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第24回日本歯科医学会学術大会 開催される
 9月23日(木)~25日(土),標記大会が「逆転の発想 歯科界2040年への挑戦 A Brand New Take: Dentistry’s Challenge in the Lead-up to 2040」をテーマとして,オンライン開催された.(会頭;住友雅人氏(日本歯科医学会会長).オンデマンド配信は10月31日(日)まで)
 会頭講演において,住友氏は,全面オンライン開催という初めての開催様式への可能性と,本学会がこれまで積み上げた歴史の両方について言及し,歯科界におけるイノベーションについて力強く語った.
 公開フォーラム「ダブルキャリアのすゝめ ~より楽しい歯科の世界を目指そう~」(モデレーター:住友雅人氏,藤井一維氏(日歯大))では,歯科医師免許をもちながら多方面において活躍する人材の講演やパネルディスカッションを通して,歯科界の人材の豊富さを認識するとともに,情報共有によって歯科界全体の活性化を誓った.
 開会講演1「命と健康を脅かす気候変動をくい止めよう」(座長:小林隆太郎氏(日本歯科大学附属病院))では,小泉進次郎氏(環境大臣)が,本学会のテーマである「逆転の発想」を環境問題と経済においても用いていく意気込みを語った.

 開会講演2「仕掛学~人を動かすアイデアのつくり方~」(座長:天野敦雄氏(阪大))では,松村真宏(阪大)が,人を動かすための仕掛けについていくつかの実践例を紹介し,歯科と患者の行動変容についてヒントとなりうる提案を行った.

 公開講演「ニュースから世界を見る」(座長:川口陽子氏(日本歯科医学会))で登壇した池上 彰氏(ジャーナリスト)は,感染症が世界や人々の生活にどのような影響を与えてきたのかを振り返り,歴史的な視野から現代をどのようにみるのかを語った.
 シンポジウム1「歯髄の保存・再生と歯根膜の保存・再生~歯髄と歯根膜に存在する幹細胞に着目した歯科臨床を考える~」(モデレーター:高山真一氏(滋賀県))では,4名の演者が登壇した.
 講演「歯髄の保存~断髄法,不可逆性歯髄炎に対する新しい治療オプション~」では,泉 英之氏(滋賀県)が,非可逆性歯髄炎の治療オプションとして注目される断髄法について,学術的な解説とともに自身の症例を振り返り,根管治療の代替として安易に行うものではなく相応の訓練が必要な治療法であることを強調した.
 講演「歯髄の再生~リバスクラリゼーション / 再生歯内療法の現状と課題~」では,瀧本晃陽氏(東京都)が,近年,リバスクラリゼーション / 再生歯内療法を行うことによって歯根の成長,生活反応の回復を得られる可能性が報告されていることを受けて,今後の可能性などについて語った.
 講演「歯根膜の保存~歯根膜が保存する顎堤,インプラント治療への応用〜」では,森田 潤氏(滋賀県)が,インプラント埋入や補綴装置のポンティック部位として活用するために歯槽堤回復を望む場合,歯根膜と歯根を粘膜下に保持することの有効性について検討した.
 講演「歯根膜の再生 ~細胞増殖因子による歯周組織再生療法の成果と課題~」では,高山氏が,FGF-2 による歯周組織再生がなされるまでの研究や今後の展望について話した.
 シンポジウム15「口腔マイクロバイオーム管理から広がる歯科保健医療の新領域」(モデレーター:山下喜久氏(九大),天野敦雄氏(阪大))では,3名の演者が登壇した.
 講演「硫化水素産生菌と疾病との関係」では,大毛宏喜氏(広大病院)が,菌種ではなく菌のグループに着眼した研究から,菌の代謝産物が病因に関与している可能性を示唆した.
 講演「マイクロバイオームから紐解く健康科学の近未来」では,國澤 純氏(医薬基盤・健康・栄養研究所)が,最先端の技術によって食事,腸内細菌,腸管免疫が形成する腸内環境と生体応答との関係を研究する立場から,口腔領域における研究の可能性を述べた.
 講演「口腸連関を基盤とした歯周疾患と全身疾患の関連」では,山崎和久氏(理化学研究所)が,近年注目され始めている口腔細菌による腸内細菌叢のディスバイオーシス誘導について紹介し,口と腸の関連性に言及した.
 日本歯科衛生士会と共同企画:歯科衛生士シンポジウム「認定歯科衛生士の必要性と魅力を探る!」(モデレーター:石黒幸枝氏/米原市地域包括医療福祉センターふくしあ)では,4人の歯科衛生士シンポジストが登壇.
 会長の吉田直美氏(東京医科歯科大学大学院)は, 1989年から開始している日本歯科衛生士会での生涯研修と連動させた認定研修の取り組みを紹介.“老年歯科”の立場からは,丸岡三紗氏(香川県まんのう町国民健康保険造田歯科診療所)が地域の高齢者と歯科という枠を越えて交流している活動内容を報告.
 認定歯科衛生士“医科歯科連携・口腔機能管理”の立場からは,菅野亜紀氏(東京歯科大学短期大学)が認定歯科衛生士研修の企画,運営の取り組みを紹介.
 日本歯周病学会認定歯科衛生士の立場からは,佐藤昌美氏(北海道・池田歯科クリニック)が,現在91歳の高齢患者さんの35年にわたる歯周治療を通して,歯科診療所で患者さんの健康長寿を支えている症例を報告.認定歯科衛生士を取得することは,自分を成長させていくプロセスの証となるだけでなく,専門職としての信頼が増し,国民・他職種に向けての証ともなり,ひいては歯科衛生士の認知度と評価を上げることに繋がるという魅力を伝えた.
 各領域で活躍しているシンポジストの報告とともに,吉田氏からは,わが国の歯科医療職の中で唯一就業者数が増えている歯科衛生士であるが,強みであるその“数”をまだうまく使えておらず,国民・他職種に向けて発信が不足しているからこそ,認定歯科衛生士制度を活用し,将来を見据えて,歯科衛生士というチームで一丸となって盛り上げてほしいと発信した.

 歯科衛生士講演1「口腔機能低下症の評価と管理において歯科衛生士に求められる視点」(座長:水口俊介氏/東京医科歯科大学大学院)では,小原由紀氏(東京都健康長寿医療センター研究所)が登壇.平成30年度,保険診療に新設された「口腔機能低下症」はう蝕や歯周病と異なり,患者が自覚して口腔機能低下症を自覚して来院するケースはまれであるため,歯科衛生士としての観察眼をもち,気づいてあげることが最も大切であると解説.また,口腔機能は1つだけではなく,複数存在するため,7つの評価項目をすべて行うことが必要で,歯科医師の指示の下,歯科衛生士が診療の補助として評価・診断を行うことができると解説.そのうえで,自己効力感〈セルフ・エフィカシー〉を用いながら,患者さんの行動変容を支援できる歯科衛生士を目指してほしいと提言.

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