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第63回秋季日本歯周病学会学術大会  オンライン開催される
 新型コロナウイルス感染症拡大を受け,10月16日(金)~11月30日(月),標記大会のオンライン学術大会が「歯科医科連携による歯周病リスク管理」をテーマに開催された.(大会長;三邉正人氏・神歯大)
 認定医・専門医教育講演では,「日常臨床におけるデータ収集と管理の重要性」と題して辰巳順一氏(朝日大)が登壇し,認定医資格,専門医資格取得を目指す歯科医師に向けて,所属する病院で口腔内写真を一括管理した経験などから,検査結果を一元化できるシステムの構築によって患者利益に資することを強調した.(座長;山本松男氏(昭和大))
 特別演題Ⅱ「糖尿病をとりまく現状と地域一丸の糖尿病対策の必要性~糖尿病医科歯科連携を中心に~」に登壇した矢部大介氏(岐阜大)は,超高齢社会を迎えたわが国における糖尿病診療の現状を示すとともに,地域医療や医科歯科においての連携に焦点を絞って展望を語った.(座長;村上伸也氏(阪大))
 シンポジウムⅠ「口腔-腸管軸と全身の健康」(座長;山崎和久氏(新潟大))では,3名が登壇した.
 「歯周病と消化器疾患」との演題で講演を行った中島 淳氏(横浜市立大)は,2種類の歯周病菌がそれぞれ非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、大腸がんとの相関関係を示す事実を報告し、歯周病の管理治療の重要性を改めて述べた.次に登壇した福田真嗣氏(慶應大)は「消化管内細菌叢がもたらす生体恒常性と疾患」との題で,人の体内にある40兆もの細菌叢について「もうひとつの臓器」と捉え直し、個々人で異なるその特徴を読み解くことが今後の健康維持や疾病予防に繋がっていく可能性を報告した.「口-腸連関から考える歯周病と全身の関係」で登壇した山崎和久氏は,マウス実験によって口腔細菌叢が全身の健康におよぼす影響を従来以上に明確に説明できる可能性を示唆した.
 シンポジウムⅡ「糖尿病関連歯周炎について(学会主導型シンポジウム)」(座長;西村英紀氏(九大),三邉正人氏)では3名が講演を行った.
 「糖尿病関連歯周炎という病名のとらえ方」では,西村英紀氏が歯周病と糖尿病が相互に影響し合うことをあげ、医科歯科が重点的なケアを行うためにペリオドンタルメディシン委員会が取り組んできた経緯について振り返った.また,講演「糖尿病管理における医科歯科連携の重要性~糖尿病専門医の立場から~」のなかで栗林伸一氏(三咲内科クリニック)は糖尿病関連歯周炎の病名が定着することによって,歯科から医科、あるいはその逆への照会も増え、相互連携が深まる期待を話した.「糖尿病関連歯周炎の病態に基づく診断・治療と医科歯科連携」で登壇した木戸淳一氏(徳島大)は,糖尿病を診断する際に医科と歯科で共通の疾患指標(マーカー)がない問題点を示し、歯肉溝滲出液(GCF)中の歯周病診断マーカーを測定することにより歯科診療室で糖尿病関連歯周炎を検査できる可能性を示した.
 シンポジウムⅢ「歯周・矯正連携によるリスク管理「咬合リスクを考慮した歯周矯正の臨床」」(座長;申 基喆氏(明海大))には3名の演者が登壇した.
 「矯正学的側面 包括歯科診療における矯正歯科の役割」との演題で菅原準二氏(仙台青葉クリニック)が登壇し,歯周病を患う患者に対して矯正治療を行ってきた自身の経験から、包括歯科診療における重要なケアについて話した.次に登壇した児玉利朗氏(神歯大)は「周病的側面 歯周組織の特性と歯の病的移動」を掲げて、臨床現場でよく経験する歯周病患者の病的な歯の移動について,歯周基本治療からSPT 中の咬合管理なども含めた考察を披露した.講演「矯正学的側面 矯正治療における歯周病のリスク背景と咬合性外傷」のなかで不島健持氏(神歯大)は,成人の不正咬合症例のなかには進行した歯周病が見つかることが多い点をあげ、矯正治療によって歯周組織の炎症を抑えていくことの重要性を具体的な症例とともに示した.
 このほか,石川県歯科医師会シンポジウム(座長;光谷正博氏(石川県歯科医師会))では,地域医療に従事するそれぞれの立場から歯科医療の重要性を患者に対して啓蒙し、さらに他職種との連携をどのように行っていくべきかが語られ、現状地域で抱えている問題が共有された.
 ほかにも今大会のテーマである“歯科医科連携”の主旨を反映した認定医・専門医ならびに歯科衛生士教育講演,地域参加型のシンポジウムなど多彩な企画が用意され,活発な情報発信と議論が行われた.

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