Ishiyaku Dent Web

歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のポータルサイト

第75回日本口腔科学会学術集会 開催される
 5月12日(水)~14日(金)の3日間,千里阪急ホテル(豊中市)にて標記学術集会が「次世代医学のために口腔科学がなすべきこと」をテーマに開催された(会長:阪井丘芳氏・阪大).本会は,コロナ禍の下で最新の感染対策(後述)のうえで会場でも開催しつつ,会期後にオンデマンド発信するハイブリッド形式で行われた.
 特別講演1は海外留学に関する2題の講演がなされた(司会:阪井丘芳氏・阪大).「グローバル時代の次世代医学のために口腔科学がなすべきこと-米国における歯科臨床教育および博士教育について-」では,北郷明成氏(カリフォルニア大)がリーダーとして社会に貢献できる“一人前”の研究者を育成する米国での博士(PhD)教育について解説.また,米国での歯科臨床(レジデント)教育では,ADAが決めたエビデンスに基づいたクオリティコントロールで画一化した内容を目指すプログラムとなっていることを紹介した.「海外研究留学のすすめー留学先の選び方から準備,成功への道ー」では,岩田淳一氏(テキサス大)が自らの日本での研究生活から南カリフォルニア大学への留学のきっかけを述べ,その経験をもとに留学の必要性,留学先の選び方,どのような人が採用されるのか,留学期間について,留学の成功・失敗などを解説した.それらを踏まえて,指導的な立場にある方へのお願い,次世代の人へのメッセージ,留学しようか迷っている人のためにと,それぞれの立場へのメッセージを語った.
 シンポジウム2「摂食嚥下障害の評価と対応の実際」では,3題の講演が行われた(司会:戸原 玄氏・医科歯科大,小谷泰子氏・平成歯科クリニック).「摂食嚥下障害の評価と対応の実際」では,戸原氏が推進している医療資源マップや,嚥下食をめぐる企業との活動などを紹介した.具体的な症例報告では,食べる機能と栄養摂取方法が合っていない患者が多い現状を指摘,さらに氏の講座から発表されてきた研究成果を紹介した.次の「「原因」から考える摂食嚥下障害~専門外来の受診者統計から見えるもの~」では,田中信和氏(阪大)が大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部の摂食嚥下障害の専門外来の患者を分析.今後は高齢者の嚥下医療に関わる機会はさらに増えていくと考えられるが,原因疾患は多様な要素になってくる可能性がある.これからは嚥下障害として来院する患者の原因疾患を推察することで,嚥下リハビリテーション以外の対応も含めた方向性を述べた.「嚥下臨床の理想と現実」では,小谷氏が嚥下障害,ドライマウス,睡眠時無呼吸に特化した歯科医院において実際にどのようなアプローチをするのか具体的に紹介.症例を供覧しながら,嚥下臨床は簡単に解決するものではなく,歯科医師が一人で抱えることの難しさ,他の歯科医師などとの連携の必要性を指摘した.
 シンポジウム4「睡眠時無呼吸治療におけるOA治療における歯科タイトレーション」では,4題の講演が行われた(司会:奥野健太郎氏・大歯大).「なぜ今,歯科タイトレーション法が必要なのか?―閉塞性睡眠時呼吸障害(OSA)に対する歯科の役割―」では,外木守雄氏(日大,日本睡眠歯科学会理事長)が口腔内装置(OA)製作の際の咬合採得をめぐる保険算定の問題点や,下顎の最適な移動量を決めるための調整料の必要性を述べた.次の「歯科タイトレーションとは」では,佐々生康宏氏(ささお歯科クリニック口腔機能センター)が治療効果と併発症を調整しながらOAの最終的な下顎位を調整するタイトレーションについて,OAの併発症状やタイトレーションの期間などを考察,さらにOA製作とタイトレーションの流れを動画を用いて具体的に解説した.「内視鏡を用いた歯科タイトレーション」では,奥野氏がタイトレーションの目的である気道の評価を行うための内視鏡検査について,動画を使いながら解説.必要最小限での移動で効果を出すために有効であり,さらに病因・病態・適応診断に使用できることも述べた.
 イブニングセミナー「COVID-19対策の最前線 ~MA-Tを用いた感染対策とメカニズム~」では,3題の講演が行われた(司会:井上 豪氏・阪大薬,阪井丘芳氏・阪大,共催:アース製薬株式会社).「要時生成型亜塩素酸イオン水溶液MA-Tを用いた酸化制御技術の開発と応用」では,井上氏が日本の航空機のほぼすべてで使用されている除菌消臭剤MA-Tについて,安全性,抗ウイルス活性効果などから,これまでの研究の進展とさまざまな応用研究の展開を解説した.次の「MA-Tの抗微生物作用のメカニズム」では,古西清司氏(阪大薬)が耐性菌の現状を述べた後,MA-Tの有効性についてメカニズムを詳細に解説した.「口腔から始めるCOVID-19対策の最前線~MA-Tを用いた新規口腔ケア用品の開発~」では,阪井氏がCOVID-19感染経路の仮説を呈示.口腔内でコントロールすることで拡散・重症化を防ぐために,MA-Tによる口からの感染対策の有効性を指摘した.
 本会は会場での開催となり,最新の新型コロナウイルス感染対策を行ったうえで行われた.具体的な方法については,学術集会ホームページ(http://jss75.umin.jp/99.html)にて公開している.

■他のニュース記事をさがす

日付から記事をさがす
<2024年10月>
293012345
6789101112
13141516171819
20212223242526
272829303112
3456789
キーワードから記事をさがす

人気の歯科書籍(キーワード別)

歯科雑誌 最新号