2023/01/11
2023年1月8日(日),御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都千代田区)にて,第26回米国歯科大学院同窓会(JSAPD)公開セミナーが『エビデンス 譲れないもの超えるもの』をメインテーマに,現地会場およびWEB配信にて開催された(大会長:冨岡栄二氏/東京都開業,イエテボリ大).
まず,【ペリオセッション】では,本会会長の冨岡栄二氏(同前)が「根分岐部病変へのアプローチ 切除的?保存的?」と題し登壇.歯科臨床において苦慮する根分岐部病変への対応として,科学的エビデンスと実臨床における現実(経験,技術等)を加味し,切除的アプローチ,保存的アプローチをどう選択していくかについて解説した.
辻 翔太氏(大阪府開業,コロンビア大)は「歯周組織再生療法の現在と未来 最新の臨床データから見えてくること」をテーマに登壇.歯周組織再生療法の40年の歴史や材料・手技の変遷を整理し,科学的エビデンスと臨床実績を元に,適応症拡大の可能性について自身の症例をもとに呈示した.
【インプラントセッション】では,西堀雅一氏(東京都開業,ペンシルバニア大)が「臼歯部咬合崩壊とインプラント,経過観察から学んだこと」をテーマに,歯周病新分類を用いて臼歯部咬合崩壊症例へのインプラント経過を呈示した.重度歯周病とインプラント治療の予後については生存に関するエビデンスは少ないことを前提に,何かが起こったときに対応可能な患者に寄り添った補綴選択が求められるとした.
梅津清隆氏(東京都開業,ロマリンダ大)は「エビデンスと臨床経験・成績とのBlending Effect」と題し,過去から現在に至るインプラント治療の変遷を整理.EMBは自身の臨床と乖離があったとしても開業医としては拠り所として重要で,エビデンスと患者のNBMをブレンドして最良の治療を行うこと,先人に学び経過観察を行っていくことが重要とまとめた.
午後の部の【エンドセッション】では,瀧本晃陽氏(東京都開業,テキサス大)が「Endodontic Retreatment 非外科的再治療の臨床的判断」と題し登壇.再根管治療は難度が高く米国では専門医が行う治療だが,国内では一般開業医が日常的に行っていることを示したうえで,生物学的背景,細菌除去の徹底,患者への総合的な治療法呈示など,非外科再根管治療の基本事項を整理した.
田中浩祐氏(東京都勤務,ペンシルバニア大)は「Endodontic Surgery(外科的歯内療法)の意思決定」をテーマに登壇.既根管治療歯に対し外科的歯内療法を選択するにあたっての意思決定(成功率,治療の複雑性,時間,レストラビリティ,患者希望など)を症例を元に示した.エビデンスに加え,術者の技術,経験,治療環境等を真摯に加味し,患者利益となるバイアスのない治療法呈示が重要だとした.
【補綴セッション】では石部元朗氏(山梨県開業,ワシントン大)が「Occlusion: Do’s and Don’ts ~咬合に関するチェックリスト~」をテーマに中心位,中心咬合位,咬頭嵌合位の用語を整理.咬合治療時の患者姿勢(座位)や開口量や筋肉による影響,ガイダンスなどの咬合様式を整理したうえで,咬合に関するリスクファクターと全顎治療における咬合位の考え方等をまとめた.
武田侑大氏(東京都開業,ボストン大)は「デジタルデンチャーの現状と展望」と題し登壇.デジタルデンチャーの歴史と基本的な治療の流れ,ミリングや3Dプリント技術を応用した総義歯作製について,自身の症例を元に解説した.
【矯正セッション】では中西秀郎氏(兵庫県開業,テンプル大)は「歯の寿命と歯列の関係」をテーマに,8020“非”達成者の咬合特徴(反対咬合,開咬,Ⅲ級等)からみえる歯列・咬合データを整理.Dr. Andrewsの6Keys to Normal Occlusionやアンテリアガイダンスによる臼歯離開,炎症と力のコントロールなど,矯正治療における目的とゴールを整理した.
最終演者の岡崎恵一郎氏(茨城県開業,オレゴンヘルスサイエンス大)は「矯正治療における歯根吸収」と題し登壇.歯根吸収に関するエビデンスは少ないものの,発生傾向をみるうえでポイントとなる条件として,歯種,歯根形態異常,外的要因,咬合,遺伝的要因等を解説し,リスクファクターとその予防,予防できない場合の対応等を症例をもとに呈示した.
前半・後半でディスカッションタイムが設けられ,場内からは多くの質問やコメントが寄せられ,活発な意見交換,質疑応答が繰り広げられた.