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関東甲信越歯科医療管理学会2022年度総会・第28回学術大会開催される
 11/20(日),山梨県歯科医師会館(山梨県甲府市)にて,標記総会・学術大会(大会長:七沢久子氏/山梨県歯科衛生専門学校校長)が,「歯科医療管理学からみるSDGs&UHCを考える~自立歩行ができる健康寿命の延伸」をテーマに開催された.なお,11月25日(金)~12月2日(金)オンデマンド配信される.
甲府駅前の武田信玄像
 特別講演パート①では,「自立歩行ができる健康寿命の延伸 フレイル予防~整形外科疾患を含めて~」をテーマに今井大助氏(今井整形外科院院長)が登壇.昨今のコロナ禍で,外出頻度の減少や運動不足により身体的フレイルの一つといえるロコモティブシンドローム〈運動器症候群,ロコモ〉が懸念される.ロコモの原因となる変形性関節症,脊柱管狭窄症,骨粗鬆症の三大疾患は,要支援・要介護の主な原因である関節疾患や骨折転倒と密接な関係があるため,介護予防には,運動器疾患,転倒予防が重要であることは否めない.また,オーラルフレイルと関連性から,口腔状態と運動能力の差及びロコモ度の差についても検証.ただし,こちらについては,正確な結果を出すためには,歯科関係者との協力が必要であると報告し,整形外科と歯科との連携を求めた.
 特別講演パート②では,「8020理念に基づいた,健康寿命の延伸~多職種連携による口腔健康管理を考える~」をテーマに花形哲夫氏(花形歯科医院院長)が登壇.気管切開・胃瘻を造設していた要介護高齢者が自食可能,さらには自立歩行が可能になった歯科訪問診療の一例や,タブレット端末等で口腔機能訓練をうけることができるICTの活用といった,多職種と連携した地域包括ケアシステムの具体的な事例を紹介した.
 基調講演では,「新興感染症の検証~地域連携・山梨県の取り組み~」をテーマに古屋好美氏(甲府市福祉保健部保健衛生監/甲府市保健所長)が登壇.現在進行形でCOVID-19との闘いは続いているものの,組織内サージ(質and/or量が通常業務を超えること)の備えをもち,危機管理の組織化と危機感を共有できる共通の考え方に取り組んでいる山梨県の取り組みを発表した.
基調講演の様子
 教育講演パート①では,「安全・安心の歯科医療を持続的に提供するためには」をテーマに尾﨑哲則氏(一般社団法人日本歯科医療管理学会理事長)が登壇.「安全で安心な歯科医療」を行うことは当然のことながら,社会へ正しい知識として普及することが求められると提言.
 教育講演パート②では,「新興感染症への歯科診療所の対応(施設基準)と最近の歯科診療報酬制度等~歯科医療管理学的な側面からの今後の対応を考える~」をテーマに上條英之氏(関東甲信越歯科医療管理学会副会長/東京歯科大学)が登壇.ユニバーサルオーラルヘルスカバレッジ(歯科医療においてすべての人が適切な予防,治療,リハビリ等の保健医療サービスを支払い可能な費用で受けられる状態)を実現していくことが必要で,実現の1つとしてオンライン資格確認であるHPKIカードの普及とマイナンバーカードの紐付け,それに不随する全国医療情報のプラットホームづくりが急務であると提言.
 シンポジウムでは,「今後求められる歯科衛生士像を考える~SDGs&UHCの推進を踏まえて~」をテーマに5名のシンポジストが登壇.
 土屋あけみ氏(山梨県歯科衛生専門学校教務主任)は,「教育現場から(専門学校)」として,障害者施設や要介護高齢者施設の実習やキャリアデザイン学習を通して,ADL改善・QOL向上のために歯科衛生士として何ができるか,どのような歯科衛生士を目指すのか,学生のうちから将来設計を描けるカリキュラムづくりを行っていることを紹介.
 合場千佳子氏(日本歯科大学東京短期大学歯科衛生学科教授)は「学士課程における歯科衛生士教育の現状と取り組み」として,我が国の歯科衛生士養成校の現状を報告し,大学・短期大学で学ぶ学生,また男子学生(2022年4月現在95名)が増えてきていることからも,歯科衛生士の教育を歯科衛生士教員が中心となって実践するために,SDGs&UHCを踏まえて歯科衛生研究を必修科目としてカリキュラムに編成し,地域や多職種と連携できる能力の育成できる教育が必要であると提言.
 恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構主任研究員)は「臨床現場における歯科衛生士のパワー」とし,就業歯科衛生士の状況と近年の診療報酬改定の変遷をあげながら,周術期口腔機能管理,在宅歯科医療の現場における誤嚥性肺炎の予防や摂食嚥下機能に対する歯科の役割等,多くの臨床現場において歯科衛生士が必要であり,潜在歯科衛生士のさらなる復職支援を提言した.
 川崎美智子氏(居宅介護支援事業所カンナ所長)は「介護現場での歯科衛生士の役割~科学的裏付けに基づく介護へ~」とし,歯科衛生士からケアマネジャーに転職し,自らの体験を踏まえ,介護現場での歯科衛生士の活躍が急務であると訴えた.
 品田佳世子氏(東京医科歯科大学大学院口腔疾患予防分野教授)は「歯科衛生士の業務内容に関する調査から」とし,令和3年度厚生労働行政推進調査事業補助金での「歯科衛生士の業務内容の見直しに向けた研究」結果を報告.116の質問項目のうち,業務実施率に差はあるものの,歯科医師・歯科衛生士ともにすべての項目が実施されているが,必要な熟練度は,歯科医師による歯科衛生士の能力判断に基づいている現状と解説.卒前教育では技術の習得に限界があるため,卒後の新人教育,また復職を希望する人への研修体制の構築が求められると提言した.
シンポジウム・ディスカッションの様子
 長引くCOVID-19のため3年ぶりの現地開催となった本学術大会では,ほかに一般口演6題,ポスター発表5題と充実のプログラム構成.尾﨑氏の「明けない夜はない」という言葉が示すように,まさに「風林火山」のごとく,コロナ禍に学んで得たものを,「国民の健康寿命の延伸」に寄与するという揺るがない信念で,未来に向かって動き出したかのように感じられた.
ポスターセッションの様子

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