2020/02/21
2月21日(金),国立京都国際会館(京都市左京区)にてDental Square Japan(主宰:築山鉄平氏・福岡県)が主催する標記講演会が開催され,Christian Coachman氏(ブラジル)が開発したデジタルシミュレーションシステムであるDSD(Digital Smile Design)を用いた歯科臨床のフルデジタルワークフローの可能性が議論された.
まず,Luken de Arbeloa氏(スペイン.DSD Educational Director)が,現代歯科医療においては一貫性のあるスマイルの提供,診断と治療計画に関する治療チーム内での効率的なコミュニケーション,ユニークな治療体験を通じた知覚可能な価値の創造(Emotional Dentistry)が求められるようになっているとし,また従来の歯科教育では技術習得に主眼が置かれスマイルの構築や顔貌分析について学ぶ機会が欠けていたとして,DSDのコンセプトとワークフローの実践によりそれらのミッシングリンクを繋ぐことが可能になると指摘.DSDでは顔貌から見たEstheticを決定した後にFunction,Biology,Structureを検討するという,従来とは逆の手順で治療が進むことを述べた.
続いてEric Todd Scheyer氏(アメリカ)が,従来のアナログ技術を知悉,習得していなければデジタルワークフローにおける不測の事態に対応できないとし,デジタル技術を信頼しつつも検証を怠らない姿勢が重要であると語ったうえで,フルデジタルワークフローで治療を進めた症例を供覧したほか,ステントが不要でドリルの位置などがリアルタイムでフィードバックされる新しいデジタル技術である“Dynamic Navigational Surgery”の可能性にも言及した.
再びLuken氏が登壇し,DSDのワークフローの流れ(顔貌や口腔内情報の取得;デジタライゼーション→専用のタブレット/モバイルアプリである「DSDApp」上でのデザイニング→プランニングセンターとの設計に関するクラウドコミュニケーション→モックアップなどを用いたEmotional Dentistry→センターで立案されPDF送信されるバーチャル治療計画に基づくオペレーション)や,DSDを用いた補綴治療,インプラント治療,歯周外科,矯正治療の実例に触れた.
築山氏は正中線や瞳孔間線,前歯の切縁位置などの各種指標から導き出す従来のアナログ技術におけるFacially Drivenの歯科治療のワークフローを示しつつ,そのプロビジョナルレストレーションを最終補綴装置に置換する手順はDSDにおいてもCopy Paste Dentistryの概念として継承されており,あくまでアナログ技術の原則がデジタル化したものとして基本的な治療コンセプトに変わりはないと述べ,デジタル技術を使ってどのような価値を患者に提供できるかが今後の歯科治療に求められるとした.
最後にLuken氏と木戸淳太氏(福岡県)が,患者に治療の価値を知覚させる“Motivational Mockup”のデモンストレーションとして,顔貌写真および動画の撮影,撮影データをDSDAppに取り込んで行うソフトウェア上でのスマイルデザインおよび,デリバリーされたモックアップの装着操作を実演した.