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深井保健科学研究所 第22回コロキウム 開催される
 2023年10月9日(月),TKP東京駅カンファレンスセンター(東京都中央区)にて,深井保健科学研究所 第22回コロキウムが「日本の歯科口腔保健のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ―その光と影」をテーマに行われた(大会長:深井穫博氏.深井保健科学研究所).
 本講演会は5つのセッションにわかれ,それぞれのテーマについて複数の演者による異なる観点からの発表が行われた.



開会挨拶を行う深井穫博氏.
 セッション1「UHC をめぐる内外の動向」では, 3名の演者が登壇した.
 「生涯を通じた歯科健診」の演題で登壇した小椋正之氏(厚生労働省歯科保健課)は,政府が骨太の方針のなかで示した通称・国民皆歯科健診(=生涯を通じた歯科健診)の最新の動向について報告した.「UHCと歯科国際的潮流と課題」の演題で登壇した小川祐司氏(新潟大学)は,タイなど一部の国において口腔保健を保健政策に取り込む潮流があることを報告したうえで,同時に世界規模での実現が難しい現実を示し,今後の展開について検討した.「WHOのUHCに対する考え方とPHCの位置づけ」の演題で登壇した牧野由佳氏(WHOアフリカ地域事務所)は,アルマアタ宣言(1978年)で定義され,アスタナ宣言(2018年)でもUHC達成の土台とされたPrimary Health Careについて,WHO口腔保健政策と関連付けて解説を行った.
 セッション2「日本の歯科医療・口腔保健制度と健康格差」では,2名の演者が登壇した.
 「データと論文からみる歯科口腔のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の演題で登壇した相田 潤氏(東京医科歯科大学)は,歯科業界あるいは一般社会で流布している言説の一部について,デビデンスに基づいて読み解きを行い,特に歯科領域におけるUHCと関連するデータを示して真相に迫った.「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと口腔の健康格差」の演題で登壇した松山祐輔氏(東京医科歯科大学)は,介入の内容によっては健康格差を拡大してしまう事実があることを示したうえで,今後の日本の口腔保健政策に必要な課題を示した.

 セッション3「歯科医療費の課題と歯科医療の効果」 では,3名の演者が登壇した.
 「日本の歯科医療費の動向と課題」の演題で登壇した恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構)は,診療報酬改定の変遷や社会的な出来事を踏まえて,それらが与える歯科医療費への影響を総合的に検討した.「医療・介護・子育て支援の財源をどう確保するか-金融所得への保険料賦課の提言」の演題で登壇した岡本悦司氏(福知山公立大学)は,日本の国税制においては金融所得(上場株式や投信の配当や譲渡益)が申告不要となっており,申告されない所得は保険料や支援金の賦課対象とならない事実があることを詳細なデータから指摘し,医療介護や子育て支援の財源の公平のためにこれらを賦課対象とすることを提案した.「歯科受診に関する歯の喪失リスクについて」の演題で登壇した古田美智子氏(九州大学)は,久山町研究を例に,歯科受診が歯の喪失に与える影響について,関連要因と比較して解説した.
 セッション4「歯科健診の課題と展望」では,深井穫博氏によるイントロダクション「歯科健診の課題」のほか,2名の演者がリモートによる発表を行った.
 「歯周疾患検診は何歳から行えばよいのか」の演題で登壇した竹内研時氏(東北大学)は,歯周疾患検診受診が与えるその後の定期歯科受診への影響と,その効果が現行の対象年齢(40歳/50歳/60歳/70歳)とそれ以外(20代/30代)で異なるかを検討した結果を紹介した.「口腔に常在する大腸がん関連細菌に対する歯科専門職の対応」の演題で登壇した花田信弘氏(鶴見大学,上海理工大学)は,大腸がんに関連する23菌種のうち10菌種が口腔に常在する細菌であり,口腔清掃によって口腔バイオフィルム内の存在比率が変動することから,口腔清掃が大腸がんのリスク低減に役立つことを示した.
 セッション5「歯科医師の需給問題と多職種連携」では,2名の演者が登壇した.
 「歯科医師の将来数と地域保健-歯科医療供給の大変化と地域歯科保健」の演題で登壇した安藤雄一氏(国立保健医療科学院)は,NDBオープンデータ「歯科診療行為」の二次医療圏別データを用いて,人口あたりでみた診療件数と歯科医師数の関連,歯科医師(医院)の地域偏在を可視化し,地域歯科保健にもたらす影響などについて検討した.「がん医科歯科連携 Year in Review」の演題で登壇した上野尚雄氏(国立がん研究センター)は,2023年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画で示された職種間連携(医科歯科,医科医科)について,最新の動向を報告した.
 このほか,中西明美氏(女子栄養大学)による指定発言や各セッション後のデスカッションが活発に行われるなど,3年ぶりに対面形式(一部リモート)で行われたコロキウムは盛況のうちに終了した.

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