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第64回日本歯科医療管理学会総会・学術大会開催される
 7月14日(金)~7月16日(日),じゅうろくプラザ(岐阜市)にて,標記学会総会・学術大会(大会長:山内六男氏/朝日大学教授)が,「歯科医療管理学会はどこを目指すのか-教育,専門医の視点から-」をテーマに開催された.
岐阜駅前の織田信長公
山内六男大会長(右)
 特別講演Ⅰでは,「医療管理学の人材育成とビッグデータ:歯科医療管理学のポテンシャル 」と題し,今中雄一氏(京都大学大学院医学研究科医療経済学分野教授)が登壇.歯科医療管理の人材育成におけるコンピテンシーを,医療・病院管理学会の例から提唱,また,社会医学系専門医協会についても紹介.そして,歯周疾患の管理が糖尿病の悪化を防ぐこと,および医療費削減につながること,食道切除において,術前の口腔管理により術後誤嚥性肺炎の発症割合が有意に削減したことをビッグデータからの研究結果として報告した.
 特別講演Ⅱでは,「日本歯科専門医機構の挑戦-新たなる歯科専門医の制度設計に挑む-」と題し,今井 裕氏(日本歯科専門医機構理事長/獨協医科大学名誉教授)が登壇.2018年4月に(一社)日本専門医機構が設立され,これまで広告可能5領域(口腔外科/歯周病/小児歯科/歯科麻酔/歯科放射線)を機構の定める基準へと整備を進め認可し,新たな基本5領域〔補綴歯科/歯科保存/矯正歯科/インプラント歯科/総合歯科(いずれも仮称)〕についての協議を進めてきた.機構設立の経緯と経過を解説し,専門領域において適切な研修教育を受け,十分な知識と経験を備え,患者から信頼される歯科医療を提供できる歯科専門医を養成する意義を発信.それぞれの領域の立場はあるものの,明日の歯科医療に向けて,新たな変化を受け入れ,建設的に協議をしていただきたいと強く訴えた.
 シンポジウムⅠ「歯学部における歯科医療管理学教育の現状と課題」では,3名のシンポジストが登壇.山本龍生氏(神奈川歯科大学歯学部社会歯科学系社会歯科学講座)は「神奈川歯科大学歯学部における歯科医療管理学教育の現状と課題」,平田創一郎氏(東京歯科大学社会歯科学講座)は「東京歯科大学における社会系歯学教育」,福泉隆喜氏(九州歯科大学社会歯科研究室)は「九州歯科大学における歯科医療管理・社会歯科系教育の現況」と題し,それぞれ報告.講義1コマごとに学生からアンケートをとり,理解が不足した事柄を直後の講義に活かしていることや,併設病院内の掲示物からキーワードを学生自身に探させ,関連法律名を挙げる実践形式を臨床系の講義に取り入れている事例など,歯科医師として社会に出てから身につけておかなければならない歯科医療管理・社会歯科系の知識を学生に習得させるべく工夫を凝らした事例が紹介された.
左から福泉隆喜氏,平田創一郎氏,山本龍生氏,藤井一維氏
 シンポジウムⅡでは,特別講演Ⅱをうけて「基本領域以外の歯科専門医の未来」と題し,3名のシンポジストが登壇.安井利一氏(日本スポーツ歯科医学会理事長)は「日本スポーツ歯科医学会の立場から」,スポーツ基本法制定から10年を経過した機会に,学会の専門医と指導医の制定の実施を説明.スポーツ歯学は歯科大学・歯学部教育においても歯学教育モデル・コア・カリキュラムや歯科医師国家試験出題基準にも位置づけされており,スポーツにかかわるすべての国民に寄与すべく歯科医師のみならず,歯科衛生士,歯科技工士の連携と資質向上をはかる必要があると併せて説明.覚道健治氏(日本口腔リハビリテーション学会前理事長)は「日本口腔リハビリテーション学会の立場から」,会員数が少ない学会ではあるが,歯科におけるリハビリテーション領域の専門性は必要であり,今後は家庭でのリハビリテーションの訓練メニューなども検討していることを報告.尾﨑哲則氏(日本歯科医療管理学会理事長)は「日本歯科医療管理学会の立場から」,歯科医療管理とは,良質な歯科医療提供は「安全性」「効率性」「効果性」などの管理を通した提供を管理することであり,「医療法」の理念に基づくものであると解説.また,通常の歯科医科学は基礎から臨床という縦展開,歯科補綴学・歯科保存学などは並行にあり,ある場面では接近し,縦展開しているが,歯科医療管理学はすべての臨床歯科学と交わる横展開,いわゆる,経糸(たていと)・緯糸(よこいと)との関係になる.緯糸は(医療安全/感染対策/医療経済・医院経営/医療倫理/関係法令)から構成され,そして歯科医療は,繻子織りのような形であるという私見を述べた.
左から尾﨑哲則氏,覚道健治氏,安井利一氏,笠井史朗氏
 ほか,初企画である(一社)日本デジタル歯科学会共催講演では,「医療の電子化・標準化で見える新しい景色-オンライン資格確認,電子処方箋,その次-」と題して,玉川裕夫氏(大阪大学大学院歯学研究科招聘教員/日本歯科医師会情報管理担当嘱託)が登壇.オンライン保険資格確認事業をきっかけに,医療機関同士の医療情報を交換するハード面はほぼ整備できているが,ランサムウェアなどのネットワークセキュリティ上の安全管理リスクについては,歯科医院経営者自身が知識として理解しておかなければならないと提言.
 招待講演では,「ゴルフから学んだこと」と題し,森口祐子氏(プロゴルファー/(株)ゴールドウイン取締役/朝日大学体育会ゴルフ部スーパーバイザー)がプロゴルファーを目指したきっかけやプロとして活躍していたときのエピソードを披露.「人との出会いは尊い」という言葉が深く心に刻まれた.
森口祐子氏
 口演発表の応募演題も予定より多く,プログラムの調整に嬉しい労力を要したというほど充実したプログラムが組まれた本学術大会.「理想を持ち,信念に生きよ」という戦国武将織田信長の名言のように,本学会,そして歯科医療に携わる者の理念を感じることができた2日間であった.
 次回,第65回学術大会は,2024年7月12日(金)~14日(日),札幌にて開催予定(大会長:越智守生氏).

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