Ishiyaku Dent Web

　11月20日（土）から標記学会総会および学術大会（大会長：本田和也氏／日本大学歯学部 歯学部長）が，「医療ICTの時代の歯科医学教育を考える～歯科医学における遠隔教育の実践～」をテーマにWEB開催された（～12月3日）． 特別講演，教育講演，シンポジウムのほか，一般演題79題，企業講演が行われ，第40回の記念大会にふさわしいプログラム構成となった．

　記念大会特別講演では，Somphone Phanthavong,Dean氏（Faculty of Dentistry,University of Health Sciences,Lao PDR）が「Dental Education in Lao P.D.R」を，Barkvoll,Pal Schjerven氏（Professor,dr,odont,Deartment of Oral Surgery and Oral Medicine,Faculty of Dentistry,University of Olso,Norway）が「The future of dental education in Norway」と題して登壇．各国の歯科医学教育の現状と取り組みについて報告した．

　教育講演では，「地域包括ケアシステムでの医療人育成のあり方」をテーマに小椋正之氏（厚生労働省医政局歯科保健課）が登壇．人口構造の変化とともに，年齢階級別の一人平均残存歯数・高齢者の平均歯数，歯科診療所を受診する推計患者の年次推移などを示し，高齢化の進展に伴い，地域包括ケアシステムにおいて歯科医療がかかわる重要性および人材の育成が急務であることを説いた．

　シンポジウム1では，「シームレスな歯科医療人育成」（座長：武市　収氏／日本大学歯学部歯科保存学第Ⅱ講座）をテーマに4名が登壇．林　誠氏（日本大学歯学部歯科保存学第Ⅱ講座）は「共用試験の公的化に係る歯学教育モデル・コア・カリキュラムについて」と題し，日本の医療人養成において，歯学は医学・薬学・看護学とともに教育の水平的協調を目指していることを説明．紙本　篤氏（日本大学歯学部総合歯科学分野）は「卒前の臨床実習と卒後の臨床研修におけるシームレスな歯科医師養成に向けた取り組み」と題し，歯科医師臨床研修の到達目標が「歯科医師としての基本的価値観（プロフェッショナリズム）」，「資質・能力」，「基本的診療業務」の3つの項目に変更した点などを解説．髙見澤俊樹氏（日本大学歯学部保存学教室修復学講座）は「離島診療における臨床研修」と題し，6852の島で成り立つ日本列島のうち，有人である416の離島，その中で利島，新島，式根島，神津島，御蔵島，青ヶ島の6島に臨床研修を行っている日本大学歯学部の研修プログラムを紹介．尾﨑哲則氏（日本大学歯学部医療人間科学講座）は「プロフェッショナリズム教育と歯科医療人育成」と題し，本学会の教育研究集会・倫理教育関連の委員会活動を報告．学生自らが振り返り，評価できる質問形式の教材や歯科医療倫理教育用ビデオ教材，そして『よき歯科医療人になるための倫理・プロフェッショナリズム教育　プロフェッションワークブック』（医歯薬出版）の作成など，明示的な教育を推進している取り組みを紹介した．

　シンポジウム3では，シンポジウム2の「遠隔教育・遠隔医療の教育評価」を受け，「遠隔教育の課題と可能性を考える」（座長：木尾哲朗氏／九州歯科大学口腔機能学講座総合診療学分野）をテーマに，粟野秀慈氏（九州歯科大学歯学科クリニカルクラークシップ開発学分野），二瓶智太郞氏（神奈川歯科大学歯学部教養・教育学系／神奈川歯科大学歯学部臨床科学系歯科診療支援学講座クリニカル・バイオマテリアル学分野），木下淳博氏（東京医科歯科大学統合教育機構）の3名が登壇．新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のパンデミックによる各大学の遠隔授業の取り組みと学習効果を報告．「オンデマンドで繰り返し授業内容を閲覧できる」「試験準備の時間の確保がしやすくなった」等，主体的に学修する学生が増え，科目により対面講義以上の教育効果が期待できることが判明し，今後もICT（教育支援システムMoodle）の活用を含むデジタル技術の促進と遠隔授業の特性を活かしたカリキュラムが求められると提言した．

　未だ終息しないコロナ禍において，逆境をチャンスに変えるべく，歯科医学教育のめざましい変革が感じられる学術大会となった．
　次回，第41回総会および学術大会は， 2022年7月23日（土）～24日（日），日本歯科大学新潟生命歯学部にて開催予定（大会長：藤井一維氏）．