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2019年 米国歯科大学院同窓会(JSAPD)九州セミナー 開催される
 7月14日(日),JR九州ホール(福岡市博多区)にて標記講演会が「私たちの臨床」をテーマに開催された(会長:岡村光信氏/福岡県,大会長:船越栄次氏/福岡県).発足以来,年に1回東京でセミナーを開催してきた同会だが,地方在住の若手歯科医師の参加機会を確保し同会の活動を周知すべく,今回初めての地方開催となった.
▲会場風景
 午前の部では,まず木戸淳太氏(福岡県/タフツ大・補綴学)が「論理的に考えるスマイルデザイン」として,個別性の高さゆえにいわゆる方程式の存在しない審美補綴治療における診査診断時の判断基準について,顔貌,口唇,歯肉,歯の四つの領域から解説した.
 築山鉄平氏(福岡県/タフツ大・歯周病学)は「治療計画のサイエンスとアート―真の患者利益をチームで実現―」として,重症化した歯周病患者に対する四つの治療段階(原因療法・初期治療/歯周外科,歯内治療,矯正治療/補綴修復/予防・メインテナンス)に応じたチームアプローチの実際や治療介入のタイミングを考察した.
 土屋嘉都彦氏(大分県/インディアナ大・補綴学)は「低侵襲のインプラント治療―傾斜埋入・抜歯即時・ショートインプラント―」として,特に傾斜埋入について骨造成術を望まない患者や高齢患者で同処置を避けたい場合などに有効なこと,サージカルガイドの適切な使用による精度の担保が求められることを説明した.
 安増一志氏(福岡県/インディアナ大・歯周病学)は「私の実践している標準治療としての歯周組織再生療法」として,エビデンスが蓄積し使用が推奨される標準治療に対し,新しい治療法については高いエビデンスレベルで臨床的な治癒が証明され,その結果の長期的な維持が確認されたうえで臨床に応用するのが望ましいとの見解を示した.
 松永興昌氏(福岡県/ニューヨーク大・インプラント学)は「アメリカで学んだインプラント治療を日本の歯科治療に生かす」として,海外での学びも大切な一方で国や地域によって診療環境は異なること,治療法の選択に関するコンセンサスも現時点での最良を示すもので決定的なものではないことから,いずれも臨床現場で臨機応変に対応し取捨選択する必要があると強調した.
▲午前の部に登壇した,左から木戸氏,築山氏,土屋氏,安増氏,松永氏
 午後の部では田中利典氏(東京都/コロンビア大・歯内療法学)が「根管内化学的デブライドメントへの挑戦」として,現状の根管洗浄の手法や科学的根拠,最新知見を紹介し,根管洗浄で効率的にバイオフィルムを除去できれば,機械的操作(偶発事故)の減少や治療の成功率向上に伴う外科処置への移行の防止が期待できるとした.
 加治初彦氏(東京都/ウェストバージニア大・顎関節症学)は「高齢社会での矯正治療を考える」として,中等度以上の歯周疾患に罹患した高齢患者の多くは病的歯牙移動を伴っているとして,多数歯LOTを通じた矯正専門医-GPの連携症例やLOTを伴う咬合安定化症例を供覧した.
 二階堂雅彦氏(東京都/タフツ大・歯周病学)は「Periodonticsの過去と未来」として,アメリカと日本における歯周治療の手技・材料の盛衰や歯周疾患の分類の変遷に触れ,さらに未来展望としてスリランカスタディに基づき歯周病患者の約10%で重症化する可能性があることを国民により周知すること,インプラント周囲炎を歯科医療として“克服”する必要があることを語った.
 岩田健男氏(東京都/インディアナ大・補綴学)は「歯科ほど良い仕事は無い~歯科医院成功のための3大秘訣~」として,患者からの信頼を獲得し信頼関係を長期的に継続するためにはリコールシステムを確立し治療に責任をもつこと,歯科治療は小手術の連続であり技術研鑽を継続すること,初診対応や診査診断,治療計画立案を緻密に行うことが重要とした.
 なお,岡村氏からは本九州セミナーを今後も隔年で開催することを検討しているとのアナウンスがなされた.
▲午後の部に登壇した,左から田中氏,加治氏,二階堂氏,岩田氏

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