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第63回春季日本歯周病学会学術大会 オンライン開催される
 新型コロナウイルス感染症拡大を受け,7月13日(月)~8月7日(金),標記大会のオンライン学術大会が「歯周病学のプロフェッショナリズム ― 歯周治療の実践知と科学知の融合を目指して ―」をテーマに開催され,約4,000名の参加者を集めた.(大会長;高橋慶壮氏・奥羽大)
 特別講演Ⅱ「COVID-パンデミックから歯周病治療と研究の将来を考える」で登壇した河井敬久氏(Nova Southeastern 大)は,アメリカにおける新型コロナウイルス感染症の感染拡大の現状について語ったうえで,歯科診療における新たな感染症予防をどう構築していくかを示し,歯科研究を行うことが将来的にいかに重要であるかを話した.(座長;古市保志氏(北海道医療大))
 教育講演Ⅰ「オミックス科学を推進したFANTOMの研究と今後の展開」では,国際研究コンソーシアムFANTOM1-5を牽引してきた林﨑良英氏(理化学研究所)が登壇した.世界中の科学者の協力を得て行われるこのプロジェクトによって,多くの生物学的に重要な発見があり,それが医学および臨床科学の分野において画期的な技術の開発へつながっていく未来への期待を語った.(座長;高柴正悟氏(岡山大),堀江真史氏(阪大))
 教育講演Ⅱ「人生100年時代の医療・介護―高齢化の進展と疾患の性質変化を踏まえて―」では,江崎禎英氏(経済産業省)が人生100年時代の医療・介護のあり方を,「病気にならないよう健康管理に努め」,「仮に病気になっても重症化させず」,「治療や介護が必要になっても社会から切り離さない」こととし,超高齢社会における社会経済システムの再構築において転換期にあるわが国の課題を示した.(座長;村上伸也氏(阪大),村岡宜明氏(日本歯科医師連盟副会長)).
 教育講演Ⅲでは,医師で感染症専門医の岩田健太郎氏(神戸大)が登壇.「感染症の考え方」をテーマに,感染症学の歴史から臨床感染症学の基礎概念まで詳説した.わが国における感染症学は,in vitro の微生物学から発展していることが諸外国との違いであるとし,“患者”が存在する臨床感染症学として捉えていくことの重要性等を改めて整理した.最後に,現在の新型コロナウィルス感染症についても触れ,PCR検査については事前確率の高低がスクリーニングとしての役割に大きな影響を与えること等を解説した(座長:西村英紀氏(九大)).
 シンポジウムⅠ「歯周炎病因論の再考」では「歯周炎のプレシジョン・メディシンに向けて」において,大島光宏氏(奥羽大)がRudolf Virchow氏の「すべての疾病は細胞の異常に基づく」提言にちなんで,歯周炎も細胞の異常によって引き起こされるのではないかという仮説を提唱した.次に「Primary patient-derived cellsが教えてくれること」と題した山口洋子氏 (日大)の講演では,歯周炎関連線維芽細胞(PAF)を研究することによって,患者や部位ごとに異なる治療薬が発見できる可能性を示唆した.また,堀江真史氏(阪大)は「FANTOM5プロジェクトによる歯周炎関連線維芽細胞の解析」のなかで歯周炎患者から採取したPAFの解析によって,それが歯周炎の病態形成要因の一つに寄与している可能性を示唆した.「歯周炎患者の歯肉溝滲出液におけるmicroRNAプロファイル」では,齋藤 朗氏(東京大)が唾液や歯肉溝滲出液に含まれるmicroRNAを使うことで歯周炎診断の精度を高められる可能性を明かした.「歯周病診断における肝細胞増殖因子(HGF)の応用」のなかで青木 章氏(医科歯科大)は,現在は重度歯周炎の診断にしか用いることのできないHGF試験紙の感度を高めていくことで,歯周炎診断の有用なツールになりうる期待を話した.最後に「羽咋郡市中野プロジェクト(糖尿病と歯周病の関連)の統計解析」では,山内恒人氏(慶応大)が糖尿病患者の歯科受診勧奨を行う羽咋郡市中野プロジェクトの例から,歯科医が重度歯周病患者の背景に糖尿病の存在を積極的に疑い,医科歯科連携を構築できると展望を語った.(座長;大島光宏氏,山内恒人氏)
