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第31回日本医学会総会2023東京開催される
 4月21日(金)~4月23日(日),東京国際フォーラム,JPタワー〈ホール&カンファレンス〉,東京商工会議所,ステーションコンファレンス東京の4会場にて,標記学会総会(会頭:春日雅人氏/朝日生命成人病研究所所長,国立国際医療研究センター名誉理事長)が,「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」をテーマに開催された(5月にオンデマンド配信).
 本総会は141の分科会を擁する日本医学会が日本医師会と協力して主催する,4年に1度の伝統ある学術集会である.第30回に初めて歯科関係者による特別講演が開催されたのにつづき,日本歯科医師会は「2040年を見据えた歯科ビジョン」の目標達成に向け,さまざまな方面での歯科医療の取り組みをプログラムに組み込んだ.
 なかでも注目すべきは柱3の『人生100年時代に向けた医学と医療』における「超高齢者社会における生活習慣病対策-歯科の立場から」(座長:尾松素樹氏/日本歯科医師会,星 和人氏/東京大学大学院).歯周病は世界的にも罹患率の高い疾患であり,脳卒中や心筋梗塞の発症契機になること,また,糖尿病や認知症などの生活習慣病のリスクを上げることがわかってきた.歯周病を通じて生活習慣病を俯瞰し,歯科医師,医師の立場から治療法や予防法,および医科歯科連携をより推進するために必要な情報を発信するべく5人のシンポジストが登壇.
左から小方氏,西田氏,恒石氏,相田氏,星氏,尾松氏
 まず口腔疫学として,「第74回WHO総会の歴史的な口腔保健の決議の日本での意義とは?」をテーマに相田 潤氏(東京医科歯科大学大学院)が医学誌Lancetの初の口腔保健特集号も交えて口腔の重要性の認識が広まったことを報告.歯科疾患は他の疾患と比較した有病率がきわめて高く,社会生活を営むうえで深くかかわり,歯の喪失により健康寿命が短くなることを疫学から解説.
 続いて,本総会のテーマでもある「ビッグデータにより明らかとなった口腔健康管理の重要性」を恒石美登里氏(日本歯科医師会 日本歯科総合研究機構)が報告.NDB(National Database,医療機関から保険者に発行しているレセプトと特定検診及び保健指導の結果から構成されたデータベース)から,歯数が少なくなるほど医科医療費が多い,歯数が少ない者ほどアルツハイマー型認知症の有病率が高いなどという調査結果を詳細に説明.
 3番目に「口腔ケアから始まる人生100年対策~糖尿病から認知症まで~」をテーマに西田 亙氏(にしだわたる糖尿病内科/松山市)が糖尿病内科医の立場として登壇. 2型糖尿病では歯周治療により血糖が改善する可能性があることを『糖尿病診療ガイドライン2019』(編著:日本糖尿病学会)において“強く推奨”しており,歯周治療を日本糖尿病学会が重要視していることを報告.さらに,P.gigivalis菌が肺から胸壁に侵入し,胸壁穿孔性膿胸を発症した衝撃的な症例(2022年)を画像を交えて報告.歯周病は全身感染に匹敵すると強調した.
 4番目に「歯周病の発症と進行へのウイルスの関与と歯周組織再生療法」をテーマに小方賴昌氏(日本大学松戸歯学部)が登壇.重度の歯周病には,伝染性単核球症や悪性リンパ腫,自己免疫疾患などの原因ウイルスであるエプスタインバールウイルス〈EBV〉も関与していることを示唆した.
 最後に「医科歯科連携による生活習慣病予防」をテーマに星 和人氏が登壇.医科歯科連携国民健康セイフティーネットの実現に向けて,まだまだ不十分である医科と歯科の情報提供・情報交換を充実させていく必要があると提言した.
 総合討論の場では,会場からも活発な意見が出され,「医科歯科連携をしていきたいが,歯科の専門用語が難しい.“デンチャー”すらわからず,せっかくの情報提供や講演内容が理解できずにもったいない.歯学部2年生くらいに話す要領で話してほしい」という内科医からの切実な発言が新鮮だった.まずは現場目線での,できるところから,一つ一つクリアしていくことが大きな目標を実現する鍵なのではないだろうか.
 本総会は4会場に分散されていたものの,歯科のセッションにも医師の参加が多くみられ,幸いにも現地開催できたことは大変有意義であった.
 次回,第32回日本医学会総会は2027年,大阪にて開催予定.
学術展示会場の様子
博覧会会場の様子
丸の内エリアの様子

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