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大阪大学歯学部70周年記念講演会「人生100年時代の歯科医療―生涯28に向けて―」開催される
 10月2日(日),大阪大学歯学部70周年記念講演会「人生100年時代の歯科医療―生涯28に向けて―」が,ライブ(同学吹田キャンパス・コンベンションセンター)およびウェブ併催にて開催された.本講演会は,同学歯学部創立70周年記念事業の一環として,歯学部同窓会主催にて開催されたものである.
 基調講演では天野敦雄氏(阪大・予防歯科)が登壇.生涯28に込められた思いと,その実現のための知識の整理を行った.歯科医療システムは,常在菌が相手であるとの理解をベースに構築され直すべきであると強調し,特に近年提唱されているDysbiosisの概念がその必要性をより増加させていると指摘.そして,健口を守るための「令和のOHI」のあり方として,患者を主治医と考える二人三脚システムを提唱した.
 続く「先端研究紹介」のセクションでは,気鋭の3名の研究者による報告が行われた.
 「ミュータンス連鎖球菌が引き起こす脳出血の悪化」では,仲野和彦氏(阪大・小児歯科学)が,脳出血に先立つ微小出血に,高病原性を有するミュータンス菌Cnm陽性株が関与する可能性を指摘.最新の研究成果を報告した.
 「Dental Sleep Medicineを支える新たな歯科医学研究」では,加藤隆史氏(阪大・口腔生理学)が,OSA,SB,TMD/OFPのほか,さまざまな不定愁訴と睡眠の関係について,最先端の研究知見を網羅.また慢性疼痛や舌痛症とOSAの関係にも触れ,OSA治療が痛み閾値を減少させるとの知見を紹介した.
 「幹細胞移植による歯周組織再生療法の開発」では,竹立匡秀氏(阪大・口腔治療学)が,脂肪組織由来幹細胞(ADMPC)による歯周組織再生の臨床研究の現状について,有害事象なく臨床上の有用性が確認されていると報告した.
 最後のセクションである「パネリストミニレクチャー」では,藤木省三氏(神戸市開業),佐々木猛氏(大阪市開業),林美加子氏(阪大・歯学部附属病院長)が登壇.
 藤木氏は「人生100年時代の歯科医療―う蝕と歯周病は過去の病気」と題し講演.メインテナンス患者の傾向を喪失歯数の多少により検討.生涯28のためには,若年者のう蝕と歯周病の予防,歯列と習癖の管理がポイントであるとした.
 佐々木氏は,「健康寿命の延伸を目指して―インプラント治療の挑戦」との演題にて,8020達成のもう一方の側面として,病的な歯が残っている可能性とともに,治療の難しい口腔内も多くなっている臨床実感を紹介.生涯28の達成には,氏の提唱する3KEYコンセプトによるLongevityの獲得が重要であると強調.インプラントの適切な応用による歯肉環境の連続性の確保が,フレイル状態を改善し,生活機能の維持向上が図られるとまとめた.
 林氏は「MIから始まる人生100年時代の歯の保存」と題し,歯科保存学会ほか4学会合同事業である「根面齲蝕の治療ガイドライン」の主要ポイントを解説.また,歯髄保護の最先端の知見として,部分断髄にMTAを応用した症例を紹介.また近年注目されるVRTについては,診断法についての課題はあるものの,不可逆的とされてきた現象が可逆的になりつつある現状を報告した.
 終日を通し,「生涯28」を基調とした社会と未来を展望するプログラムとなった.

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