2020/08/19
8月18日(火),標記スタディグループによるウェビナーが「超高齢社会の歯科医療のあり方―大学病院歯科・病院歯科・訪問歯科からみた理想と現実―」をテーマに開催された(代表:中尾 祐氏・福岡県).
荻野洋一郎氏(九大)は大学病院歯科の立場から,高齢患者の歯科治療に際してはADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)の程度と口腔内の問題点を的確に判断することが重要であることや,中年期以降の治療が高齢期の状態に大きくかかわってくることから,フォローが難しくなるような複雑な治療を施すのではなく,できるだけシンプルな問題解決を心がけることが望ましいと述べた.
中尾氏は訪問歯科医の立場から,外来治療と訪問治療の違いとして,後者では治療のゴール設定を術者と本人だけでなく,周囲(患者家族,医師,看護師,介護スタッフ,ケアマネジャー)とも意思疎通を図りながら決定する,ソフトランディングの考え方で臨む点があるとした.また栄養管理を見据えた訪問歯科医による食支援の一例として,患者の口腔機能に合った食形態指導を行うことも重要とした.
鈴木宏樹氏(篠栗病院)は病院歯科の立場から,要介護状態の高齢患者が一般診療所での受診をためらい治療機会を逸している現状を指摘.高齢社会における開業医・かかりつけ医に求められるものとして,① 患者のライフステージの変化に対しシームレスな繋がりをもつ,② 高齢者(病気)について知る,③ (有病)患者の(口腔機能の)状態を把握する,④患者の状態に合わせたベストを尽くす,⑤ 高齢期も理解したうえで自分が受けたい医療の提供を心掛けることを挙げた.