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東京歯科大学学会/東京歯科大学リカレント教育セミナー 開催される
 10月15日(土),東京歯科大学水道橋校舎(東京都千代田区)にて,第314回東京歯科大学学会/東京歯科大学リカレント教育セミナー「“歯周病”をめぐる基礎と臨床の架け橋-『顎骨疾患プロジェクト』と臨床医との医療情報交換」が,会場およびZoomハイブリッド形式にて,計243名(会場75名,Zoom168名)の参加者のもと開催された.
 本セミナーは,同学口腔科学研究センターを中心として2017年より進められてきた研究ブランディング事業「顎骨疾患プロジェクト」の6年間の成果の報告とともに,同学の推進するリカレント教育の一環として,基礎研究と臨床現場との情報交換を目的に開催されたものである.
 セミナーは片倉 朗氏(東歯大副学長)の総合司会で進行され,最初に一戸達也氏(東歯大学長)による開会の挨拶があった.
 次いで,山口 朗氏(東歯大口腔科学研究センター/顎骨疾患プロジェクト推進委員会委員長)が,本セミナーの位置づけを紹介.人生100年時代およびSociety 5.0の到来を踏まえ,歯科界においてもリカレント教育の必要性が高まるなか,研究と臨床の双方向性の情報交換こそが,同学の目指す研究ブランド力の基盤となると述べた.

 前半のプログラムは,歯周病をめぐる基礎研究報告.
 石原和幸氏(東歯大・微生物学)による講演「歯周病とマイクロバイオーム」では,感染症である歯周病の理解を困難にしている最大の要因が常在細菌叢にあるとし,さらに生活習慣等の細菌以外の発症要因が,その解明をさらに困難にしていると解説.複数菌種のコミュニティ形成による常在細菌叢のバランスの変化が,歯周病の病原性に影響するとのDysbiosisの概念において,Porphyromonas gingivalisの役割の再検証が求められるとした.その際,次世代シークエンスの応用と,ビッグテータの集積により,病態解明のための「解像度」の上昇が期待されるとした.
 塚崎雅之氏(東京大・免疫学/東歯大・微生物学)による講演「歯周病と骨免疫学」では,骨免疫疾患としての歯周病病態研究の最前線を報告.破骨細胞を生成するRANKL発現を誘導する免疫細胞としてTh17に着目し,Th17の主たる機能である好中球誘導と骨破壊との関連について,最新の研究動向を紹介.特に,近年の革新的技術であるSingle-cell解析による詳細な分析の可能性を報告した.
 大野建州氏(東歯大・口腔科学研究センター)は,「歯周病とサイトカイン」と題し講演.口腔をめぐる免疫応答の基本的な知識を整理したうえで,特に上皮由来サイトカインであるIL-33に関する最新の研究動向を紹介.歯周炎病変部上皮細胞から分泌されるIL-33が,骨吸収および骨吸収抑制の双方の作用を併せ持つとの研究結果を紹介し,歯周炎ではさまざまなサイトカインが,正と負に病態を複雑に制御している様相が想像されるとした.

 後半のプログラムは,臨床現場からの報告.
 まず中川種昭氏(慶應大・歯科口腔外科/東歯大客員教授)による講演「基礎疾患を考慮した歯周病治療について」では,歯科医療現場においては,歯・口腔のみならず,全身を意識しなければいけない時代になってきているとし,糖尿病と歯周病の関連を中心に,医療連携のポイントを解説.さらに,骨粗鬆症患者,高血圧症患者,BP製剤服用患者,歯肉癌,類天疱瘡患者の歯科的特徴を整理したほか,歯周病治療における抗菌薬使用および,ワーファリン服用患者の観血的処置についての最新の注意点にも言及された.
 二階堂雅彦氏(東京都中央区開業/東歯大水道橋病院臨床教授)は「歯周組織再生療法の役割」と題し講演.Hyper Responderとされる症例の長期経過を提示し,日々の歯周病治療の多くは対症療法とならざるをえないが,再生療法を適切かつ効果的に活用し,嫌気性菌の活動をメインテナンスでコントロールできさえすれば,多くは良好に経過すると強調.再生療法については,EMD,PDGF,FGF-2という材料の進展を,自身の臨床経験とともに解説し,特に根分岐部骨欠損を伴う症例におけるサイトカイン療法への期待を述べた.
 齋藤 淳氏(東歯大・歯周病学)による「塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)製剤を使用した歯周組織再生療法」では,FGF-2製剤に特化しての歯周組織再生療法の現状を報告.まず同製剤が各種細胞に影響を及ぼすメカニズムを解説し,これまでの臨床成果について報告した.また,講座の臨床・基礎研究の成果を紹介し,骨補填材との併用療法については,症例選択を適切に行うことで付加的な効果を得ることができるとしたが,あくまで原則は単独での使用であることを強調した.さらに,再生療法の前提として,プラークやリスクファクターのコントロール,基本的テクニック向上が必須であるとした.

 講演後の総合討論では,多くの研究者,臨床医からの質問が相次ぎ,設定時間を超えて熱気のあるディスカッションが展開された.
 最後に,澁谷國雄氏(東歯大同窓会長)の閉会の挨拶で本セミナーは終了した.

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