 シンポジウムⅡ「若手臨床家の集い」では佐久間隆章氏(福島県)が「顎機能と歯周治療の調和を考える」のなかで,長期的に良好な予後を獲得するためには,単に歯周治療を行うだけではなく,咬合について知ることが大切であるとし,実際の症例をもとに検討した.次に猪狩寛晶氏(福島県)は「歯根膜とインプラントを活用した歯列保持」と題し,歯根膜が有する機能のうち,とりわけ再生機能と恒常性維持機能に着眼し,歯根膜の機能を活かした歯列保持へのアプローチやインプラントについての症例を紹介した.また,斎田寛之氏(埼玉県)は「再生療法を行う前におさえておきたいこと」という演題で症例を検討し,歯周組織再生療法の予後は個体差が大きい点を指摘し,1~2壁性骨欠損の足場作りやⅡ度根分岐部病変において特に同再生療法が有効であると結論づけた.「中等度から重度の歯周病患者に対する包括的治療」との演題で講演した平山富興氏(大阪府)は,実際の臨床症例から,インプラント治療においても可能な限り歯を保存して清掃性を確保することが,良好な治療結果につながると報告した.また,上妻和幸氏(神奈川県)は「審美修復における光と影」のなかで「着眼大局,着手小局」を心がけて行った審美修復補綴の症例を紹介し,患者満足度の高い審美的結果のためには安定した歯周組織の構築が不可欠であることを強調した.最後に講演した田中真喜氏(神奈川県)は,「歯周病患者における急速矯正治療の有用性」という演題で,永久歯の抜歯原因として最も多い歯周病の罹患者に対し急速矯正処置(PAOO)を行った症例を呈示し,歯周組織と咬合の安定および審美性を同時に達成できる同処置が患者のQOLに寄与することを報告した.(座長;田中真喜氏,池田雅彦氏(北海道))
 シンポジウムⅢ「インプラント周囲炎の病態と治療法」では,「インプラント周囲炎:コンセンサスと診療ガイドラインを読み解く」のなかで蓮池 聡氏(日大)が,各コンセンサス・診療ガイドラインが作成されていく過程を解説し,臨床家が質の高いエビデンスに基づく医療情報を得るためには学術団体による臨床研究作成の支援や観察研究を含めた統合方法の検討も求められていると話した.次に「口腔インプラントに伴う上顎洞関連のトラブルの予防」では,馬場 優氏(奥羽大)がインプラント手術関連の重篤な医療トラブルは減少傾向にある一方で上顎洞関連のトラブルが増加している実情を指摘し,その原因である鼻アレルギーの合併および鼻・副鼻腔形態の異常を適切に処置することの重要性を示した.「インプラント周囲炎の予防と外科的対応」のタイトルで登壇した石川知弘氏(静岡県)は,インプラント周囲炎の誘因が複数ある点を指摘し,予防については正しいポジション,十分な角化組織の獲得,適切なアバットメントによる清掃性の確保を掲げ,機能開始後3年以内の骨吸収が多いことから慎重なメインテナンスと早期介入を心がけるよう呼びかけた.最後に高橋 慶壮氏(奥羽大)が「歯周病患者における口腔インプラント治療 -実践知と科学知の融合を目指して-」と題し,引き起こされるインプラント周囲炎の原因特定には交絡因子が多いことから多変量解析が有効となる点を指摘し,そのうえで大規模な疫学研究に加えて小規模であっても詳細な観察研究をすることで病態解明が進む可能性を語った.(座長;小方頼昌氏(日大松戸),木村英隆氏 (福岡県))
今大会の大会長である高橋 慶壮氏(奥羽大)による演題

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