Ishiyaku Dent Web

歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のポータルサイト

第61回日本小児歯科学会大会 開催される
 5月18日(木)・19日(金),標記会が【小児歯科の温故知新―未来の子どもたちのために】をメインテーマに出島メッセ長崎(⻑崎市)にて開催された(大会長:故・藤原 卓氏/長崎大学生命医科学域(歯科系)小児歯科学分野 教授,大会長代理:福本 敏氏/九州大学大学院歯学研究院 小児口腔医学分野 教授).現地会場には約800名の参加者が集まった.
第61回日本小児歯科学会大会 開催される
 初日の教育講演1は,大会長:故・藤原 卓氏の強い要望により,森内浩幸氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・小児科学)による「子どもたちのアドボカシーとして 歯に衣着せず 歯切れ良く」が実現.小児科医の立場から,古今東西(もちろん現代日本においても),子どもたちの権利・命が軽んじられていることについてさまざまな事例を紹介し,大人は子どもたちのことももっと真剣に考えるべきだと聴講者に呼びかけた.
 また,会場から「歯科に求めること」を聞かれると,「科にかかわらず,子どもたちのことを考え,連携していくことがなによりも大切」と答えた.講演後,会場からは,「人の命,子どもの命を深く考えさせられる講演でした」という感想が聞かれた.
教育講演1「子どもたちのアドボカシーとして 歯に衣着せず 歯切れ良く」(森内浩幸氏)
 歯科衛生士委員会企画セミナー「小児歯科をもっと好きになるために認定歯科衛生士の資格取得を目指しませんか?」と題し,藤岡万里氏(昭和大学小児成育歯科学講座/千葉県我孫子市・あびこクリニック)が登壇.小児歯科がもつ特性,院内・患者さん・保護者との連携の重要性について語り,認定歯科衛生士の資格取得することの意義やポイントなどについて歯科医師の立場から解説した.
 その後,友重文子氏(長崎市・ありた小児歯科・矯正歯科)による「私の認定歯科衛生士への思い」では,自身が本学会認定歯科衛生士を取得した経緯を振り返り,取得後の変化や,自身が考える取得することの意義について語った.講演後,会場からは取得について多くの質疑があり,認定資格取得に対する歯科衛生士の熱意が感じられた.
歯科衛生士委員会企画セミナー「小児歯科をもっと好きになるために認定歯科衛生士の資格取得を目指しませんか?」藤岡万里氏(昭和大学小児成育歯科学講座/千葉県我孫子市・あびこクリニック)
歯科衛生士委員会企画セミナー「私の認定歯科衛生士への思い」友重文子氏(長崎市・ありた小児歯科・矯正歯科)
 認定歯科衛生士必須研修セミナーでは,岩瀬陽子氏(朝日大学歯学部 口腔病態医療学講座 障害者歯科学分野 教授)が「何に気をつける?障害児歯科診療でのポイント―歯医者嫌いにさせないために―」の演題で登壇.自閉スペクトラム症や脳性麻痺を例に,対応に特別な配慮を要する小児患者が来院した際,歯科衛生士に期待すること,臨床における考え方やヒントを示した.
認定歯科衛生士必須研修セミナー「何に気をつける?障害児歯科診療でのポイント―歯医者嫌いにさせないために―」岩瀬陽子氏(朝日大学歯学部 口腔病態医療学講座 障害者歯科学分野 教授)
 2日目の「JSPP企画講演」には,齊藤正人氏(北海道医療大学歯学部小児歯科学分野 教授)が「MTAの開発と幼若永久歯(外傷歯)への応用」と題し登壇.幼若永久歯のエンド治療においても効果を発揮しているMTAを,外傷歯(完全脱臼歯した失活再植歯)にも応用し,パルプ・リバスクラリゼーションを行うことで抜歯を免れる手法・メカニズム等を解説した.また,氏が開発に携わり,産学連携にて誕生したMTA(TMR-MTAセメント/ヤマキン)の特徴についても紹介し,今後,小児歯科領域の覆髄処置以外のMTAの保険適用を目指す意義についても訴えた.
 男女共同参画委員会企画セミナーでは,「母子手帳の普及と低出生体重児への支援について」板東あけみ氏(国際母子手帳委員会 事務局長),「子どもたちの未来に向けて~一人一人が一歩を踏み出す社会へ~」山東昭子氏(参議院議員 参議院議長)がそれぞれ講演.
 母子手帳の誕生から普及までの歴史について紹介するとともに,低出生体重児に対応した母子手帳のサブブックとしての「リトルベビーハンドブック」の今後の展望と,歯科医療職における周知・理解についても期待を述べた.
 参議院議員である山東氏は,国会本会議のため欠席し,ビデオでの講演となった.国際母子栄養改善議員連盟の立場から,日本や世界の子どもたち,あるいはその母親が抱える課題について解説.また,今年4月に創設された「こども家庭庁」に懸けた想い,果たすべき役割について熱弁した.
男女共同参画委員会企画セミナー「母子手帳の普及と低出生体重児への支援について」板東あけみ氏(国際母子手帳委員会 事務局長)
 専門医認定医合同セミナーでは,鮎瀬卓郎氏(長崎大学病院麻酔生体管理室 教授)による「『小児歯科医療における医療安全再考:歯科医師が行うべき医療安全とは?』『歯科医師として通常の注意を払えば気づけたはずの異変』とは何か?」,星野倫範氏(明海大学歯学部形態機能成育学講座口腔小児科学分野 教授)による「歯科病院(医院)における感染防止策−新興感染症に対する対策も含めて−」が講演された.
 鮎瀬氏による講演では,過去,実際に小児歯科医療現場で発生した医療事故を紹介し,正常呼吸と異常呼吸の見きわめ方に焦点を当てて解説.
 つづく,星野氏による講演では,先日2類から5類に変更された新興感染症「新型コロナウイルス感染症」について振り返り,歯科医院が実施すべき標準予防策(スタンダードプリコーション)の考え方を整理した.
専門医認定医合同セミナー「『小児歯科医療における医療安全再考:歯科医師が行うべき医療安全とは?』『歯科医師として通常の注意を払えば気づけたはずの異変』とは何か?」鮎瀬卓郎氏(長崎大学病院麻酔生体管理室 教授)
専門医認定医合同セミナー「歯科病院(医院)における感染防止策−新興感染症に対する対策も含めて−」星野倫範氏(明海大学歯学部形態機能成育学講座口腔小児科学分野 教授)
 また,本学会では託児室が開設されており,一日の始まりと終わりには児童をつれた参加者の姿も多くみられた.こうしたしくみやオンデマンド配信が推進・活用されることで,学会参加の機会が均霑化されつつあることを実感した.なお,会期後のオンデマンド配信は6月1日(木)10:00~14日(水)14:00を予定.
 次回第62回大会は,2024年5月16日(木)・17日(金),「支えよう! 子どもの笑顔と明るい未来~歯科から育む心とからだ~」をメインテーマに,横須賀芸術劇場(神奈川県横須賀市)にて開催予定(大会長:木本茂成氏(神奈川歯科大学小児歯科学講座).

■他のニュース記事をさがす

日付から記事をさがす
<2024年4月>
31123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
2829301234
567891011
キーワードから記事をさがす

人気の歯科書籍(キーワード別)

歯科雑誌 最新号