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第35回 日本顎関節学会総会・学術大会 開催される
 7月2日(土),3日(日),札幌市教育文化会館(札幌市)にて標記大会が「顎関節症:その多様性を理解する!」をメインテーマに開催された(大会長:山口泰彦氏・北大).
 特別講演「人類進化における咬合と顎関節 特に縄文人と現代人の相違について」では,海部陽介氏(東大)が「進化」の基本的な考え方を解説.縄文人以来の日本人頭蓋骨の人類学的な検討から,下顎骨の退縮の時期を主に江戸時代以降の現症であると述べた.さらに,ベッグの咬耗咬合こそが人類の正しい咬合とする説を紹介しながら,縄文人の“正常咬合”は咬耗した切端咬合であったことを供覧した(座長:山口氏).
 シンポジウム3「顎関節症の病態分類別の治療戦略-開業医は顎関節症にどう対処すれば良いか?-」では,最初に「疼痛関連の顎関節症に対する運動療法・アプライアンス療法」で島田 淳氏(東京都開業)が運動療法とアプライアンス療法の基本的な考え方を整理,次の「疼痛関連の顎関節症に対する薬物療法」で澁谷智明氏(日立製作所)が初期治療における薬物療法を解説した.「顎関節円板障害(復位性)~顎関節雑音と運動障害~」では塚原宏泰氏(東京都開業)が復位性の場合の特徴,鑑別診断,治療法を解説し,「顎関節円板障害(非復位性)~急性期・慢性期の対応および運動療法~」では,羽毛田 匡氏(長野県開業)が非復位性の場合の治療目標の設定や,運動療法の適応などを述べた.最後の「変形性顎関節症~考慮すべき点とその対応~」では,佐藤文明氏(東京都開業)が変形性顎関節症の特徴の整理から治療の選択と注意点,高次医療機関への紹介などについて解説した(座長:島田氏,羽毛田氏).
 シンポジウム4では,「『咬合違和感症候群の診療フローチャート(2021)』の臨床応用について」と題し,和気裕之氏(神奈川県開業)が咬合違和感をめぐるこれまでの論文を整理,そのうえで和気氏らが作成したフローチャートと応用法を解説した.「ODS患者の診療フローチャートの臨床応用に必要な知識と技術」では,玉置勝司氏(神歯大)が咬合・顎関節の検査ができたうえでのフローチャートであることを強調.修飾因子を検証し,患者の問題に合わせたオーダーメイドの治療を行う必要性を述べた(座長:石垣尚一氏・阪大).
 委員会企画セミナー(診療ガイドライン作成委員会)「顎関節症診療ガイドライン:改定に向けて・若手が作成に参加することについて」では,最初に「本学会における顎関節症臨床診療ガイドライン作成の変遷」では,西山 暁氏(医科歯科大)がこれまでのガイドライン「1~3」の内容を紹介,GRADEシステムでエビデンスを集約した現在の診療ガイドライン作成の状況を紹介した.次に「顎関節症診療ガイドライン作成のためのアウトカムに関するスコーピングレビュー」では,大井一浩氏(金沢大)がアウトカムの重要性を検討するためのスコーピングレビューについて紹介.重要性は時代とともに変遷するが,疼痛,最大開口域,顎機能や顎運動,QOLなどが主要アウトカムになることを解説した.「診療ガイドライン作成から見えた世界の潮流-スクリーニングを経験して」では柏木美樹氏(東大)がガイドライン作成にはシステマティックレビューの実施から参加し,その経験などから得たものを述べた.最後の「診療ガイドライン作成から学ぶ,臨床に直結するアウトカムとエンドポイントの考え方」では,山口賀大氏(愛院大)がガイドライン作成に関わることで,アウトカムやエンドポイントに対する考え方を知り,今後の臨床や研究デザインにも利用できることを述べた(座長:湯浅秀道氏・豊橋医療センター,松香芳三氏・徳島大).
 覚道健治賞(学術奨励賞最優秀賞)受賞講演では,野沢道仁氏(昭和大)が受賞した「パノラマX線画像による変形性顎関節症の診断における深層学習システムの有用性」について,同一のパノラマX線画像を使用して3人の歯科放射線医と3人の臨床研修歯科医を深層学習システムを適用した効果を比較した成果を講演した(座長:佐々木啓一氏・東北大).
 歯科衛生士部会セミナーでは,「歯科衛生士が顎関節症の治療に関わる上での課題,問題点の解決に向けて-会員アンケートからわかったこと-」の題し,澁谷智明氏が歯科衛生部会立ち上げにあたって行った,顎関節症治療への歯科衛生士の参加に関するアンケート調査の結果の紹介,考察を行った.「歯科医院勤務の歯科衛生士はどのように顎関節症治療に関われるか~その現状と課題~」では,兜森彩日氏(佐藤歯科医院今戸クリニック)が歯科衛生士業務の各項目に顎関節症治療における役割をあてはめて紹介.歯科衛生士が参加することで,治療の流れに役立つ面があるものの,勉強の機会が少ないという問題点も指摘した.「歯科衛生士が顎関節症治療に関わる上での課題」では,日高玲奈氏(医科歯科大)が教育の現場からの考察を行い,歯科衛生士教育コア・カリキュラムに盛り込まれている項目を紹介.現実には,まだ卒前教育・実習や卒後教育の充実が望まれる状況を解説した(座長:島田 淳氏,佐藤文明氏).

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