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日本アンチエイジング歯科学会主催Special One day Web Seminar開催される
 9月13日(日),日本アンチエイジング歯科学会主催Special One day Web Seminar「歯科医が感染症医となる日 2nd Stage」がWHITE CROSS株式会社の動画配信にて開催された.昨年開催したスペシャルセミナーに続き,今年度は西田 亙氏(にしだわたる糖尿病内科院長),長谷川嘉哉氏(医療法人ブレイン理事長)に,新しく天野敦雄氏(大阪大学大学院歯学研究科教授)をゲストに迎えて,『医歯連携 歯周病を全身感染症として捉える時代の到来「歯周病」「糖尿病」「認知症」~その関連性を探る~』をテーマに,歯科医師,歯科衛生士400名が参加した.今年度は新型コロナウイルス感染拡大のためセミナーの開催が危ぶまれていたが,関係各者の尽力により,無事にWebにて開催の運びとなった.なお,本セミナーは公益社団法人日本糖尿病協会療養指導医取得のための講習会ならびに登録歯科医のための講習会として承認を得ている.
 最初に西田 亙氏が「口腔だけでなく全身の炎症消退を通して国民に貢献する歯科医療~人生100年時代に歯科が活躍するその理由~」をテーマに登壇.わが国の医療や食料事情が豊かになったことに伴い,寿命が伸びたことで,医療費や介護費が増加の一途をたどっているため,健康寿命をいかに延伸するかが喫緊の課題となっていることは自明であり,要介護度,入院医療費・入院日数は残存歯数が多ければ多いほど少なくて済むという疫学研究を紹介した.そのような状況から医科では口腔の健康,歯科医療に期待をしており,「診療情報提供料Ⅲ」や「歯科医療機関連携加算2」等,医科から歯科の受診予約をとると保険点数が医科に加算される仕組みが新設されたこと,2019年の『診療ガイドライン』(日本糖尿病学会)では2型糖尿病患者に歯周治療を強く推奨されたことを報告した.また,歯周病原細菌が糖尿病や早産・死産に関与していること,中でもP.gingivalisが有するタンパク質分解酵素「ジンジパイン」がアルツハイマー型認知症に大きく関与し,歯肉上皮と同様,ヒトの脳の海馬,さらにはゼブラフィッシュの心臓にもジンジパインが侵入しているという海外論文を解説.米国歯周病学会でも会員にレビューしているというCortexyme社(米国)で第3相臨床試験まで進んでいるアルツハイマー病治療薬,ジンジパイン阻害剤についても報告され,新薬誕生間近なのではないだろうかと示唆した.
西田 亙氏
 次に天野敦雄氏が「歯周病は完治しない,バイオフィルムの病原性制御で管理する」をテーマに登壇.歯周病は常在菌による感染症であって,プロフェッショナルケアとセルフケアにより,Microbial shift(細菌の変化)をいかに起こさせないかが重要であることを説いた.また,歯周病メカニズムの解説にとどまらず,歯周治療の成功の目安については,潰瘍面を閉鎖し,BOPを(-)にすること,出血が止まらないのはSRPができておらず,SRPが成功しないのは,インスツルメントのシャープニングができていないことが大きな原因であることを明言.確実な歯石除去のためのグレーシーキュレットの使用方法やセルフケアのモチベーションアップのための方法など,明日からすぐに使える臨床のヒントも紹介した.
天野敦雄氏
 3番目に長谷川嘉哉氏が「認知症専門医がはじめた,歯科医院と糖尿病専門外来」をテーマに登壇.医療法人ブレイングループは認知症専門外来および在宅医療を専門としているが,2020年6月にはクリニック敷地内に歯科クリニックを開院し,同時に糖尿病専門外来も開設.認知症の患者に歯科が介入する意義は,歯周病を予防して歯を残すことで経口摂取が増加し脳の刺激につながること,専門的口腔ケアの心地よさが扁桃核を刺激すること等でMMSE(Mini mental examination)が改善,加えて口臭の改善,誤嚥性肺炎の予防等,多々効果があると報告.また,歯科医院の多くは,エレベータのない2階に設置されていたり,車椅子や介助者が一緒に入れる十分なスペースがなくバリアフリーではないなど,高齢患者のことを想定していないのではないかと苦言を呈した.認知症患者の来院には,必ず付き添い人がいるため,長谷川氏のクリニックでは,本人だけでなく,付き添う人も歯科医院に通院するシステムが自然とできあがり,高齢者だけでなく,若い世代の患者も増えていると報告.なお,認知症患者の歯科治療を恐れる必要はまったくなく,むしろ歯科治療の際には,本能的に感じるものがあるのか,トラブルなく診療を受けていることも紹介.「淘汰」=歯科衛生士がいない歯科医院が多く,医科歯科連携をやっていくうえで,連携できる歯科医院とできない歯科医院が露わになる,「天命」=命に本気でかかわることの理解と覚悟,「納税」=積極的に売上をのばし,スタッフに還元し,納税することは最高の社会貢献,と3つのキーワードとともに,医師から歯科医療従事者に向けて叱咤激励が贈られた.
長谷川嘉哉氏
 講演は事前の収録によるものだったが,最後に3名によるLIVEシンポジウムが設けられ,参加者からの質疑応答,またディスカッションが行われ,令和時代の歯科に必要な「意識と知識,そしてシステム化」をセミナー参加者全員が共有してのクロージングとなった.なお,次回は2021年11月28日(日),西田氏,天野氏,長谷川氏の今回と同じ3名の講師で開催予定.
LIVEシンポジウムの様子

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