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第316回東京歯科大学学会シンポジウム 開催される
 10月21日(土),東京歯科大学水道橋校舎新館(東京都千代田区)にて,第316回東京歯科大学学会シンポジウム「口腔内と腸内細菌叢の理解から紐解く歯周疾患-口腔からのウェルビーイング社会創生への道しるべ-」(東京歯科大学研究プロジェクト共催)が,Zoom配信とのハイブリッド形式にて,約190名が参加し開催された.
 本シンポジウムは,同学において本年度より実施されている「ウェルビーイングプロジェクト」の一環として開催されたもので,「口腔内と腸内細菌叢の連関が及ぼす歯周疾患」をメインテーマとし,学内外の6名のシンポジストによる講演が行われた.

 溝口利英氏(東京歯科大学口腔科学研究センター)は,イントロダクションとして,同プロジェクトの概略と本シンポジウムの位置づけについて紹介し,口腔内と腸内細菌叢をめぐる研究の進展が,歯周疾患と全身疾患の理解をさらに強固にすると述べた.
 石原和幸氏(東京歯科大学微生物学講座)は「ディスバイオーシスにおける細菌間相互作用」との講演にて,Pg,Td,Fmの菌種間の共凝集によるバイオフィルム形成機構に関する研究データを紹介し,病原性の高いバイオフィルムを誘導するディスバイオーシスのメカニズムを考察した.
 清野 宏氏(千葉大学未来医療教育研究機構・未来粘膜ワクチン研究開発シナジー拠点/カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部内科学講座)は「歯学が寄与した粘膜免疫学創生から次世代ワクチン開発:腸内細菌叢と粘膜ワクチン」との演題にて,世界的に注目されている「粘膜免疫機構」を概説し,20年間取り組んできたコメで作った飲む下痢症予防ワクチン開発の成果を紹介.消化管における免疫応答の特異性と粘膜ワクチンの意義について解説した.
 田中芳彦氏(福岡歯科大学口腔歯学部感染生物学分野)は,「腸内細菌叢と免疫細胞による歯周病の増悪化」との演題で講演.歯周病の発症と増悪化の鍵として注目されるTh17の誘導に関連する腸内細菌叢解析の実際を紹介.Th17の分化を抑制する腸内細菌叢を導くことが,歯周病の新たな予防戦略となる可能性を指摘した.
 久保庭雅恵氏(大阪大学大学院歯学研究科口腔感染制御学系部門予防歯科学講座)は,「唾液メタボローム解析による口腔内健康度予測」と題し講演.唾液を試料としたメタボローム解析による,バイオフィルム形成における代謝産物の同定,歯周組織の炎症状態を反映する代謝産物の検出,糖尿病・動脈硬化の重症化と共通する代謝物質の同定に関する研究成果を紹介し,歯周病の進行ならびに重症度予測,生活習慣病の重症度予測の可能性について報告した.
 山崎和久氏(理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チーム)は,「ペリオドンタルメディスン研究における新たな潮流-口腸連関-」との講演.健常者と歯周炎患者では腸内細菌叢が異なること,口腔内細菌が腸内細菌叢のディスバイオーシスを誘導することなどの研究結果を報告.これまで歯周病と全身疾患の関連については,その因果を結論付ける十分なデータが存在していなかったが,口-腸-全身を結ぶ病因メカニズムの解明に大きな進展がみられつつあるとした.

 かなり以前より,口腔感染症(特に歯周病)と腸管を含む他臓器との連関という現象は知られていたが,本シンポジウムでそのメカニズム解明と治療法に関する未来への道筋が垣間見られた.

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