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第28回 日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会 開催される
 9月23日(金・祝),24日(土),標記大会が「摂食嚥下のSDGs」をテーマに,幕張メッセ(千葉市)にて開催された(大会長:倉智雅子氏/国際医療福祉大学成田保健医療学部)(オンデマンド配信期間:10月3日~31日).
 教育講演2「認知症と嚥下障害」では平野浩彦氏(東京都健康長寿医療センター)が登壇.認知症は種類により初期症状や進行に違いがあることから,背景疾患をふまえた予知性をもった対応が求められること,使用する食具や環境などがその方にとって親和性があるかなどを考え,つまづくポイントを減らす視点をもつことの重要性を,動画を呈示しながら解説した.

 シンポジウム4「摂食嚥下障害における臨床倫理シンポジウム4」では,座長の藤島一郎氏(浜松市リハビリテーション病院)より本シンポジウムの経緯・目的について解説後,板井孝壱郎氏(宮崎大学大学院)が「臨床倫理の「考え方」と摂食嚥下障害」と題し登壇.臨床倫理については現場の医療職の「モヤモヤ」「何かおかしいのでは?」というジレンマや倫理的感受性に基づいた気持ちを大切に,個人の悩みにしないこと,いかに悩むかという方法論,スキルを備えることが重要とした.
 小山珠美氏(NPO法人 口から食べる幸せを守る会ほか)は「口から食べる幸せを得るための権利擁護」と題し,自身が設立した家族会で行ったアンケート報告をもとに,患者の権利擁護と医療倫理について考察した.
 岡本圭史氏(浜松市リハビリテーション病院)はSTの立場から,「摂食嚥下障害にまつわる倫理的問題の気づきとジレンマ」について,Jonsenらの4分割法を元に「代理判断」や「本人の推定意思」で悩んだケースについて,具体的に呈示した.
 菊谷 武氏(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)は「在宅生活における食と臨床倫理」と題し,終末期における歯科患者の倫理的論点として,抜歯や咬合再構成の考え方をあげ,全身におけるリスク管理,患者尊厳,家族の介護負担などのリスク&ベネフィットを天秤にかけ,十分話合って決定することが求められるとまとめた.
 教育講演5「薬から始める摂食嚥下リハビリテーション~薬剤性嚥下障害への対応」では野原幹司氏(大阪大学大学院)が登壇.特に注意すべき薬剤として,認知症高齢者のせん妄や幻覚治療に処方されていることが多い抗精神病薬をあげ,その副作用に薬剤性嚥下障害がみられることを解説した.摂食嚥下リハの現場では,訓練のみに注力するのではなく,服用薬剤についても確認し,広い視野からアプローチすることが必要だとまとめた.

 教育講演6「摂食嚥下機構の生理と解剖」では井上 誠氏(新潟大学大学院)が「咀嚼」「嚥下誘発」について,最新の知見を研究データを元に解説した.咀嚼とは単に固形物を粉砕することを示すのではなく,唾液と混和して食塊形成することまでを含み,個々人の唾液量や食物に含まれる油分なども影響することから,要介護高齢者や若年者など,ターゲットに合わせたアプローチ検討が重要であること等を示した.

 「金子芳洋先生 追悼シンポジウム」では,本年3月に逝去された本学会初代理事長・金子芳洋先生と所縁の深い才藤栄一氏(藤田医科大学),向井美惠氏(昭和大学名誉教授),田村文誉氏(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック),植田耕一郎氏(日本大学歯学部)が登壇し,それぞれの立場から金子先生との歩みや思い出が紹介された.現在,15,865名もの多職種会員により構成される本学会だが,第1回大会(1998年)で昭和大学上條講堂に参加希望者1,000名が集まり,講堂に入りきらなかったエピソード等,本学会の変遷等も紹介された.また,金子先生の主な功績として,保険診療における「摂食機能療法」新設(1994年)や,本学会設立(1995年)までの働きかけや経緯,主な執筆・翻訳書籍なども紹介された.


 次回学術大会は,2023年9月2日(土)~3日(日),パシフィコ横浜ノースにて開催予定である(大会長:芳賀信彦氏(国立障害者リハビリテーションセンター).

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