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日本歯科衛生学会 第18回学術大会開催される
 9月16日(土)~9月18日(月・祝),静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ(静岡市)にて,標記学術大会(大会長:森野智子氏/静岡県歯科衛生士会会長)が,「人生100年時代,求められる地域医療連携とは-歯科衛生士の専門性を探る-」をテーマに4年ぶりに現地開催された(※10月上旬よりオンデマンド配信予定).
左から吉田直美氏,吉田幸恵氏,森野智子氏
 特別講演では,「患者の声から考える医療」と題し,渡邉順子氏(静岡県立大学看護学部特任教授・副学長)が登壇.患者の不満や悩み,不信感の原因は,医療者とのコミュニケーションギャップにあり,それらをいかに少なくすることが重要であること,そしてインフォームド・コンセントは「説明と同意」にとどまらず,患者が「納得」することを置き去りにしてはいけないと提言.渡邉氏の著書である看護師向けの書籍『患者の声から考える看護(医学書院)』を例に挙げながら,コミュニケーションギャップが生じた事例を紹介.定期的に歯科医院に通っているという渡邉氏は,一般論ではなく,自分の口腔状態や性格などトータルにみてもらい,「渡邉さんに適した口腔ケアは○○ですよ」と,自分だけの提案をしてもらいたいと会場の歯科衛生士に向けて発信した.
 招聘講演では,「韓国歯科衛生士の過去と現在,そして未来」と題して,ファン・ユンスク氏(社団法人大韓歯科衛生士協会会長)が登壇.来たる2024年に韓国・ソウルで開催される第23回歯科衛生国際シンポジウム(ISDH国際シンポジウム)を記念して,大韓歯科衛生士協会第45回学術大会(2023年7月)に日本歯科衛生士会が招かれ,吉田直美氏(公益社団法人 日本歯科衛生士会会長)が講演し,今回,日本でファン氏の講演が実現した.韓国では,2023年に全83カ所の大学(3年課程55校,4年課程28校)に歯科衛生学科が開設されており,毎年約5,000人が卒業するという(修士課程18校,博士課程9校で実施).現在,約104,000人が免許を取得している.また,免許取得後は,卒業研修制度として年に8時間の受講が毎年義務づけられており,協会が国の代行機関として委託されている.韓国においても高齢人口の増加に伴い,高齢者の口腔健康管理に対する関心が高まっているため,これまで以上に日本歯科衛生士会との交流をはかりたいと締めくくった.
左からファン・ユンスク氏,河野章江氏
 シンポジウムでは,「がん患者を支える地域連携の重要性 静岡がんセンターの取り組み」と題して,4人のシンポジストが登壇.百合草健圭志氏(静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科部長)は基調講演「口腔支持療法と地域連携の取り組み」,安藤千賀子氏(静岡県立静岡がんセンター歯科衛生士)は「病院でがん患者を支える歯科衛生士の役割」,大川晃子氏(静岡県歯科衛生士会副会長)は「地域でがん患者を支える歯科衛生士の立場から」,久山幸恵氏(静岡県立静岡がんセンター看護師)は「がん患者の悩みや負担・苦痛に向き合い支える患者家族支援の取り組み」と題して,それぞれ報告.がん患者の日常生活を口から支えることが最終目標である口腔支持療法は,定期的な口腔健康管理,歯科医院への定期受診が最も重要であり,歯科衛生士の存在が欠かせない.病気や口腔だけでなく,人・生活(衣食住)をスタイリストするような口腔健康管理に取り組んで欲しいと述べた.
左から久山幸恵氏,大川晃子氏,安藤千賀子氏,百合草健圭志氏,久保山裕子氏
 教育講演では,「未来につなぐう蝕予防戦略として周産期口腔保健の可能性を探索する-マイナス1歳からはじめるむし歯予防-」と題して,仲井雪絵氏(静岡県立大学短期大学部教授・図書館長)が登壇.北欧で認知されている,ミュータンスレンサ球菌の母子伝播を予防するために妊娠期から母親に指導や予防処置を行っている「プライマリー・プライマリー・プリベンション」の考え方を,さらに発展させ,対象者を妊婦に限定せずに「家族単位」「地域社会」に拡大して,自分の健口獲得を目指すコンセプトを報告.そのなかで,キシリトールの活用により,感染する前にミュータンスレンサ球菌を善玉菌に変えるという補完的ツールをシステマテック・レビューとともに紹介.
静岡茶と静岡銘菓がふるまわれた交流会の様子
展示会場の様子
 また,9月24日(日)には,「歯科衛生研究における質問紙調査を考える-効果的で効率の良い質問紙調査の方法-」と題して,研究討論会がZoomウェビナー形式で開催され,3人の発表者が登場.戸田花奈子氏(埼玉県立大学健康開発学科)は「歯科衛生士の多職種間実践および認識に関わる要因の検討」,白水雅子氏(大手前短期大学歯科衛生学科)は「障がい者スポーツイベント参加者における咀嚼機能検査の意義と展望」,園山愛弓氏(岡山済生会総合病院患者サポートセンター)は「歯科標榜の無いがん診療連携拠点病院から地域へ発信する医科歯科連携の取り組み」を発表.回答しやすい質問数や適切な質問紙の文字の大きさ(フォント)などに加え,実際の質問紙を開示.そして,コストがかからず手軽に集計できるウェブ形式のGoogleアンケート用紙の作り方など,さまざまな手段や方法を紹介.チャット形式の質疑応答が活発に行われ,これまで質問紙調査を実施してきた人にもこれからチャレンジしたいと思っている人にも有益な情報交換の場となった.
 ほか,日本口腔衛生学会共同企画,日本歯科保存学会共同企画,ワークショップ,県民フォーラム,口演発表,ポスター討論が盛り込まれた本学術大会.次年度からは,専門性の向上・職業価値の向上のため,ワークショップに代わり,専門領域別・研究集会を立ち上げ,歯科衛生士が行う研究を推進すると宣言し,新しいステージに向かう変革の兆しがみられた.
 次回,第19回学術大会は,2024年9月21日(土)~23日(月・祝),新潟にて開催予定(大会長:江川廣子氏).
グランシップ10階から見える富士山

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