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第78回日本公衆衛生学会総会開催される
  第78回日本公衆衛生学会総会が,10月23日(水)~25日(金)の3日間,「実践と研究との協働の深化~マインドとコンピテンシー~」をテーマに,高知市文化プラザかるぽーと,ホテル日航高知旭ロイヤル,高知会館,高知新聞放送会館にて開催された(学会長:安田誠史氏/高知大学教育研究部医療学系).本学会は,1947年に設立され,現在は医師,歯科医師,看護師,保健師,管理栄養士,歯科衛生士,歯科技工士,行政関係者など公衆衛生にかかわる9,500人を超える多くの専門職からなる日本における公衆衛生の要学会の一つである(歯科医師249人,歯科衛生士・歯科技工士86人).
高知駅前の坂本龍馬像
 教育講演4では「オーラルフレイル研究の現状と展望」(座長:下光輝一氏/公益社団法人健康・体力づくり事業財団)をテーマに渡邊 裕氏(北海道大学大学院)が登壇.フレイルの状態にある高齢者は加齢に伴い生じてくる筋力の低下などによる身体的問題,独居や経済的困窮などの社会問題を含む概念であること,そのため多面的な検証が行われており,その中の一つにオーラルフレイルがあることを説明.オーラルフレイルは日本初の概念で,老化に伴うさまざまな口腔の状態の変化に,口腔の脆弱性が増加し,食べる機能障害へと陥り,さらにはフレイルに影響を与え,心身の機能低下にまで繋がる一連の現象及び過程と定義され,フィジカルフレイル,サルコペニア,要介護状態,死亡のそれぞれの発生と関連していることを日本の大規模コホート研究によって示されたことを解説.平成30年度診療報酬改定において,高齢者の口腔機能低下に関わる口腔機能管理加算が保険収載されたが,歯科診療所とオーラルフレイル対策が行われている介護予防の現場との連携は十分確立されていない現状をふまえ,今後,口腔機能の評価やトレーニングの指導は歯科医療機関が担い,トレーニングを実施する場としては自宅のほか,地域包括ケアシステムの中で,住民主体の自主グループ活動なども活用し,オーラルフレイル対策に継続的に取り組める仕組みづくりを行うべきと提案した.
教育講演4の様子
 シンポジウム25「オーラルフレイルの予防」(座長:尾﨑哲則氏/日本大学歯学部,増田和茂氏/公益財団法人健康・体力づくり事業財団)では,教育講演4を受け,オーラルフレイルを歯・口腔だけに留めることなく,全身の状態・フレイルとの関連をも含めて,厚生労働省保険局,日本歯科医師会,健康運動指導および栄養の立場から4名が登壇.平野真紀氏(厚生労働省保険局高齢者医療課)はフレイル対策全般について解説し,『高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン』の改定を予定していることを発信.佐藤 保氏(日本歯科医師会)は日本歯科医師会の取り組みとして,①国民・関係職種向けリーフレットの作成(2018年),②歯科診療所向け冊子の作成(『歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版』),③市町村・保健所,保険者などが行うオーラルフレイルの展開に向けたツールの作成(2019年予定)を報告.3人目の演者,健康運動指導士である芝﨑美幸氏(健康運動指導研究所FITPLUS)は京都府糖尿病療養指導士でもある.「タン(舌)エクササイズ」,発声練習「ぱたからトレーニング」,滑舌の改善プログラムの例「早口言葉編」,「おでこ体操とエヘン体操」,「有酸素運動(身体と舌を連動した動き)」など,全身運動を取り入れたオーラルフレイル予防運動を動画を交えて具体的に紹介.前田佳予子氏(武庫川女子大学生活環境学部食物栄養科/管理栄養士)は兵庫県で行われている独居高齢者が参加する「ふれあい昼食会」において,咬合力・咀嚼能力を維持・向上させることを目的に全身運動を組み込んだトレーニングを健康運動指導士と学生が実践している事例を紹介.フレイル予防として3つの柱「身体活動」,「栄養(食・口腔機能)」,「社会参加」が提唱されているが,それらすべてを取り入れ,継続することで効果が出ていることを実証する内容であった.
左から前田佳予子氏,芝﨑美幸氏,佐藤 保氏,平野真紀氏
 シンポジウム28「地域歯科保健推進のための新たなう蝕予防戦略」(座長:尾﨑哲則氏,福田英輝氏/国立保健医療科学院)では,世界で最も多い疾患,う蝕を取り上げた.三浦宏子氏(国立保健医療科学院)は2018年にまとめられた「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」の中間報告を解説.乳幼児・学童期におけるう蝕有病状況は大きく改善したものの,学齢期でのう蝕有病者率は依然として高いこと,また成人期や高齢期では根面う蝕を含むう蝕有病率が高率であることを報告.それを受けて,相田 潤氏(東北大学大学院)がすべてのライフステージに共通する健康格差の縮小が求められると提言.すでに1歳6か月から2歳6か月までのう蝕治療経験に社会経済格差が存在し,その格差が経年的に広がっていくと説明.また,健康格差を縮小するための対策として,企業で取り入れられている価格帯を下げた無糖飲料だけの自動販売機の設置や企業での歯科健診の充実など具体的方策も紹介.続く野村圭介氏(高知県歯科医師会/日本学校歯科医会)は思春期のう蝕有病率の状況を,秋野憲一氏(札幌市保健福祉局保健所)は,う蝕予防対策の1つであるフッ化物洗口の費用対効果は大きく,幼少期に行ったフッ化物洗口は成人になっても効果があることを示し,子どもの外来医療費の無償化の予算を少しでもフッ化物洗口にまわすことも健康格差を縮小するための1つの案であることを提言した.
左から秋野憲一氏,野村圭介氏,相田 潤氏,三浦宏子氏,尾﨑哲則氏,福田英輝氏
 学会長講演,特別講演,4つの教育講演,33のシンポジウム,7つのミニシンポジウム,自由集会等,国民の生活に密接した公衆衛生のさまざまなジャンルの演題が組まれた本学会総会に4,000人を超える多職種が集い,議論を交わす場は他に類を見ず,初めて参加した歯科医療従事者も「大変刺激を受ける」と感想を述べていた.公衆衛生活動における歯科の役割は超高齢社会を迎えたいま,大変重要であるとともに新たな活躍の場になることは間違いなく,今後益々の展開に注目したい.次回学会総会は2020年10月20日(火)~10月22日(木),京都にて開催される.

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