2023/10/30
2023年10月29日(日),TIME SHARING 新御茶ノ水(東京都千代田区)にて,標記研修発表会が開催された.
「サモアでのフッ化物洗口と歯周治療」の演題で登壇した浦崎裕之氏(ルマナイサモナ)は,サモアの小学校や支援学校においてフッ化物洗口の実践を進めた自身の活動について振り返った.総人口20万人ほどのサモアは,歯科医師の人数が15名ほどと少なく,歯科に対する意識が必ずしも高いとは言えないものの,反面コミュニケーションが親密で理解を求めていけば協力も得やすいことなどを報告した.浦崎氏は活動の根幹を「支援ではなく恩返し」であると語り,強い気持ちで現地の人びとと交流していることを明かした.
「トンガ王国における25年間の歯科保健活動」の演題で登壇した内田千鶴氏,河村サユリ氏(南太平洋医療隊)は,トンガ王国における活動の軌跡を示した.活動を始めた当初,設備不足,器材不足,人員不足などにより,適切な歯科治療が受けられない環境であったが,マリマリ(トンガ語で“笑顔”の意)プログラムなどの浸透に伴って,齲蝕の半減,歯周病予防システムの定着,歯科検診の自立などの効果を得られたと報告した.一方で,フッ化ナトリウムの入手や歯周病治療のフォローなどの課題も指摘した.
それぞれの講演が終わったのちは会場全体でのディスカッションに移行し,異なる地域で活動する歯科医師同士が意見や情報を交換する有意義な場となった.