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第50回日本口腔インプラント学会記念学術大会 開催される
 9月19日(土)~25日(土)の間,標記大会が「インプラント治療 これまでの50年,これからの50年」をテーマにオンデマンドWEB開催された(名誉大会長:宮崎 隆氏・昭和大,大会長:井汲憲治氏・関東・甲信越支部).
名誉大会長の宮崎氏と大会長の井汲氏
 特別講演1「光触媒の医学への応用 バクテリアやウイルスへの効果」では,藤嶋 昭氏(東京理科大)が酸化チタンに注目した光触媒について解説.水素の生成や強い酸化力を使った殺菌などの効果や,酸化チタンがもつ酸化分解能,超親水性の建築物への応用やウイルスへの効果,インプラント・ホワイトニング・義歯などの歯科領域での活用など幅広く紹介した(座長:井汲氏).
特別講演1の演者の藤島氏

 特別講演2「ヒト頭部と脳の疾患と進化」では,岡野栄之氏(慶應大)がiPS細胞を用いた再生療法の現状や,ALSなどの病態解析や創薬,さらに頭頸部における先天性疾患であるCHARG症候群に関する研究を紹介した.さらに,霊長類であるマーモセットを利用した遺伝子解析による大脳皮質拡大の研究を踏まえ,ヒトの脳の進化研究の現状を解説した(座長:上條竜太郎氏・昭和大).

 理事長講演「日本口腔インプラント学会の過去,現在,未来」では,宮崎 隆氏(昭和大)が50周年記念誌の作成を進めている現状から,これまでの本学会の歩みを整理.現在,日本の歯学系では最大の会員数をもつに至った本学会の今期の活動に関し,ホームページによる情報提供や学部教育・生涯学習などの人材育成,さらには国民生活センターからの要望への対応,書籍による国民への情報提供など,理事長2期目の宮崎氏の方針を幅広く解説した.

 シンポジウム1「包括的歯科治療の真髄ー矯正学的診断とインプラント補綴治療の融合ー」(座長:澤瀬 隆氏・長崎大,武田孝之氏・東歯大)では,3名の演者により多数歯の治療をめぐる矯正学的診断とインプラントに関し,解説が行われた.

 米澤大地氏(近畿・北陸支部)は「咬合異常への矯正学的対応〜インプラントと矯正治療の連携〜」とのテーマで講演.破壊因子となる「力」を考えて適正な顎位を検討し,アンテリアカップリングの重要性を指摘.それを踏まえた実際の臨床における考え方を供覧し,矯正との連携と考え方を考察した.

 酒井志郎氏(近畿・北陸支部)は「包括的歯科治療における矯正治療の重要性」とのテーマで講演.臨床におけるエビデンスの多くが1歯単位でなされているものであり,多数歯・咬合再構成など全顎に適応する際の疑問を呈示した.さらに咬合の変化を時間軸で考え,また咬合の状態を正常咬合・不正咬合・生理的咬合・病的咬合の組み合わせで考えることを紹介.実際の症例を検討し,正常・病的,不正・生理的の咬合の組み合わせをもった症例の難しさを解説した.さらに,矯正治療のスキルではなく,矯正治療が必要か不必要かを総合的に評価できる診断力を身につけることの重要性を指摘した.

 木原敏裕氏(木原歯科医院)は「歯科治療を成功に導くためのコンセプト」とのテーマで講演.歯列の安定性の重要性を指摘した後,カリエスやペリオの誘発を防ぐため環境の改善に矯正を利用した治療計画や,矯正の診断を使用した全顎的なインプラント症例,さらに矯正を行わないと判断した症例など,症例をもとに解説を行った.

 シンポジウム5「超高齢社会に向けたIODをはじめとするインプラント治療の活用」(座長:加藤仁夫・日大松戸,永田省藏・熊本県)では,3名の演者それぞれの視点より,高齢患者への欠損補綴におけるインプラントの活用の現状と可能性が語られた.

 前田芳信氏(阪大)は「利点と欠点を知った上で当社から可撤性上部構造を有効に利用する」とのテーマで講演.高齢患者の口腔内におけるインプラントをめぐるトラブルの様相とそれらの原因を整理し,既存のインプラントを有効に活用した可撤性のIODという選択が,超高齢社会において求められていると指摘.その際,既存の上部構造を支台としたパーシャルデンチャーの新製,上部構造撤去後のインプラント体を支台としたIODの新製という2つの対応が考えられるが,それらの選択はクラウン-インプラント比やインプラント植立位置から判断することになると述べた.また,固定性補綴から可撤性補綴への改変よりも,当初の補綴から可撤性を選択しておくことが将来的には合理性があるとし,その際は二次固定の上部構造が選択されるべきと強調した.

 亀田行雄氏(埼玉県)は「インプラントを併用した未来志向パーシャルデンチャー」とのテーマで講演.総義歯治療の概念で応用されるIODが広く普及する一方で,無歯顎患者の減少により残存歯を有する高齢患者が増加しているトレンドのなかでは,欠損の進行を拡大させない補綴手法として,少ない本数のインプラントを用いたIARPDの可能性に注目すべきと指摘.Fulcrumlineを解消し咬合力を台形面で受け止める設計,清掃性を考慮したアバットメントの高さ,被圧変位量の異なる三者(粘膜・インプラント・歯)の正確な印象採得手法,メインテナンス性の向上を意図したインプラント周囲歯肉部の開放など,IARPDのハイジニックデザインのポイントを,実際の症例の提示とともに解説した.

 永井省二氏(宮崎県)は「残存歯とインプラントを利用したオーバーデンチャーの臨床成績」との演題で講演.固定性補綴からIODに至る移行的な義歯に求められる要件について,長期経過症例を提示し解説.残存歯とインプラントが共存する環境においては,「取り外しやすさと清掃性」の2点がキーワードとなると強調.複数の長期経過症例の提示により,状況に応じたアバットメントシステムの選択や,トラブルの実際とその対処を紹介したほか,自院における臨床統計(平均観察期間10.1年,患者11名,インプラント34,残存歯31/10年生存率:インプラント100%,残存歯93%)を報告した.「口腔機能回復に大いに貢献してきたインプラントが,人生終焉時期において足かせにならぬよう肝に銘ずる必要がある」との言葉でシンポジウムが締めくくられた.


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