携授業の展開-』をテーマに3名のシンポジストが登壇.小原道子氏(帝京平成大学薬学部教授)は「地域における薬剤師の役割と多職種連携」と題して,訪問薬剤師の役割の重要性とともに,地域ケア会議に学生を傍聴させる講義や,ゴミ拾い・薬物乱用防止キャンペーン活動など,学生が地域で行う部活動「地域連携部」があることを紹介.新井 恵氏(埼玉県立大学保健医療学部健康開発学科口腔保健科学専攻准教授)は「歯科衛生教育における専門職連携教育(IPE)の実践」と題して,看護学科,理学療法学科,作業療法学科,社会福祉子ども学科,健康開発学科の全学科で取り組んでいるIPW(専門職連携実践)を,葛藤が伝わる学生の実際のコメントを交えて具体的に紹介.柴田由美氏(昭和大学大学院保健医療学研究科講師)は「急性期病院におけるチーム医療の実際と歯科衛生士の役割」と題して,病院歯科における歯科衛生士の存在意義と全身疾患の知識および多職種とコミュニケーションをとれる共通言語の習得が必要であることを発信.歯科衛生士の魅力と可能性を経験を通して伝えるという柴田氏の言葉に重みを感じた.
左から,シンポジストの柴田氏,新井氏,小原氏とコーディネーターの犬飼氏
 本学会初の試みとなる産学連携セミナーでは,谷口裕重氏(朝日大学歯学部教授)が,『嚥下調整食って「美味しくない」と思いますか?~美味しく,安全な嚥下調整食を展望する~』と題して講演した.嚥下調整食は一般に医療者・医療関連企業の視点で開発されるため,安全性やマンパワー,栄養などが優先され,美味しさの追求という点では改善の余地があると指摘.外食産業や食品会社の視点を取り入れることが重要であるとして,朝日大学摂食嚥下リハビリテーション学分野とコメダ珈琲店による「とろみコーヒー」共同開発の事例を紹介した.本製品をきっかけとして経口摂取を回復できた症例も紹介し,美味しさと安全性を両立した嚥下調整食によって,患者の食欲・意欲を引き出すことができると強調した.
 会場では,「とろみコーヒー」と,同じく医療者と食品会社の共同開発により生まれた「なめらかすてら」(みかど本舗/長崎県)が振る舞われ,参加者は「美味しさと安全性の両立」を体験していた.
谷口氏
 教育講演Ⅲでは末石倫大氏(末石・古久保法律事務所 弁護士)が登壇.野口有紀氏(静岡県立大学短期大学部歯科衛生学科 教授)が座長を務め,『歯科衛生士のための研究倫理と法』と題して,歯科衛生士が研究活動を行う場合に理解しておくべき倫理と臨床研究法などの制度についての解説を行った.末石氏は,自らの行っている活動が研究なのか,診療なのかを正確に理解する必要性を説き,歯科衛生士の活動を類型化し,それぞれが研究に該当するか否かを具体的な事例を挙げながら述べた.そのうえで,研究に該当すると思われる場合は,「臨床研究法」および「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」とよく照らし合わせながら,適切な研究計画書を作成し,所属する機関や学会の倫理審査委員会に諮ることが必要であると述べた.また,倫理指針は頻繁に改正されるため,常に最新の情報を把握しておくことが重要であると指摘した.本学会で,末石氏のような医療を専門とする法律家の講演は初めてとあって,質疑応答も活発に行われた.
末石氏
 このほか,口演発表12題,ポスター発表16題の発表も行われた.
ポスター発表の様子
 次回学術大会は2024年11月30日(土),12月1日(日)に大阪歯科大学楠葉学舎講堂(看護学部新校舎)にて開催予定.大会長は糸田昌隆氏(大阪歯科大学医療保健学部教授) .

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